2022年09月29日

尖閣諸島に対する中国の動き

日中国交正常化から50年で、ビジネスにおける両国の関係は大きく変わりました。


当初は安い労働力を背景に、日本企業が中国で工場建設に推進しましたが、経済成長に伴い、中国の位置づけは徐々に「工場」から「市場」に転換していきました。

特に、政治問題とのかかわりが強まる中で、今後の日中関係をどのように持っていくのか難しい局面が予想されます。



沖縄県の尖閣諸島が国有化されたのをきっかけに、中国が攻勢を一気に強めてから10年が経ちました。

この間、中国海警局の態勢は大幅に増強され、日本の領海への侵入が繰り返されています。

止むことのない中国の攻勢にどう対峙していくのか、大きな課題です。


沖縄本島からおよそ410キロ離れた東シナ海の“絶海”にある尖閣諸島は、魚釣島、久場島、大正島などからなる無人島群です。

島の沿岸から12海里(およそ22km)が日本の「領海」で、そのすぐ外側の12海里が「接続水域」です。

中国海警局の船はこの接続水域を頻繁に航行し、月に数回、領海侵入を繰り返しています。



2012年9月11日、当時の民主党・野田政権が島を国有地として購入しました。

この国有化は、中国が主張と行動を強める口実に使われたという見方が有力で、あれから10年、中国の攻勢は止むことはなく、海上保安庁もこの間、絶え間なく現場海域にとどまり、対応を続けてきました。



なぜ中国は尖閣諸島を狙うのかというと、漁業資源などが豊富な事もありますが、最大の理由は、地理的な位置です。

尖閣諸島は、軍事戦略上重要な島々の連なりである「第一列島線」のすぐそばに位置し、その脇を太平洋に抜ける船の主要なルートが通っています。

中国がここを支配して拠点化すれば、海洋進出がしやすくなるだけでなく、米軍や自衛隊の動きを監視することもできます。

そして、沖縄に駐留する在日米軍に「くさび」を打ち込むことになると中国は考えているのではないでしょうか。



「中国海警局」が増強される大きな転機となったのは、2018年で、海に関わる政府機関の寄せ集めだった海警局は、中国共産党の軍事部門の最高意思決定機関「中央軍事委員会」の指揮下に編入されました。

中国海警局は、「準軍事機関」に変貌し、船の行動も軍のように統率されたものに変わりました。

最も重要な変化は船の大型化で、今では中国が日本のほぼ倍です。


もう一つ問題視されているのが、去年2月に施行された「中国海警法」です。

中国海警局の権限を規定するこの法律には、国際法と相容れない内容も多く含まれています。



日本政府は、海上保安庁の予算を毎年増額し、新たな大型巡視船を建造するなど体制の強化を急いでいます。

石垣島や宮古島それに鹿児島では、尖閣諸島の警備にあたる巡視船の拠点化が進められています。



習近平国家主席が異例の3期目入りを目指す来月の共産党大会までは、事を荒立てることを避けているとの見方もあります。

共産党大会が終わった後、より強硬な行動に出てこないか、現場の動きを注意深く見ていく必要がありますし、その上で、今後、日本が打ち出す対策が、10年前の国有化の時のように、中国が何かをしかける口実にされないよう、“慎重さ”と“したたかさ”が求められるようです。
posted by 川上義幸 at 15:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月27日

ウクライナの強さ

ウクライナが善戦していて、米欧の支援を背景に領土を奪還する動きも目立ち始めました。


戦う意義を見出させず国民の関心も薄いロシアに比べて、ウクライナ側は米欧からの支援頼みという弱点はあるものの、最大の強みは軍人だけでなく国民を挙げて士気が高いといわれています。

占領下の行政・治安機関の事務所を爆破、ロシア派の警察長官を殺害、内通者の逮捕…、いずれも市民にまぎれゲリラ戦で抵抗しています。


急増部隊ではなく、ロシアがクリミア半島を併合し、東部のドンバス地方の一部を新ロシア派が支配した2014年頃から組織化された模様です。

地元が占領されたときに備え、特殊部隊などによる訓練を受けていて、今回の東部から南部の激戦地での活動が確認されています。

8月にクリミア半島のロシア基地で起きた爆発にも関与したとされています。


政府は一般向けにウェブサイト「国民レジスタンスセンター」を開設し、ロシア戦車を無力化する方法や敵のドローンを見つけた時の対処法などを教えています。

戦闘を望まない市民ももちろんいますが、彼らも資金面などで貢献しようと躍起です。



ウクライナ国民がここまで一丸となって抵抗する原動力は何かというと、ウクライナが独立と縁遠かった歴史にあるようです。

ロシア革命を受け1917年から一時期、ウクライナ人民共和国を樹立しましたが、ほぼ一貫してロシアや欧州列国の支配に強いられました。


ウクライナ人にとってソ連崩壊以降の約30年は、近代以降最も長い独立期間で、先人たちが渇望した独立をここで手放すわけにはいかないというわけです。

多大な犠牲を払ってでもロシアと闘う理由はこの思いに集約されるようです。
posted by 川上義幸 at 17:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月25日

