評論家の桜井氏が東京都知事の小池氏を見ていると、3.11における民主党(現・民進党)の菅直人氏を、つい、思い出すといいます。
いま、福島県立医科大学助手の宮崎真氏、東京大学教授の早野龍五氏が英国の放射線関連のサイト「Journal of Radiological Protection」に寄稿した論文が全世界の注目を集めていて、同論文では福島県での年間外部被曝の基準が実態よりかなり大きく見積もられていた、つまり、政府の安全基準は無意味に過剰に設定されていたと、指摘されています。
原発事故で放射能問題に直面した福島県に関して、菅氏らは「安全と安心」を分ける科学的手法をとらず、住民の安心のために年間被曝1ミリシーベルトを超える地区はすべて除染するという厳しすぎる基準を設定しました。
それで住民の健康や幸福はよりよく担保されたかというと、1ミリシーベルトを超える古里は危険だと思い込み、避難生活を続けた結果、震災関連死者が2086人にも上るなど、明らかに逆だったといいます。
一方、小池都知事はまたもや新しい組織「市場のあり方戦略本部」を立ち上げ、先日、初会合を開催し、既に立ち上げている「市場問題プロジェクトチーム」や土壌汚染対策などを検討する専門家会議の意見を踏まえて「(豊洲への移転可否の)総合的な判断につなげる」とのことです。
安全と安心を混同し、3.11を原発反対という自身の政治目的にも利用したとみられる菅氏と、豊洲問題で議論を提起し続ける小池氏のイメージが重なると桜井氏が感じるという指摘には妙に納得させられます。
小池氏は昨年の知事就任の際に、安全性、事業費、情報公開の3つの問題の解明が必要だとして、豊洲への移転延期を発表しました。
これに対して桜井氏は、事業費や情報公開についての小池氏の疑問はまっとうではあるが、すでに百条委員会が設置され、石原慎太郎氏はじめ各氏への証人喚問も行われました。
喚問で全ての疑問が解明されたとは思いませんが、そのことが移転中止の決定的要因になるのか、なるとしたら、小池氏は、豊洲移転を許容できない理由を明確にすべきだという指摘です。
後日、小池氏はさらに(1)豊洲の建屋の安全性(2)豊洲の地下が盛り土されずに地下ピットになっている区域での揮発性ガスの危険性(3)地下水の安全性−に疑問を呈しました。
この安全性の問題については、(1)は昨年12月末に検査済み証が交付され、建物の安全性は確認され、(2)は換気すれば問題なしとの調査が発表されました。
また、この点と(3)の地下水汚染に関して、産業技術総合研究所名誉フェローの中西準子氏はじめ専門家らは小池氏の姿勢に疑問を呈しています。
専門家が豊洲の安全性を繰り返し発表する中で、小池氏は1月12日、豊洲問題は「政治的問題ではなく、科学的問題、食の安全の問題だ」と語っています。
科学の視点に立てば豊洲に問題はないのにもかかわらず、小池氏は科学的に考えられずにいます。
築地の改修も視野に新たに検討を始めたのは、問題を政治利用しているからではないかと桜井氏は小池氏の対応に疑問を呈します。
センセーショナルな観測数値が先行して、安全性の議論が後手に回った感があり、都民、国民に不安を与えたのは事実ですが、桜井氏が指摘するように小池氏の政治的利用が加わってなければ、もっと冷静な議論ができたのではないでしょうか。
結果的には、現都知事の小池氏が難しい判断を下さないといけませんし、時間がたてばたつほど経費がかさみ都民からの支持が得られなくなります。