2023年02月27日

生態系破壊による感染症リスク

人間活動の影響によって生物の多様性が損なわれ、感染症の脅威が増すとの報告があいつでいます。

ウィルスなどの病原体を持つコウモリの生息域が変化したり、病原体を媒介するネズミやダニが増えたりするからです。

人の命を守る観点からも生物の多様性の保全は重要といえます。



昨年の12月の国連の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は、2030年までに地球の陸域と海域の30%以上を保全する「30by30」を柱とする新たな世界目標を採択しました。

目標には「健康に対するリスクを減らすために生物の多様性への影響を低減し、環境の劣化を軽減する」ことも盛り込まれています。


「生息地の破壊と気候がコウモリの行動を変え、ウィルスの『スピルオーバー(異種間の感染)』のリスクを高めている」と、オーストラリアの研究チームがオオコウモリから主に馬を経由して人に感染するヘンドラウ
ィルスと人間活動の関係を網羅的に調べた研究を発表しました。

ヘンドラウィルスは豪州のオオコウモリの排せつ物や唾液を介して馬にうつり、馬と密接に接触した人にもまれに感染し、致死率は50%を超えます。

森林伐採による生息地の減少などで、オオコウモリは農地の近くに移動し、馬へのウィルス感染が増えてきました。


豊かな生物多様性によって人獣共通感染症のリスクが薄まる「希釈効果」を実証する研究者は、「生物の多様性が損なわれると、病原体を持つ動物が増えてしまう」と語ります。

ケニアでの調査では、大型哺乳類がいなくなるとネズミが増え、ペストなどの病気を媒介するノミも得ることを見出しました。

豊かな生態系の方が人獣共通感染症のリスクが低いわけです。



各国の科学者が参加する「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間の科学政策プラットフォーム」の
報告書によると、新興感染症のうち3割以上は土地利用の変化や都市化などに起因するといいます。


生物多様性の保全は、希少生物を守るだけでなく、人の健康や生命を守る面でも意義がありそうです。
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2023年02月26日

移住の現実的問題

「都会暮らしを地域に押し付けない」、「品定めがなされていることを自覚して」などの移住する人に向けたこんなメッセージが、ある町の広報誌に掲載され、SNSで議論を巻き起こしています。

「排他的だ」という批判の声もあれば、「正直に書いてくれた」と賛同する声もあり、コロナ禍やリモートワークの普及でライフスタイルを見直す人が増えるなか、どうすれば地方移住がうまくいくのか、事前の心の準備が必要のようです。



福井県池田町では、区長会はことし1月、町の広報誌に移住者に向けたメッセージ「池田暮らしの七か条」を出しました。


「池田暮らしの七か条」
第1条 集落の一員であること、池田町民であることを自覚してください。
第2条 参加、出役を求められる地域行事の多さとともに、都市にはなかった面倒さの存在を自覚し協力してください。
第3条 集落は小さな共同社会であり、支え合いの多くの習慣があることを理解してください。
第4条 今までの自己価値観を押し付けないこと。また都会暮らしを地域に押し付けないよう心掛けてください。
第5条 プライバシーが無いと感じるお節介があること、また多くの人々の注目と品定めがなされていることを自覚してください。
第6条 集落や地域においての、濃い人間関係を積極的に楽しむ姿勢を持ってください。
第7条 時として自然は脅威となることを自覚してください。特に大雪は暮らしに多大な影響を与えることから、ご近所の助け合いを心掛けてください。



これがSNS上で議論を呼びました。

  「移住なんて間違ってもするもんかと固く決心」とか、「集落を守りたいなら変わらなきゃならないのは移住者でなくて自分達だ」といった批判の声が上がります。

  その一方で、「こういうのを明文化するのは良いアイデアだと思う」とか「地方では草刈りなど住民がやらざるを得ないケースがある。なぜ都会そのままの価値観で移住できると思うのか」といった肯定的な声まであったようです。


  背景には、移住者の受け入れ側となる地元の区長たちが頭を悩ませていたことがあったといいます。

  町の空き家バンクなどを通して移住していれば、ある程度人となりが分かりますが、町外の不動産業者を通して移住してきた場合、接点の持ち方がむずかしく、「草刈りや雪かき、地域の行事に参加してほしいがどう接していいかわからない」という声があるのです。


  そうした現実を前に移住者からは、「事前に言ってくれればよかった」と言われることも多く、地元の区長は「わからなければ聞いてくれたらよかった」というジレンマを感じていたといいます。

  今回の七か条はそうした双方の認識のズレを何とかしたいと思って公表したものだと言います。



  地方移住への関心は年々高まっています。

  熊本県で人気の移住先の1つ、海に囲まれた「天草市」です。

  イルカウォッチングが人気で、世界遺産もある観光地ですが、ここ10年で730人が移住し、定住率は8割だということです。

  力を入れているのが、移住者の悩み事の相談に応じる、いい意味での「おせっかいやさん」を作ることです。

  定住率が高いのは、コーディネーターやサポーターの役割が大きく、いい意味での「おせっかいやさん」がいて、移住者のいろんな困り事の相談に乗り、区長に移住者を紹介することもあります。