ホークス愛

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  昨日の試合はホークスにとって大事な試合となりました。


  前日のモノにしないといけない試合を拙攻やミスを繰り返し、一時は柳田選手のホームランで何とかリードしましたが、最後は救援陣が打たれて負けてしまいました。

  連戦続きのホークスにとって、疲れがピークにきているのと、勝たないといけないというプレッシャーでしょうか。

  そして、昨日は、明石健志選手の引退試合でもありました。

  願わくは競っていない勝ち試合で、後半の余裕のある展開で登場させたいと監督は考えていたはずです。

  結果はその通りの展開になりました。



  前半は満塁機にあと一本が出ずに大量点に結びつかないという昨日の同様な流れもありましたが、着実に1点1点を重ね、前打席までチャンスで打てなかった中村選手の3点ホームランが飛び出し、ベンチのムードも最高潮に達しました。


  そのような流れを作ってくれたのが坂東投手で、四死球を出さずに攻めのピッチングをして、完封をしてくれました。

  疲れている救援陣を休ませることにもなって、最高の働きをしてくれました。


  野手でも、チャンスに弱かった甲斐選手や今宮選手にタイムリーが出ましたし、疲れて元気がなかった周東選手にもいいプレーが見られ、収穫の多い試合となりました。

  残り7試合、この調子で全員野球で優勝を勝ち取ってほしいものです。


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  試合後は、明石選手の引退セレモニーがありました。

  ホークス一筋、ホークス愛を貫いたの19年、ダイエー時代からの選手では野手では最後となりました。


  7回に代打で登場すると、投手強襲の内野安打を放って大号泣し、試合後に行われた引退セレモニーでも大粒の涙を流し、その度にスタンドのファンからは大きな拍手や声援が飛びました。


  王貞治球団会長や前監督の工藤公康氏も花束贈呈に駆けつけ、そして明石選手の登場曲でもお馴染みのMs.OOJAさんも登場し、「Be」を熱唱してくれました。
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  球団は、ホークス愛を貫いた明石選手への心温まる引退セレモニーを企画してくれました。
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2022年09月23日

西九州新幹線開業

  佐賀県の武雄温泉駅と長崎駅を結ぶ全長66キロの独立した区間で、西九州新幹線が23日に開業しました。

  武雄温泉駅から博多方面へは同じホームの向かい側に停まる在来線特急「リレーかもめ」に乗り換えが必要となり、在来線を乗り継ぐ博多―長崎は、いまより最速で30分短縮されて1時間20分となります。



  JR九州はこの日、正式に運行を始め、新幹線として一番列車となる「かもめ2号」が午前6時17分に長崎駅を出発しました。

  この1番列車は、1カ月前に発売開始した指定席券はわずか10秒で売り切れたといいますから、地元の期待や鉄道ファン人気ぶりが伺い知れます。

  武雄温泉―長崎は最速23分で、1日44本の新幹線が運行します。


  九州の自治体や経済界は観光客の増加を期待しており、JTBの担当者は「コロナ禍で様々なイベントが中止になり、九州の観光はこれまで厳しかった。短い区間であっても新幹線の開業は、旅行需要の拡大につながる」といいます。



  この新幹線の建設着手に関わっていたものの一人として、具体的に形が見えたことに安堵の念を覚えると同時に、新鳥栖―武雄温泉間の対応をどうするか、残された課題の解決の見通しが立っていないことに心配が募ります。



  もともと、長崎―武雄温泉間はフル規格で整備し、武雄温泉―肥前山口間を複線化して、武雄温泉―新鳥栖間は在来線を活用し、フリーゲージトレイン(FGT)を走らせることになっていました。

  佐賀県としてはこの方針のもとに、西九州新幹線を推進することに協力してきましたが、突然、FGT導入に対して断念を表明し、すべての区間をフル規格で整備することが示されたことで、佐賀県側が当惑し今日に至っています。

  そのルートについても十分な議論がなされていないのに突然、基本構想段階で描かれたルートがあたかも決定されたかのように示されたことも対応を硬化させたのかもしれません。



  FGT導入の可能性の可否についてはもっと早くわかっていたでしょうし、FGTの前提が壊れれば費用対効果の問題はあるものの全線フル規格で整備する方向に関係者の意向が流れることはわかっていたはずです。

  建設費負担の問題、並行在来線の問題、利用料金や運行本数がどうなるかなど、具体的に示されないまま建設ありきの議論は無理があります。

  そして、もともと費用対効果が低い路線ですから、スーパー特急、FGT方式が採用された経緯がありますから、フル規格で整備を目指すとすれば、新幹線の魅力をより高める工夫が不可欠でした。



  佐賀県の佐賀県のメリットがあまりないということもあって、関係者の協議が難航することが予想されたとは思いますが、国を始め関係者が今まで議論することを避けてきたことが残念です。
posted by 川上義幸 at 18:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月22日

