おにぎりやお弁当に使われる、業務用のお米に異変が起きており、この2年で20%、価格が上昇しています。
米は、大きく3つの種類に分けられ、私たちが家で食べる一般の『家庭用米』、価格が手ごろで、おにぎりや弁当、レストランなどで使われる『業務用米』、そして、家畜のえさになる『飼料用米』です。
このうち、『業務用米』が、実は著しく足りなくなっているようです。
農林水産省の試算では、市場で必要とされる業務用米の量は250万トンで、120万トンの生産に対して130万トン不足していることが分かりました。
2年前に比べ業務用米が2割値上がりし、取引先のスーパーに値上げを打診しましたが、消費が依然として低迷する中で受けてもらえなかったということです。
なぜ業務用米が不足しているのか。
背景には、家畜のえさとなる「飼料用米」を作る農家が増えていることがあります。
これまで、主に業務用米を作ってきましたが、この3年で生産量の半分以上を価格の安い「飼料用米」に切り替えました。
その理由は、「飼料用米」を作ると手厚い補助金を受けられ、業務用米は年によって価格が変動しますが、飼料用米は補助金によって収入が安定するため魅力です。
なぜ国は、飼料用米に補助金を出すかと言うと、背景に政府のコメ政策の転換がありました。
これまで国は、農家が生産するコメの量を調整する「減反政策」を実施していましたが、国任せの制度のもとでは農家が競争力をつけることはできないとして、今年いっぱいで廃止することにしました。
ただ、コメを作りたいと思っている農家は依然として多く、国としてはいきなり関与をやめるわけにはいかず、一定の需要がある家畜のエサである「飼料用米」を作ることを促すため、補助金を増やすことにしたわけで
す。
さらに業務用米不足に拍車をかけているのが、全国に広がる「ブランド米」競争です。
農家は、1つでも2つでも上のクラス、おいしいきれいな米をプラスしないと売れないし、”米はおいしい“と言ってくれたら、舞い上がって一生懸命作れると言います。
味や香りなどで最高の評価を受けた「特A」銘柄。
これまで業務用米を多く作っていた農家でも、こうしたブランド米を作ろうという動きが全国的に急速に広がっています。
この業務用米の不足は、どうすれば解消に向かうでしょうか?
これまで、コメを生産する農家と、使う側の食品メーカーなどの結びつきは弱く、安定的な取り引きになっていなかったところがあります。
農家と食品メーカーが直接結びついてあらかじめ契約することで、一定の価格で業務用米の生産ができるような取り組みを国は一層促していく必要があるようです。
農家もこれまで国のコメ政策に翻弄され、今度は消費者につながる食品メーカに影響が出てきたということで、農水省はしっかりしてくれと言いたいですね。