  また、地域で子育てをしたり、野菜や魚を分け合ったりする地域性も定住につながっているようです。



  一方、コロナ禍で移住者が新たな問題に直面するケースも起きています。

  熊本市では、東京の会社に在籍しながら移住してリモートワークで働く人が相次いでいます。
こうした移住者に新たな悩みが出てきました。

  「コロナ禍による孤立化」です。

  さまざまな行事が中止になり、人間関係が築きづらくなっているというのです。



  そこで、でてきたのが「移住者交流カフェ」です。

  去年11月、移住者どうしの交流や、先輩移住者への悩み相談の場として開かれ、移住者9人が、熊本市の魅力や生活、悩みを話し合ったということです。


  移住者ともともとの住民との関係は決して新しい問題ではありませんが、移住への関心がますます高まる中、移住者も地元で暮らす人もお互いがわかり合い協力し合える環境づくりが重要になってきているといえそうです。
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2023年02月24日

BNCT

がんの治療法の一つ「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」が注目されています。


BNCTは世界の最先端をゆく日本発の粒子線治療技術です。

がん細胞がホウ素を取り込む性質を利用し、ホウ素と中性子の核反応でがん細胞を破壊します。

治療は1時間弱で基本的に1回で済みます。

高い効果と患者負担の軽さから従来の手術や放射線、抗がん剤、免疫療法に続く、がん治療の「第5の選択肢」として注目されます。



近年は米国や英国、アルゼンチンなどの各国で開発が進み、日本のシステムが中国に導入されることが決まったようです。

しかし、これまでの実用化までの道のりは平たんではありませんでした。

BNCTは当初、中世を生み出すために原子炉を使っていましたが、原子炉の利用は核物理学などが中心で、医療用に使えるのは1年でわずか4〜5日で、予算も限られていました。



研究は米国で1950年代に始まり、京都大学が1970年代に参入しましたが、成果が見えないまま推移します。

転機は2001年に訪れ、打つ手がない患者に対して粒子線をあてると、腫瘍が目に見えて縮小し、患者は日常生活を送れるまでに快復しました。

その経緯は国際学会で発表され、問い合わせが相次いだといいます。



多くの患者が利用できるよう医療機器としての実用化を目指しましたが、厚労省は原子炉は医療機器として認められないとして認可しませんでした。

  そこで考えられたのが原子炉の代わりに加速器を使うアイデアで、住友重機械工業との共同研究で2020年に世界で初めて薬事承認を取り付けました。


  現在では大阪府と福島県の2か所で保険適用の治療が受けられます。
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2023年02月23日

ウクライナ入り実現するか

バイデン大統領が20日に首都キーウを電撃的に訪問しました。

ウクライナのゼレンスキー大統領は1月、首相との電話協議で首相の同国訪問を要請していました。

ロシアによるウクライナ侵攻後、主要7か国(G7)の首脳で現地入りしていないのは岸田首相だけになったようです。



このため、日本は2023年にG7の議長国を務め、5月に広島でG7首脳会議を開くこともあり、その際にウクライナ問題は主要な協議テーマとなることから、首相はウクライナ訪問をなんとしても実現させたい模様です。

ただ、現地での安全確保が大きな課題となっており、ウクライナの上空はミサイルや軍事目的のドローンが飛び、航空機での移動は危険を伴います。



バイデン氏はウクライナの隣国ポーランドに空路で到着後、鉄道でウクライナへ入り、ゼレンスキー大統領との会談後も列車でポーランドに戻りました。

ドイツとフランス、イタリアの3ヵ国首脳が2022年6月にそろってキーウを訪問した際もポーランドから鉄道で向かったようです。

キーウではバイデン氏の滞在中にも防空警報が鳴って、隣国のベラルーシからロシア軍の戦闘機が飛び立ったためとされています。



首相を警護する態勢にも懸念の声が上がり、現地で自衛隊は首相の警護を担えないとされています。

過去に自衛隊を海外に派遣したのは後方支援やPKOへの協力などで、米欧首脳の訪問時は自国の警護隊やウクライナの警察当局などが警備したとされ、国の事情が異なります。


日本では、国会の開会中に首相や閣僚が海外へ行くには国会の了承を必要としており、また国会で3月まで予算案の審議が見込まれ、国会日程との調整が簡単ではなさそうです。


さらに、訪問が実現した時にどのような支援策を打ち出すかという難題にも直面します。



G7首脳会議の議長国として各国をリードしていくうえでウクライナ訪問で実績をつくりたいところでしょうが、世界標準となっていない日本の事情がまた足かせになりそうです。