高齢化するマンション

「高齢化するマンション」が増えていますが、大地震の際、建物だけでなく、高齢化するマンション住民への対応も重要になってきます。


首都直下地震の直後は、公的な支援が期待できないからで、東京・調布市のマンションでは、ひとりひとりに支援が行き届くよう、こだわりの備えを進めています。



443世帯、874人が入居している東京・調布市にある築50年の大規模マンションですが、住民の高齢化は進み、75歳以上は4人に1人となっていて、大規模な災害が起きた直後、住民どうしでどう支え合うかが課題となっていました。

このマンションでは、大地震が起きた直後の段階で、高齢者など支援が必要な人に確実に届けるため、去年マニュアルを作ったそうです。


入居者874人全員分の名簿を作成し、同時に、災害時に支援を希望するかどうかをアンケートで聴き取り、支援が必要な人の名簿も初めて作りました。

その結果、支援を希望する人は60人にのぼり、どこの世帯にいるのかも、ひと目でわかるよう早見表も作っています。


マニュアルづくりの中心となった人は、勤務していた大手情報機器メーカーで防災計画づくりに関わった経験をいかし、マンション管理組合の理事長としてマニュアルを完成に導いたといいます。

高年齢の人が、もっと高年齢の人をケアしないといけないし、自分たちの現状と身の丈にあったものをつくらないと、長続きしないだろうと思い、徹底した現状把握をしようと、一世帯一世帯にアンケートをとったということです。

そして、支援する側も、入居者からボランティアを募り、24人の協力が得られることになり、これに管理組合の理事会メンバー22人も加わって支援にあたることにしています。


マニュアルでは、このボランティアなどが住民の安否確認や必要に応じ、水や食料の支給を行うことにしています。


速やかに届けるため、すべての入居者には「安否確認マグネット」が配付されています。

一方の面には「無事です」、もう一方には「救助求む」と記されていて、日頃からドアの内側に貼って、すぐに使えるようにしてもらっています。

そして、もし支援が必要となった場合には、事前に配布しているシートに具体的に書き込み、ドアの外側にマグネットとともに貼りつけるのです。こうすることで、支援が必要な人と支援する側との間で、不確実なやりとりをなくすことができます。


さらに、マニュアルには家具の転倒を防ぐ固定や、初期消火に使う消火器の点検などが重要だとして、日頃からの備えに取り組むよう呼びかけています。



マンションの防災は『マニュアルは完成したら終わり』ではなく、入居者の年齢や家族構成は、時間とともに変わるので、繰り返し訓練を行うことが大切です。

訓練を実施する時間帯や参加するメンバー、シチュエーションに変化を持たせる工夫が求められます。


住民どうしのつながりが希薄になりがちだとされる時代ですから、防災活動に重ねて取り組んでいくことが、顔が見えるコミュニティーを作ることにもなるように感じます。
posted by 川上義幸 at 15:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月20日

Web3

インターネットの新しい使い方を提案する「Web3」というキーワードが注目を集めています。

Web3は、次世代のインターネットを提唱する概念で、Web3.0とも呼ばれることがあります。



これまでのインターネットの流れでWeb1.0と呼ばれているものは、インターネットによる情報発信の始まりのことをさし、1995年ごろのことですが、最初は企業、研究者、行政などがホームページで情報発信をはじめました。


次に出てきたWeb2.0は、SNSやブログなどを使って、多くの人が相互に情報を発信するようになったことを指します。

2005年前後から始まったと言われ、何気ない会話をするだけでなく、インターネットを通じて政治や大企業などに対して意見を言いやすくなりました。

有権者や消費者のパワーが大きくなったという変化も出てきて、スマートフォンを通じてインターネットを利用する人が爆発的に増えました。


しかし、それが経済的な豊かさにつながったかということについては、疑問の声が上がり、経済的な恩恵は、GAFAM と呼ばれる巨大IT 企業、グーグル、アップル、今はメタという名前に変わったフェイスブック、アマゾン、マイクロソフトに集中したのではないかというものです。

例えば、グーグルは、ネット上で発信された数多くの文章や画像を収集して文章や画像を検索するサービスを展開し、多くの利用者を獲得しています。

また、フェイスブックやアマゾンは、利用者の閲覧履歴などをAI・人工知能で分析し、おすすめの商品や広告を表示して収益を上げています。

それによって便利なサービスが生まれたという側面はありますが、それはネットサービスの中央集権化がもたらしたもので、もともとインターネットが求めてきた自由とは違うという意見が出てきました。



それがWeb3という概念につながっていて、ポイントは、集中ではなく分散です。

自分の発信した情報は自分で管理すること、そして、それによって生じる利益は自分のものにすべきだというものです。


活用されるとみられているのが、「ブロックチェーン」という技術で、ビットコインなどの暗号資産の取引や、コンピューター処理された絵画や音楽などのデジタルアートの取引管理をするNFTという仕組みに使われています。

ブロックチェーンを使うと、管理会社を通さなくても利用者が相互に協力する形でサービスを利用できます。

つまり、巨大IT企業の囲い込みの外で、自由に情報を発信したり、作品の配信が可能になるため、独占企業の思惑に左右されずに、個人間の取引が可能になる可能性があります。