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2023年02月21日

梅の開花

梅の花は福岡の県花にもなっており、太宰府天満宮が梅名所として有名です。

しかし、福岡市には知る人ぞ知る、1000本以上の梅が咲くスポットが数多く存在します。


最も本数が多いのは、約3万本の梅の花が咲く谷川梅林です。

また、約1kmにわたる癒しの梅街道や、お座敷で堪能する珍しい梅花園など、色んなタイプの観梅スポットがあります。


福岡の梅の見頃は、2月上旬〜3月上旬がメインです。

2023年は年明けから気温が高い日が続いたため、平年よりやや早めに見頃を迎えているようです。



早梅を植えている太宰府天満宮では、御神木の飛梅を1月下旬から楽しむことができています。



小富士梅林は、福岡県糸島市志摩にある景観の美しい観梅スポットです。

いつも、シーズンになると梅ちぎりの案内をいただき、妻と二人でお伺いしいっぱい梅をちぎってきます。

梅シロップにして、炭酸を加えて夏の清涼飲料として愛飲しています。

小富士梅林には、梅の蜜を求めてメジロも飛んできます。

糸島の海を背景にしてみる梅は、青空と海と梅の花のコントラストが美しく、インスタ映えし、梅とメジロ、青空と海と梅は、福岡県内で最も美観のスポットのようです。



山王公園の梅も満開を迎えていて、朝のウォーキングの際に写真を撮ってきました。

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2023年02月20日

春一番

  昨日は、寒さが緩み雪が雨に変るころとされる、二十四節気の一つ「雨水」にあたりました。

  そして気象台は、九州北部は2年ぶりに「春一番」が吹いたと発表しました。

  春一番は、立春から春分までのころに吹く南寄りの強い風(最大瞬間風速7メートル以上)のことで、低気圧が発達しながら日本海を東に進んだため、南寄りの暖かい空気が九州北部に流れ込んだためだといいます。



  昔、1859年2月13日に長崎県壱岐郡郷ノ浦町の漁師が出漁中に、強風によって転覆し、53人の死者を出した
と言われています。

  このため、「春一番」は春の訪れを感じさせてくれる響きではあるものの、急発達する低気圧をお報せする防災上非常に重要な表現として言い伝えられています。

  当時、漁師の間で「春一」と呼ばれて物を「春一番」と呼ぶようになったそうです。

  文字通り春の到来を告げる優しい風のように感じますが、海上は大シケで海難事故が発生し、空のダイヤも乱れて警戒を要する風でもあります。



  昨日は筑紫丘GCの月例会でしたが、雨模様で風も強い中でのプレーとなりました。

  天候にも恵まれず、そして絶不調の中でのゴルフでしたのでどうなるか不安でしたが、少しずつショットも戻りつつあって、何とか最低のラウンドができたように感じます。

  風が強いと、ついつい風に負けじと力んでスウィングする悪い癖がありますが、この日は少しは減ったようで、何といってもパッティングが安定してきたのがプレーの好循環につながったようです。

  しかし、まだまだ思い描いたゴルフには程遠いものがあり、練習をしないといけませんね。



  春一番が吹くと季節外れの暖かさとなりますが、例年、低気圧の通過後は冬型の気圧配置となり、日本海側では雪や雨、各地の気温もその時期らしい寒さに戻り、日ごとの気温差が大きくなるようです。

  確かに九州北部は、21、22日ごろかに気温が平年を下回る冷え込みに戻り、27日ごろに気温が再び気温が上昇する見通しで、三寒四温で春へ向かっていきます。
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2023年02月19日

中食に注目

  飲食店で食べるのが「外食」、家庭で料理する「内食」に対して、調理済みで家に持ち帰って食べる総菜などを「中食」と呼びます。

  スーパー各社が調理済みの総菜など中食分野を強化しているようです。



  共働き世帯の増加などを背景に市場が拡大してきた中食は、新型コロナウィルス下の巣ごもり需要も捉えて堅調に推移してきました。

  一方でスーパー全体の販売は、経済再開に伴う外食需要の回復や巣ごもりの反動で伸び悩んでいます。

  飲食店など外食に比べて割安感のある総菜を拡充し、物価高で節約志向を強める消費者の需要を取り込もうとしています。



  イオンリテールは総菜の新ブランド「エー・レーベルデリ」を立ち上げ、総菜の3割にあたる約150品目を新ブランドに変更しました。

  低温でじっくり煮込んで食材の味を引き出すなど、レストランの調理法を取り入れ、価格は従来品より1.5倍ほど高いですが、本格的な味わいながら、飲食店の価格と比べて3割ほど安いときています。



  ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスは、植物肉を使った調理済み食品を販売しています。

  健康志向の高まりや、環境に配慮した食生活にこだわる消費者が増える中、スーパーではまだ珍しい植物肉で需要開拓につなげています。



  総菜などの「中食」市場は拡大傾向にあり、総菜の利益率は40%前後とされ、20%前後の加工食品や生鮮食品と比べて高いようです。

  大手メーカー品の値上げラッシュが続く中、自社でコストなどを管理しやすい総菜の強化は収益力向上につながることもあり、スーパー各社は相次ぎ取り扱いを拡大しています。
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2023年02月18日