ただ、Web3 をとりまく現状についても、正しく知っておかなければなりません。

それは、定義がはっきりしていないこと、それにも関わらず、期待が先行しすぎていることです。Web3は目指すところは決まっていますが、実用的なサービスのアイデアが出てくるのかどうかもわかりません。

まだ漠然としている段階のようです。
posted by 川上義幸 at 16:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月19日

スマート田んぼダム

大型の台風14号は九州を縦断し、中国地方と近畿、四国の広い範囲を暴風域に巻き込みながら北東へ進んでいます。

九州や中国地方では浸水被害や崖崩れなどが相次いで確認されているほか、東日本でも雨や風が強まっています。



毎年、各地で相次ぐ大雨による浸水被害を受けて、国は流域治水を進めようとしています。


被害を軽減するための流域対策の一つとして、今、日本各地の“田んぼ”の活用が検討されています。

その名も「スマート田んぼダム」といい、ICT=情報通信技術を活用して、田んぼを“ダム”のように使おうというのです。


日本の食を支え、生物の多様性を育む田んぼが、防災にも一役買うというのです。



兵庫県の南西部、瀬戸内海に面した、たつの市では、「スマート田んぼダム」の取り組みが去年から始まりました。

通常のダムでは、大雨が降る前に水を放流し、ダムの水量を少なくしておくことで、貯水効果を向上させる「事前放流」が行われることがあります。

これと似た操作を田んぼでも行い、大雨が予想されるときには、市の職員がスマートフォンやパソコンで排水門を遠隔操作して、田んぼに張ってあった水をあらかじめすべて外に排水します。


そうすることで、大雨が降った際に、雨水をより多くためることができます。

田んぼに雨を一時的にためることで、用水路の水位を抑え、その先の河川に流れ込む水の量も抑えることができます。

このため、河川の氾濫などによる浸水被害の軽減につながることが期待されています。


同じ機能は、田んぼに水を入れる取水門にも付いていて、雨が収まったら速やかに水を張ります。

田んぼにはもともと、雨水をためる機能がありますが、今回のシステムを利用することで、人手をかけず、そして大規模に、事前の排水ができます。



たつの市では、農家の協力を得て市内24か所、約9haの水田に遠隔操作のできる排水門を設置し、すべての田んぼで排水すれば、約9000トンの雨水をためることができる計算です。

農林水産省では去年、新潟県のある地域を対象として、「スマート田んぼダム」がどの程度浸水被害を軽減できるのかシミュレーションを行い、「スマート田んぼダム」を導入した場合はおよそ3割ほど減らせる結果となったようです。


農林水産省が去年行った「スマート田んぼダム」の実証実験事業には、たつの市を含めた全国8か所の地域が参加し、現在も各地で独自の取り組みが進められています。



一方、「スマート田んぼダム」は防災だけでなく、農作業の効率化にも役立つと期待されています。米の品質や収量を左右する田んぼの水の管理は、農家にとって非常に重要な仕事です。

多いときには1日に2回ほど、直接田んぼに出向いて水門の操作などを行い、田んぼの水位や水温の調整を行ってきましたが、農家の人が大雨のなか、田んぼを見に行き、けがをしてしまうというケースがよく見られました。


今回のシステムの導入で、自宅に居ながら、スマートフォンで水位や水温を確認でき、水門の操作までできるため、水の管理にかかる時間を、およそ半分にまで減らすことができるといいます。
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2022年09月18日

“カルフォルニア効果”

カルフォルニア州がガソリン車の販売を規制する案を決定し、2035年からEV(電気自動車)とFCV(燃料電池自動車)のみの排気の出ないゼロエミッション(ZEV)に限るとしています。

このZEVは2026年までに35%、2030年までに68%、2035年までに100%を義務付けており、それが達成されなかった場合1台当たり278万円の罰金を課すという厳しいものです。

EUも類似の取り組みがあるようですが、罰金はありませんから効果は非常に大きいとみられます。



この規制による効果は、2040年には温室効果ガス排出は現在の半分になりますし、2026〜2040年までに心肺疾患による入院や死亡が軽減され、約130億ドル相当の健康被害を抑制することが可能とする試算もあります。

カリフォルニア州はアメリカ最大の自動車のマーケットですから、その効果は全米への波及が期待され、“カルフォルニア効果”と呼ばれる所以です。

規制イノベータともいわれてるようです。



1950年代のロサンゼルスのスモッグはひどいもので、ガスマスクや酸素ボンベを必要とするような状況だったようです。

1960年代に独自の規制を実施することができて、その後17の州がカルフォルニアの基準に従うようになったということで、今回も“カルフォルニア効果”としての追随の効果が期待されています。



カリフォルニアの温暖化対策法に対して200もの企業が賛成支持を表明しており、厳し規制だけでなく手厚い支援も用意していることから、その結果、カリフォルニア州ではクリーンエネルギー関連の企業が増加し、50万人もの雇用が生まれています。

全米で消費電力はこの30年間で75%増加しましたがカリフォルニアは変わらずで、電気代は900億ドル削減したということです。



電源等のインフラ整備が間に合うのかといった課題は多くありますが、とにかく望ましい方向に動き出したということで、この動きを応援しないといけません。
posted by 川上義幸 at 20:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月17日

中ロ首脳会談

中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は、ウズベキスタンのサマルカンドで開かれた中ロ主導の地域協力組織「上海協力機構(SCO)」首脳会議に合わせて会談をした模様です。



SCOの加盟国は中央アジア諸国を中心に8ヵ国で、合わせて世界のGDPの2割以上、人口の半分近くを占め、地域の安全保障や経済分野での連携を目指しています。

前身は旧ソ連崩壊後、中国と国境を接することになったロシアなど旧ソ連構成国4ヵ国とで集まった「上海ファイブ」です。

ウズベキスタンが加わっていまの形になり、結成当初は新しい国境の管理が主な課題となっていました。
その後、インドも加わり存在感を増しています。



両首脳の会談は、北京冬季五輪の開会式に合わせて行って以来です。

中ロ首脳会談の日程はロシア大統領府がいち早く公表したものの、中国外務省は最後まで明かさず、そもそも温度差があり前回と異なり共同声明を出さないまま終了しました。


台湾情勢に危機感を強める習氏と、ウクライナの戦況悪化に焦るプーチン氏ですが、両者の接近はロシアが経済で中国に従属し、中国がロシアの「反米」路線に引き込まれる危うさをはらんでいます。


ロシアは軍事的に苦境が深まり、中国への傾斜を強めざるを得なくなっています。

習氏は中ロの中長期的な連携を確認し、米国ににらみを利かせる狙いがあるようで、習氏の続投を決める10月の共産党大会に向け対米路線継続をアピールする思惑があります。

しかし、ロシアとの関係強化には国内に異論がくすぶり、「プーチン大統領と早く手を切るべきだ」との声も無視できないようです。


中国と欧州の間でバランスを失ったロシアと、「反米」に舵を切ったロシアへの懸念を消せない中国ですが、両国の「蜜月」の演出は不安要因を抱えているようです。


対米での結束を演出したものの、ウクライナ侵攻を巡る温度差は明らかになっており、中国は貿易では協力しつつも軍事支援には一貫して慎重で、かりそめの結束をあらわにした形です。

posted by 川上義幸 at 21:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月16日

コンテナ船の渋滞解消

米西海岸の港ではコロナ感染拡大で、2020年後半から船の渋滞が始まりました。

港湾の労働者やコンテナを内陸に運ぶトラックの運転手が不足し、積み荷を裁く能力が大幅に落ちました。

船が到着してもコンテナを下せず、港の沖合で待機し、2021年夏から状況が深刻化し、アジアから西海岸への輸送日数も通常の2〜3倍の30日程度掛かっていました。


航海に時間がかかると使用できる船の数が減り、世界全体の輸送能力が落ちることになります。


米東海岸や欧州の港でも同様に渋滞が起きており、海上物流の混乱は世界的な供給制約の大きな要因となっていました。



しかし、この新型コロナウィルス下でひっ迫していたコンテナ船の需給が緩んできたようです。

米西海岸の港の沖合で荷揚げを待つ船の渋滞が9月にピーク時の1/10に減り、米中航路の運賃も過去最大の下げ幅を記録しました。

米中間はコンテナ船の料金の国際的指標となっているようで、他航路の運賃も下がっています。


世界のサプライチェーンの混乱度を示す指数も改善しています。


コンテナ船の需給だけでなく、自動車の生産の足かせとなっていた半導体不足も一時より緩和されつつあります。


ただ、サプライチェーン指数も低下傾向にあるとはいえ、コロナ前と比べればなお高いようで、コンテナ輸送費も同様です。


コロナ前の2倍の水準で、正常化にはまだ時間がかかりそうです。
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2022年09月13日

秋の訪れ

  昼間の日差しはまだ夏そのものですが、朝夕はだいぶ涼しくなりました。

  山王公園を朝ウォーキングすると、草むらから虫の音が聞こえてきます。

  そして、彼岸花も咲き始め、秋の訪れを感じます。
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  プロ野球はペナントレースも大詰めを迎え、大混戦となっています。

  昨日は、試合前まではソフトバンク、西武、オリックスの3チームが首位に並んでいましたが、ソフトバンクのみ勝利したため、単独首位となりましたが、今日の結果次第ではまた並ぶことはありえます。


  昨日のソフトバンクと西武の試合は、終始ソフトバンクがリードしていましたが、4時間を超える試合で最後までもつれどちらが勝利をものにするかはわかりませんでした。

  なかなかチャンスに1本が出ないというのが今年のソフトバンクでしたから、このような緊迫した試合に疲れもたまっていますから打線のつながりが心配でしたが、、デスパイネ選手のツーラン、正木選手のソロとホームランで流れをつくり、そして何といっても先制された後の今宮選手の逆転の適時打が大きかったようです。