微笑み外交

中国が米国や欧州への外交を修正しています。

相手国に威圧的に振舞う「戦狼外交官」を異動させ、米欧との対話に動いているようです。

「微笑み外交」に急旋回した背景には中国のロシアへの不信感がありそうです。



「戦狼外交官」として有名となった趙立堅氏が左遷され、国境海洋事務局に異動しました。

世界メディアが注目し、退任後に主要国大使などに就くこと多い報道官と比べ、地味な部署との印象がぬぐえません。

趙氏は2020年に報道官に就き、こわもてで威圧的な発言を繰り返して有名になりました。

2020年春には武漢市で新型コロナウィルスがまん延する中、根拠も示さぬまま「米軍が武漢に持ち込んだ可能性」とツィッターに投稿したこともあります。



  今回、外相に就いた秦剛氏は、真っ先にブリンケン米国務長官に電話で「率直で建設的な話し合いに感謝する。密接な協力関係を続けたい」と低姿勢を示しました。

  この唐突に思える「微笑み外交」ですが、習近平指導部がロシアへの不信感を高めており、米欧との緊張緩和を進めてバランスをとろうとしているようです。

  秦外相は対ロ外交について「同盟を結ばず、対立もせず、中ロで第3国には対抗せず」の3方針を外務省会
の会合で示しました。



  ウクライナ侵攻前の中ロ首脳会談で「中ロ有効には限りがない」と蜜月を誇ったのが遠い昔のようです。

  習指導部はロシアからウクライナ侵攻について具体的計画を事前に示されなかったし、欧米からはロシアとの関係を批判され、経済制裁までちらつかされました。



  一方のロシアは中国を欧州に代わる資源輸出先にして戦費を調達し、中国との友好関係があったから国連でも孤立しませんでした。

  「ロシアから利用されている」と中国では不信感が広がったようです。



  すでに中央アジアでは、天然ガスを巡って両国のさや当てが目立ってきました。

  中ロの蜜月は「ロシア以外に親しくとしてくれる国がなかった」という中国の外交の厳しい現実の裏返しでもありそうです。
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2023年02月17日

日本学術会議の会員選考方法改正

政府は科学者の代表機関である日本学術会議について会員選びの仕組みを改める法案をまとめたようです。



現会員の推薦に基づく現行方式を第三者の推薦や意見を反映する形式へ変えます。

選考過程の透明性を高めて安全保障を含めた多様な研究分野の学者を登用しやすくします。



歴代首相は学術会議の推薦に沿って会員を任命してきましたが、菅前首相が2020年秋に候補6人の任命を拒否し紛糾しましたが、そのことがきっかけとなり、選定プロセスの見直し論が浮上しました。

そもそも、政府・自民党内に「首相への推薦までの過程が不透明だ」「人材の特徴が似通い同質的な集団になると時代の急変に即応できない」との声が上がっていました。



前首相の一言でこの問題に対する国民的議論にもなり、その後学術会議では軍民両用技術の研究を事実上容認する声明を昨年7月に出していましたし、第三者による会員選考への関与には昨年の12月に「首相による任命拒否の正当化につながりかねない」との見解を公表していました。

大学の関係者は、政府の求める改革が機能すれば今までより多様な人材が会員になるといい、しかし制度が変わっても従来選ばれていたような人が会員になる可能性はあり、運用が重要になると指摘しています。
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2023年02月16日

“排水”から“電気”を作る技術

電気料金の値上がりが、企業にも家庭にも大きな影響を与えていますがそんな中、工場から出る“排水”から“電気”を作る技術を開発した会社があります。

愛媛にある小さなこの会社、今、海外にも大きなビジネスチャンスを見いだそうとしています。

その会社は松山市にある水処理メーカー『愛研化工機』で、創業は1982年の従業員10人余りの中小企業で、工場から出た排水を処理する装置の開発を行っています。



今注目されているのが「ネット・ゼロ・エネルギー型排水処理システム」という最新装置です。

排水の処理には大量の電力が必要となりますが、この装置は汚れた水をきれいにするだけでなく、処理過程でエネルギーを生み出し発電するといいます。

捨てられていた排水から電気を作ることができるこの装置で会社は特許を取得し、ことし1月に発表された「ものづくり日本大賞」で優秀賞を受賞しました。



この装置で欠かせないのが「グラニュール」という微生物です。

大きさは1ミリから2ミリほどで、排水に含まれる有機化合物をメタンガスに転換する性質があります。

その仕組みは工場から出た排水と微生物を接触させることで排水に含まれる有機化合物がメタンガスに転換されます。

メタンガスを装置の中で燃焼させることで、ボイラーとしての利用のほかガスタービンを回転させることで発電できます。

その電気は排水処理装置の動力として再利用するため、工場の電気の使用量を大幅に減らせるというわけです。



工場排水からエネルギーを回収する技術自体はオランダで開発されました。

しかし、コストが高いとかエネルギーの回収効率が低いといった課題があり普及しませんでした。

それをこの会社は微生物の研究や装置の改良を続けて、およそ20年かけて製品化にこぎ着けたのです。



この会社は海外にも目を向けていて、ターゲットとする国はインドネシアです。

インドネシアでは人口が増加し、経済成長が続く一方で、家庭から出る生活排水や工場排水は処理が不十分なまま流されているため、用水路だけでなく川や湖の水質汚染が課題となっています。

排水処理には大量の電気が必要ですが、この州では電力不足も課題となっているため対策が進んでいないのです。



きれいな瀬戸内海もかつては工場や家庭からの排水の影響で赤潮が頻発し「ひん死の海」とまで呼ばれた時代があります。

それを愛媛の企業は技術力を磨いて水質を改善させ、今では風光明美な海として海外の観光客にも人気のスポットとなっています。

今では、愛媛で鍛えた技術を世界で通用させようとしています。
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2023年02月13日

インバウンド第2幕

2022年12月の訪日客は137万人で、2020年2月以来の100万人超を記録しました。

新型コロナの水際規制が大幅に緩和され、日本観光が本格的に再開しました。

中国本土からはまだ少ないものの、全体は回復傾向にあります。



コロナ禍前にフランスは1年間で人口の約1.4倍、スペインは約1.8倍の外国人観光客を受け入れています。

日本に当てはめると1億5000万人を上回る規模となり、観光先進国になぞらえれば伸びしろは大きいといえます。



これまでは首都圏や関西などを周遊する定番の「ゴールデンルート」から外れると、知名度が低かった訪日客の獲得に苦戦してきた地域の動きが目立つといいます。


日本海に面しかつて北前船の寄港地として栄えた酒田市は、訪日客を素通りさせまいと、地域が一体となって誘致を盛り上げています。

料亭文化が広がり、舞娘の演舞を見られる茶屋があったり、コメや日本酒といった日本を代表する食材も豊富にあり、自然や歴史・文化、食を組み合わせた楽しみ方を提供しようとしています。



茨城県は歴史的な街並みや有名な温泉地などが少ない一方、ゴルフ場は約120カ所と多彩なコースを抱えます。

台湾はゴルフなどのアウトドアスポーツの人気が高く、茨城県は観光資源に見合った旅行ニーズのある台湾をターゲットとし、PR動画の配信などで地道に情報発信を続けた努力の成果が表れつつあります。



日光地区は自転車で行ける範囲に観光スポットが点在する地の利を生かし、サイクリングツアーで課題である連泊客の獲得につなげています。



愛媛県大洲市では、大洲城の木造復元天守に泊まる「キャッスルステイ」を行っていて、宿泊料は1組1泊110万円からと高いですが、それでも3〜6月は11組の予約が入っており、そのうち2組はインバウンドです。

桜の季節にはキャンセル待ちも発生するほどの人気となっています。


  危機感を危機感を募らせた地域の創意工夫が、コロナ禍前と異なる顧客層を呼び寄せているようです。
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2023年02月12日

揚水発電

経済産業省はポンプでくみ上げた水で発電する揚水発電所の維持や更新を支援するといいます。


揚水発電は太陽光など再生可能エネルギーの電気を貯める「自然の蓄電池」となります。

揚水発電は電気に余裕がある際にポンプでダムの下方から上方の貯水池に水を上げ、電気が足りなくなれば貯水池の水を放出し、タービンを回して発電します。


これまでは夜間に余る電力を貯める役割がありましたが、近年は再生エネルギーを補完する意味合いが強くなっています。

太陽光発電は夕方になると、発電量が急激に落ち、電力不足が懸念される時間帯は揚水発電が頼みとなります。



経産省によると、揚水発電所は2030年までに約250万kwが建設から60年ほど経過し、運転停止や廃止のリスクが高まるといいます。

電源維持に向け、維持更新の投資額の1/3まで補助することにしてます。


また、天候を予測するAI導入も支援することにしていて、数日先が好天で太陽光の発電量が多くなる一方、足元の電力需要が小さいと予測できれば、あらかじめ水を落としてくみ上げに備えます。

こうすることで、設備の稼働率を上げ、発電機会を増やすことができます。


古い機器の取り換えなどで効率向上を図ったり、新規開発の可能性を調査したりする事業者にも1/3を上限に補助します。


政府のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議は2022年12月にまとめた基本方針で「揚水発電所の維持・強化を進める」としたようです。
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2023年02月10日

物流業界の「2024年問題」

  物流業界で「2024年問題」と言われる深刻な人手不足があり、“このままでは、2030年には35%の荷物が運べなくなる可能性がある”といいます。

  「2024年問題」は先日、取り上げた国交省が2024年度を目途に高速道路料金の深夜割引を見直す背景にもなっています。



  2024年問題とは、働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題の総称のことですが、年間時間外労働時間の上限を設定することでトラックドライバーの労働環境を良くなりますが、その一方で課題もあります。

  輸送量の減少で、その1つが長距離輸送の仕事を減らさざるをえないことです。

  会社としては、ドライバーの人数を確保したいところですが、業界全体は今でも人手不足が深刻な中、新たなドライバーを雇用するのは難しい状況です。


  このため長距離輸送の受注を減らさざるを得なくなりますが、単価の高い長距離輸送を減らせば、売り上げにも響きかねません。

  会社の経営者は、安定的な物流網を維持するには、荷主や消費者の理解が欠かせないと指摘します。

  このまま対策を打たなければ2025年には28%の荷物が、そして2030年には35%の荷物が運べなくなるという試算がなされています。



  国は、去年9月に有識者でつくる検討会を設け、今月17日の会合で「中間とりまとめ案」を提示しました。

  ポイントは、荷主側の企業にも取り組みを求めたことです。

  この中では、荷主側にも、納入先での待機時間や納品回数を減らすなどの「計画的な改善を促す措置」を検討すべきだと提言しました。

  具体的には、荷主側が物流の改善計画を策定し、国に報告を義務づけることを法律で規定します。

  そして、取り組みが計画を大きく下回った場合に、国が勧告を行うことなどが念頭に置かれています。



  2024年問題は、事業者だけの課題ではありません。

  国土交通省の調査によると、ネット通販の普及などを背景に宅配便の荷物の数は右肩上がりに増え続け、2016年度に初めて40億個を突破し、昨年度・2021年度は49億個に上りました。