  東浜投手も調子は今一つのようでしたが、何とか粘って、あとは中継ぎ、抑えの投手がきっちり抑えてくれました。



  ソフトバンクは死の11連戦が始まっており、これまでのところ2勝1敗ですが、これからが真の意味での勝負どころとなってきます。

  投手は四球を恐れずぐいぐい攻めっていってほしいですし、野手はミスを恐れず果敢に打っていってほしいものです。

  11連戦が終わるころには、優勝の行方が見えてくるでしょうが、何とかよい位置で最後のラストスパートをかける状況になるように願っています。
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2022年09月12日

対ロシア制裁に抜け穴

  ロシアのウクライナ侵攻から半年が過ぎましたが、戦況に大きな変化はありません。


  ロシアへの制裁は効いているのか、意外と抜け穴があるようです。


  ロシア国内では今もウクライナ侵攻を支持する声が圧倒的に多く、プーチン大統領の支持率は80%を上回り続けています。

  経済制裁の影響で4〜6月期のGDPは前年比−4.0%となりましたが、政権にマイナスになるレベルではありません。



  そのロシアを支えるのが西側にあるベラルーシで、ルカシェンコ大統領はロシアの侵攻を一貫して支持しています。

  経済制裁の中で、その両国の友好関係を表すものの一つに、モスクワからの寝台列車ベラルシアン・ボヤージュでの買い物ツアーがあります。


  このツアーは列車がベラルーシの駅に着くとバスによる観光が始まり、古城や協会を訪ねます。

  そして、買い物も旅の目的の一つで、ロシアでは販売が中止となったビール「ハイネケン」が購入可能ですし、さらにロシアを撤退したアパレル大手の「ZARA」グループの店舗もありますし、アップル製品やサムスン電子製品も自由に買えます。


  西側諸国との飛行機の直行便がなくなったロシアで、海外のモノが自由にまでとはいえませんが手に入るというわけです。



  また、石油が隠れたルートで欧州に流入しているようです。

  ギリシャ沖でロシア発タンカーから石油を受け取り欧州に入港した船が半年で41隻と、前年の1隻から大幅に増えていることがわかっています。


  EUや英国がロシアの石油を禁輸するのは年末以降です。

  取引が露見すると企業は批判を受けるリスクが出てきますが、今後も、船を替えて産地を曖昧にする流通手法は制裁の抜け道として残りかねない恐れがあります。
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2022年09月10日

中国の高圧的態度

中国が強く反発したアメリカのペロシ下院議長の台湾訪問から1か月が経過しましたが、これをきっかけに中国側がとり始めた「ある行動」に警戒が強まっています。


ペロシ議長の台湾訪問をきっかけに中国側がとり始めた「ある行動」を、1枚1枚サラミを薄く切る様子に例えられています。

その行動というのが、中国の軍用機による連日の台湾海峡の中間線越えです。



そもそもこの中間線は、中台双方が正式に合意しているものではありませんが、軍どうしの偶発的な衝突を避けるための境界線として、いわば「暗黙の了解」という形で長年続いてきました。

以前も時折、中国軍機が中間線を越えることはありましたが…。

ところが今回は、先月3日からほぼ毎日、中間線を越えて台湾側の空域に入るという異例の事態が続いているようです。



その狙いはというと、中間線越えを常態化させることで、台湾にとって事実上の防衛ラインとなっている現状を変更し、圧力を強めようとしているのではないかとみられています。

ペロシ議長の訪台をそのための口実にした形で、このように中国が、サラミを薄く切るように少しずつ相手側に入り込んでいくやり方を、各国の政府関係者や専門家は「サラミ戦術」と呼んで警戒を強めています。



日本も無関係ではなく、沖縄県の尖閣諸島が日本政府によって国有化されて今月11日でちょうど10年となりますが、国有化後、周辺海域での中国海警局の船による活動は活発な状態が続いています。

領海への侵入が後を絶たないほか、領海のすぐ外側にある接続水域での航行も、去年とおととしは年間300日を超えていて、常態化しています。



習主席としては、共産党トップとしての続投がかかる党大会を来月に控える中、「強い指導者」というイメージを誇示するためにも、「サラミ戦術」を使った対外的な強硬姿勢をこれからも緩めることはないとみられています。
posted by 川上義幸 at 16:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月09日

唐揚げブーム

唐揚げの小売価格が1年で1割上がりました。

高カロリーなものを食べて新型コロナウィルス禍のストレスを発散する「ギルティ―フード」ブームが一因ですが、人気なのは低カロリーのむね肉を使った唐揚げのようです。

行動制限解除で外出が増え、そろそろ体形にも気を使いたい、そんな消費者心理もあるのでしょう。



世は空前の唐揚げブームで、日本唐揚げ協会というのがあって、そこによると4月時点の専門店数は推計4379店と2年間で1.8倍に増加したということです。

また、1人当たり年間消費量は推計437個と、コロナ前から61%伸びたといいます。
価格も上がっている模様です。


もともと唐揚げは冷めても味が落ちにくく、総菜の定番となっており、コロナ禍ですごもり消費が拡大し、専門店が工夫を凝らした唐揚げを相次ぎ商品化し、単価も上がりました。