  一方で、再配達となる荷物の割合も高止まりしていて、去年10月の調査では再配達率は11.8%と、実に10個に1個が1回の配達で届けられていない状況にあります。

  私たち消費者も、宅配の再配達を減らすなど協力できることがありそうです。


  急な予定で自宅で受け取れない場合には、事前にスマホアプリやウェブ上で配達日時を変更すれば、再配達を減らすことができます。

  また、最近では玄関先に設置した宅配ボックスなどに届けてもらう「置き配」も広がっています。

  さらには、急ぎではない商品は「即日配達」や「翌日配達」を選択しないというのも、ドライバーの負担軽減につながります。


  事業者任せにせず、消費者一人一人が考える必要があるようです。
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2023年02月09日

債権ルネサンス

2023年のグローバル金融市場の先行きを巡って、世界の投資家の中で2つのコンセンサスができつつあるようです。


1つ目は、世界景気はこれから後退局面に入る可能性があり、それに伴ってリスク資産の価格変動が高まるだろうということです。

2つ目は、そんなマーケットにも一つだけ有望な投資先があり、それは2022年には歴史的な暴落劇を演じた債権です。



年初で順調なスタートを切った米国株が1月中旬に突然変調し、下落しました。

原因は、投資家が米国のリセッションを本気で警戒し始めたことです。

そんな米国株の変調の裏で買われ始めた資産が世界の債権です。


なぜ債権なのかというと、最大の理由は、ソブリン債や高格付け社債といった投資適格債はインフレに脆弱な反面、リセッションに強い資産だからです。

景気悪化局面でプラスのリターンを上げ続ける可能性が高いのは、信用力の高い債券だけのようです。



もちろんリセッションはまだ確定していませんし、FRBが巧みに利下げに転じるなどし、米国経済がソフトランディングに成功する可能性もあります。

その場合は金融相場で債権よりも株のリターンが高くなりますが、そのシナリオだけにベットするのはリスクが高いというわけです。



だとすれば、株価は急落する可能性が高いハードランディングでもプラスのリターンを確保できる債権に投資するのが手堅い戦略といえます。

FRB は年央にも利上げを停止するだろうといわれており、金利リサイクルがピークをつけるのであれば、必然的に最も有望な投資先は債権というわけで、『債権ルネサンス』の時代が始まるということでしょうか。


昨年、一昨年と2年続けて下げた例は少なく、ましてや3年連続で米国債が下げたこと一度もないようで、下げ過ぎた資産はいずれ上がるというわけで、その反動は株より債権の方が大きくなりそうだということです。
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2023年02月08日

中国の実体経済は?

  中国の実体経済は厳しい状況に直面しています。


  要因の一つとして、人の移動が制限されたことによる経済的な負の影響は大きく、特に、雇用環境はかなり厳しいようです。


  コロナ禍の発生は、共産党政権主導で産業を育てIT先端分野などで雇用を生み出し、国民の所得を増やす経済運営を行き詰まらせました。

  加えて、生産年齢人口の減少や、不動産バブル崩壊などの負の要素も重なりました。


  それらの結果として、高度成長期は終焉を迎えつつあり、2023年の労働市場には過去最多となる1158万人の大学卒業者が供給されると予想されています。



  経済成長率の低下に伴い、雇用環境がさらに厳しさを増す可能性は高く、その状況下でゼロコロナ政策を続けていては、雇用を下支えしてきた中小企業への向かい風は強まるに違いありません。

  特に、飲食や宿泊、交通などのサービス業の経営悪化は避けられず、中国全体で採用は手控えられ、コストカットのための人員削減に追い込まれる企業が増えるでしょう。  

  共産党政権は金融緩和などによって中小企業への資金繰り支援を強化していますが、新規の融資は予想されたほど増えていません。



  コロナ感染再拡大による防衛本能を背景に個人消費も停滞していて、中国経済を取り巻く外部環境の不安定感も一段と高まっています。

  特に、FRBによる利上げによって米国の個人消費は徐々に減少しており、2022年の年末商戦では、多くの企業が夏頃から積み上げた在庫を圧縮するために値下げを余儀なくされました。  


  米国の需要減少によって中国の輸出も減少傾向にあり、中国の雇用創出力の低下、その後の内外需の縮小をベースに、16〜24歳の若年層を中心に考えると、中国の雇用環境は厳しいと考えられます。


  台湾問題や労働コスト上昇などを背景に、生産拠点を中国からインドなどに移す企業も増えていて、中国経済の回復ペースはこれまで以上に緩慢になると予想されます。
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2023年02月07日