人気を後押ししたのが罪悪感を覚えるほど高カロリー・高糖質な「ギルティ―フード」ブームです。


ブームのもう一つの特徴がむね肉唐揚げの人気です。

むね肉はパサつきやすいとされてきましたが、調理技術で改善されてきました。

鶏だしやおろしタマネギなどで味付けしたむね肉唐揚げはコンテストで金賞を受賞したようですし、「たっぷりタルタルソース味」は定番の4銘柄以外では歴代1位の販売数を記録しています。
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2022年09月06日

地方創生の次の一手

  空き家は移住や定住で使えるモノ、使えないで朽ちるものの両極端に分かれるといい、どのような形で空き家を整備していくのか今が正念場といいます。


  1998年に576万戸だった空き家の総数は2018年に849万戸と1.5倍に増えています。

  地域の過疎化とともに深刻さが増す空き家問題は、防災や生活環境の面からも対策が必要になります。


  一方で、空き家の活用は地域活性化へのチャンスでもあり、地方回帰の流れを追い風に空き家を通じた地方創生の方策を探ることが期待されています。

  その対応として、「空き家バンク」の活用の重要性を共有し、地方自治体が把握する空き家の情報をホームページなどで提供しています。



  空き家の増加に自治体は悩み、各地で条例制定の動きが出て、また条例に加えて法律で全国的な対応が急務という認識の下、国会に議連ができ、「空き家等対策推進特別措置法」が制定されました。


  空き家撤去が進まないのは、経済的・法律的な2つの理由があり、撤去・処分にかかる費用や更地にすると固定資産税の課税が増えるのと、権利者が多い場合、処分手続きの同意を取り付けるの難しい点です。

  特措法制定でこれらの解決を図りました。



  議連としてはこれから、適正な管理や除却に加えて利活用を一体的にやっていきたいようです。

  岸田政権が掲げる「デジタル田園都市国家構想」により、地方への人の流れの創出を後押しし、空き家や古民家が移住を促す可能性を期待したくなります。
posted by 川上義幸 at 16:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月05日

ドイツのエネルギー政策に変化か

年内の脱原発に向けて準備を進めてきたドイツで、ロシアの軍事侵攻によるエネルギー価格の高騰を受けて原発を廃止するか稼働を延長するか激しい議論となっているようです。


2011年の東京電力福島第一原発の事故を受けて、当時のメルケル政権が2022年までに17基すべての原発を廃止することを決め、最後に残った3基もことし12月に停止することになっています。

ところがウクライナ危機によってロシアからの天然ガスの供給が大幅に減り、ガス料金は去年の2倍以上、食料品も輸送費の上昇により7月は前年より14%値上がりし家計を圧迫しています。

さらにこの冬の暖房用のガスの供給が不安視されています。


そこでドイツ政府は原発廃止の影響を調査し、予定通り廃止か、それとも稼働延長か、結論を出すことにしているようです。

連立政権内でも環境政党の緑の党は予定通り年内の廃止を求める声が根強いのですが、産業界に近い自由民主党は稼働の延長を求めています。

野党・キリスト教民主社会同盟も延長を支持、世論も大きく延長に傾いており、調査によっては延長を支持する人が8割にも上っています。



ドイツ政府はことし3月、3基だけでは総発電量の6%にすぎず延長の効果が少ないとして予定通り廃止することを決めましたが、状況は悪化しておりショルツ首相の判断が注目されます。

原発の全面廃止はドイツ政府の基本方針ですので完全に白紙に戻すことはないと見られますが、一定期間延長する可能性はあります。

ただ、その場合も来年夏までの短期間か、それとも長期の延長かで意見が割れています。



脱原発と脱石炭に舵を切ったドイツですが、想定外のロシアの軍事侵攻により行く手を阻まれています。

エネルギー危機とインフレから脱することができるか、ヨーロッパ経済への影響も大きいだけにドイツの決断を各国は慎重に見守っています。
posted by 川上義幸 at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月04日

サンマのシーズン

サンマは秋刀魚と書くように、秋の魚、サンマのシーズンとなりました。


サンマ漁が始まり、水揚げのニュースも耳にしますが、サンマ漁に気がかりなことがあります。

それは日ロ関係悪化です。



サンマはいま、北海道から東に1500キロほど離れた海域に漁場ができています。

ここはおおやけの海、「公海」と呼ばれ、どの国も原則、自由に利用できる海域で、日本の漁船もサンマを取っています。


問題は取ったあとで、多くの船が水揚げする北海道・根室の港に最短距離で向かうには、北方四島の南、ロシアが主張する排他的経済水域を通る必要があります。

このとき、ロシアの当局から「臨検」と呼ばれる、船の検査を要求される可能性があります。


公海で取るのはもちろん、ロシアが主張する排他的経済水域を通るのも条約で認められ、何も問題がありませんが、ただ、排他的経済水域の沿岸の国が臨検を行う権利もまた、認められています。