インドの経済発展

去年のインド国内の自動車販売台数が、日本を抜いて世界第3位となりました。

インドの経済発展を象徴する動きといえます。



去年のインド国内の自動車、新車の販売台数は、472万台で前の年より25%あまり増加しました。

一方、日本は5%あまり減少して420万台で、インドが日本を抜いて世界3位となり、3位と4位が入れ替わりました。

1位は中国で2686万台、2位はアメリカ1390万台で、この2つの順位は変わらずです。



インドで自動車販売が増えた直接の要因は、コロナの影響が弱まり、個人消費が回復したことで、さらに日本をはじめ世界の自動車業界は半導体不足の影響で生産態勢に支障が出ていますが、インドで売れ筋の車は先進国向けと比べて使っている半導体が少なく、影響も小さかったことが背景にあると見られています。


先週中国の人口が61年ぶりに減少に転じたと発表されましたが、インドの人口はことし、国連の推計で中国を抜いて世界一になると見られています。


自動車の普及率も各国と比べてまだ低いのに対し、所得水準があがって中間層が増えています。

またインドのモディ首相も2014年の就任以来、「メーク・イン・インディア」を掲げて製造業を振興し、裾野が広い自動車産業をその核として育成に努めてきました。


インドで最大のシェアを占めているのはおよそ40年前にいち早く進出した日本のスズキの子会社です。

日本のメーカー各社も力を入れていて、日本の自動車産業にとってもインドの重要性は増していきそうです。



人口14億を超えるインドの人たちが先進国と同じように車を持つと果たしてどうなるのかについては、これまでも議論のテーマとなってきました。

大気汚染、温暖化といった環境問題、エネルギーの確保の問題は、地球規模で影響を与えかねません。

インド政府は車の排気ガスを減らそうと、2030年までに乗用車の30%をEV=電気自動車にする計画を打ち出しています。


ただこの割合、ほかの国と比べて低く、この対策で大丈夫なのか、不安視する声もあります。

持続可能なかたちで経済を発展させることがインドにとって最大の課題です。



インドはGDPも2030年頃までには日本を抜くという見方があります。

自動車業界の動きは、インド経済が本格的に動き出そうとしていることを象徴するものと言えそうですが、こうした経済の動きは、ここ20年ほど、同じ人口規模の中国経済で起きてきた大きなうねりが、これからインドで起きることを予感させます。

日本にとっても世界にとっても目が離せないものとなっていきそうです。
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2023年02月06日

日本の国際競争力の低下に愕然

  世界的な人口増加が続いていて、世界人口は2022年11月に80億人に達しました。

  最近の情報では、インドが中国を抜いて人口世界一に躍り出たのではないか言われています。


  G7でトップ10に入っているのはアメリカのみで、トップ10にはアジアが5カ国を占め、中国とインドの2国で世界全体の36%を占めています。

  世界中に展開している中華系、インド系住民を加えたらその比率はさらに高まります。  

  中国とインドは人口だけでなく国土面積も広大で、経済成長率も8%台とG7各国を大きく上回り、GDPで見れば中国は世界第2位、インドは世界第5位になっています。

  人口、国土、経済、そして軍事面でも世界有数の大国です。  



  一方、日本はというと2008年をピークに人口減少が続き、GDPは30年前から500兆円台のままで、実質賃金は下落し続けていて、当然ながら、日本の国際的影響力はどんどん低下しています。

  日本はGDPこそ依然として世界3位をキープしていますが、1人当たりGDPはアメリカの半分以下の水準で、イタリアと並んでG7の中で最低水準にあります。



  日本の地盤沈下を象徴的にするのは「国際競争力」で、スイスのビジネススクールIMD作成の『世界競争力年鑑』によると、日本の順位は34位で、1989年から1992年までトップを維持し、1996年までは5位以内だったのが1996年の4位を最後に2ケタ順位に定着しています。

  2022年は過去最低(2020年と同位)の34位まで低下しました。  

  ちなみに2022年版のトップ10は(1)デンマーク (2)スイス (3)シンガポール (4)スウェーデン (5)香港 (6)オランダ (7)台湾 (8)フィンランド (9)ノルウェー (10)アメリカ となっています。 
ちなみに、中国は前年よりランクを1つ落として17位、インドは6つ順位を上げて37位となっており、日本を逆転するのも時間の問題かもしれません。

  日本は、韓国27位、マレーシア32位、タイ33位よりも下位となっています。  



  この国際競争力は4つのカテゴリー(経済状況、政府効率性、ビジネス効率性、インフラ)における各5つの競争力指標(合計20)の順位を総合判定したものです。  

  たとえば、日本の指標ランクでひと桁順位となっているのは、「経済状況」雇用2位が最高で、あとは「インフラ」科学インフラ8位、健康・環境9位、この3指標のみです。

  逆に「経済状況」物価は60位、「ビジネス効率性」経営プラクティスは63位で最下位、「政府効率性」財政は62位と厳しい評価です。

  24指標中、9指標が40位以下という惨憺たる状況です。  


  まさに「失われた30年」を象徴するデータといえるでしょう。
posted by 川上義幸 at 17:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年02月05日