漁業者は、日ロ関係の悪化でロシア当局が厳しくなり、「このサンマは不正に取ったのではないか」と指摘されて、「万が一にでも拿捕されるようなことがあれば一大事だ」と気をもんでいるわけです。


となると、この海域を避けるしかないのかというと、漁業団体によりますと、今のところロシア側は「通行は問題ない」と伝えてきていて、25日の夕方時点ではどの船もまっすぐ戻ってきているということです。


ただ今後、仮に臨検が頻発するようなことがあれば、う回する船が出てくるかもしれませんし、遠回りで時間が余計にかかり、サンマの鮮度にも影響しかねません。

それに原油価格高騰のさなか、燃料代も多くかかってしまいます。


これまで日ロ関係が悪化している中でも、ロシアとの協定に基づいてサケ・マス漁やコンブ漁は続けられましたので、サンマ漁も安全に行われて、おいしいサンマが届いてほしいものです。



サンマは近年、漁獲量が減っているようで、日本沿岸域に降りてくる前の公海において台湾の大型漁船で根
こそぎ獲っていかれるという話を聞きましたが、今の時期に台湾産ということで某スーパーに手ごろな価格で出ています。

北海道産が流通する前に台湾産としてサンマが食卓に上ることになりました。
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2022年09月02日

水上供給網に気候リスク

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、気候変動に伴い干ばつや洪水、激しい嵐といった異常気象が今後はより頻繁に発生し、規模も大きくなると明言しています。


企業がまず懸念することは、気候リスクに自社やサプライヤーのどの工場がさらされているかですし、各国政府はもっぱら食料供給に対する脅威に注目しています。

ですが、今年の干ばつは気候変動が激しくなるに従い、国際貿易の水上輸送インフラそのものが欲しあがったり、閉鎖されたりする危険性があることも浮き彫りになりました。



猛暑が数週間も続いたことで、フランス西部を流れるロワール川流域では乾ききった川底を散歩できるようになったといいます。

欧州の重要な水路であるドナウ川も水位が下がり、流域の東欧諸国は貨物を運ぶはしけ船が航行できるように、川底の土砂を除去する浚渫を余儀なくされました。

ドイツなどを流れるライン川では、港口の要衝において、水位が多くの船舶にとって操業が経済的に見合わない水準まで低下しました。

アルゼンチンのパラナ川では、渇水で世界第3位の大豆輸出に支障をきたしています。



船舶は徐々に大型化し、問題が発生した場合の救援が困難かつ高コストになってきています。

干ばつが発生した場合の容易な代替ルートもなく、内陸輸送用の船1隻が輸送できる量は約100〜150代のトラックに相当するため、道路や鉄道では負担を背負いきれません。


典型的な対応としては、船の積載量を減らすか、小型船で運行回数を増やすしかありません。

これまでは輸送に対する気候の影響よりも気候に対する輸送の影響の方にはるかに大きな関心が寄せられてきましたが、これからは水上供給網に対しても気候リスクを考えないといけないようです。
posted by 川上義幸 at 17:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2022年09月01日

要衝、沖ノ島大丈夫?

日本最南端の島、沖ノ島。

島の周囲は、日本が天然資源の開発や科学調査を自由にできる排他的経済水域(EEZ)が国土面積を上回る約40万km2にわたって広がっています。


島が消えれば主権や管轄権が及ぶ日本の海は後退します。

すでに島は東西約4.5km、南北約1.7kmの地形のうち、2つで4畳半程度との指摘もある「東小島」と「北小島」が海面から顔をのぞかせているにすぎないといいます。



約2000万年前以前にできた火山島が水没し、上に乗ったサンゴ礁が島の土台となっていましたが、台風や大きな波による浸食が続きました。

国連海洋法条約では、高潮時にも水面上にある自然できた陸地を島と呼びますから、政府は過去に数々の手
を打ってきており、コジマの水没を防ごうと鉄の塊や護岸で囲んできました。

しかし、温暖化が招く海面上昇などの脅威の前に、危機感を募らせます。



沖ノ島のEEZを日本が必要とする理由は、地政学上の位置にあり、政府はこの海域で貴重な資源のコバルトやニッケルが採れるともくろみます。

米グアムと沖縄を結ぶ海上ルートに入り、台湾有事の際に日米の連携を助けるとする声も上がります。



陸地の高さは北小島で16cm、東小島で6cmとわずかなようですが、公式にわかっていないようです。

さらに日本にとって厳しい見解が国際仲裁裁判所で示され、島のような地形にEEZなどを際限なく設ければ混乱するので、権利を持つのは居住または独自の経済生活ができる地形としました。

生活を重んじる裁判所の解釈がまかり通れば水没せずともEEZのために別の説明が必要となります。


米国やフランス領には高潮時に水没の疑いがある陸地でもEEZを維持する例もあり、何が正義化の答えはないようで、これからの行動が秩序を決めることになるのかもしれません。
posted by 川上義幸 at 16:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記