水源確保に向け熊本の自治体、企業、農家の三位一体の取り組み

  半導体受託製造の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)グループの半導体工場の建設工事が、熊本県菊陽町で急ピッチで進んでいます。

  昨年の秋、現地視察の折に建設予定地を通りましたが、何台ものクレーンが所狭しと動いていました。



  TSMCは早くも日本に2つ目の工場検討を表明しているようですが、TSMCの特需に沸く九州の自治体間で誘致競争が予想されますが、ネックは工業用水といわれています。

  半導体工場は、洗浄工程で大量の純水を必要とし、工場の近くに豊かな水源が欠かせません。



  現役当時、半導体の材料となるシリコンウエハー製造大手のSUMCOが伊万里工場を拡張する話があって、そ
のために洗浄用水の確保が必要となりました。

  港の貯木場を淡水の貯水池にして安定的な水源確保を行いましたが、幾多の難工事で苦労したことを思い出します。



  熊本が先行した裏には、農家の水田を活用して水資源を守る熊本県独自の施策がありました。

  熊本市や菊陽町、合志市など地域は、阿蘇山大噴火で積もった堆積物がもたらす豊富な地下水を頼りに産業を育んできており、生活用水と工業用水のほぼ全量を地下水に依存します。



  新工場は、県全体の3%弱に相当する1万2000m3/日を取水することから、同じ水量を湛水などで地下に戻し水源涵養を行っているようです。

  この湛水を農家の協力を得て、稲刈りを終えた田んぼや転作田に水を張るようにしています。



  熊本では自治体、企業、農家が三位一体で地下水を守る取り組みを行ってきており、この取組みはソニーグループの半導体事業の進出のきっかけに始まったようです。

  現在は、ソニーに加え、成約会社のKMバイオロジクスやサントリー工場の進出の際にも同様な取り組みを行っているようで、今回のTSMCの進出でもこの熊本方式が採られているということです。
posted by 川上義幸 at 20:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年02月04日

高速道の深夜割引見直し

  国交省は、2024年度を目途に高速道路料金の深夜割引を見直すようです。

  今は、対象時間帯に少しでも走れば全区間の料金を一律30%割り引く方式でしたが、割り引を対象時間分に限り、時間は午前0〜4時から、午後10時〜午前5時に拡げます。


  現行の仕組みは2004年に導入しました。

  トラックなどを高速道路に誘導し、夜間の一般道の交通量を減らしたり、騒音を軽減したりする狙いがありました。



  深夜割引を受けようと対象時間になるまで出口手前で待つことで発生する渋滞問題が発生し、事故の危険を高め、ドライバーの深夜の過重労働につながっているとの指摘がありました。


  加えて、見直しの背景には物流業界の「2024年問題」もあります。

  2024年問題とは、働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題の総称のことです。

  これまでトラックドライバーの労働環境は、長時間労働の慢性化という課題を抱えていました。

  若手不足と高齢化による労働力不足の中、EC市場の急成長による宅配便の取り扱い個数の増加により長時間労働が常態化していたのです。


  2024年の法施行では自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限を設定することでトラックドライバーの労働環境を良くしようという狙いがあります。

  一見、物流業界がホワイト化する良いきっかけとなるように思われ望ましい方向のように見えますが、課題もあります。



  一つ目は、運送・物流業者の売上、利益が減少する問題です。

  規制により、1日に運べる荷物の量が減るため、運賃を上げなければ収入が減少してしまいます。

  しかし、運賃を上げることは容易ではありません。6万社を超える運送業者の過当競争の中、荷主企業はより運賃の安い業者へ依頼するため、運送業者が荷主と価格交渉しにくい現状があります。

  また、中小企業で月60時間の時間外労働が発生した場合には、2023年の法施行により割増賃金率が25%から50%へ引き上げられることから人件費が増加し、利益の減少に繋がります。



  二つ目は、労働時間の減少によりドライバーの収入が減少するという問題です。

  トラックドライバーは走行距離に応じて運行手当が支給されるため、本来であれば走れば走るほど収入が増えるのですが、労働時間の規制により走れる距離が短くなれば収入が減少してしまいます。

  収入が低いとなれば離職に繋がる可能性もあり、労働力不足に拍車がかかる恐れもあります。



  国交省は、割引対象時間を拡げ、長距離割引についても拡充します。

  長距離割引については、現在の200km超について30%割り引いていましたが、変更後は400kmを超えて走る場合、距離に応じて40〜50%割り引く仕組みを新たに加えます。
posted by 川上義幸 at 16:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年02月03日

新幹線西九州ルート

整備方針が未定の九州新幹線西九州ルートの新鳥栖〜武雄温泉間のルートをどのようにするか議論がなされているようですが、このたび南回りルート(佐賀空港経由)について、「現実的な選択肢とはなりえない」とする検証結果が示されたようです。

これは、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が技術的検討を行い、軟弱地盤でのトンネル工事に課題があり、政府、与党関係者が示してきた安全面の懸念を裏付ける結果となりました。


有明海沿岸を経由する南回りルートは筑後川河口などを横断する区間が難所とされ、検証作業では構造形式として(1)橋梁(2)海底に溝を掘って構造体を埋め込む沈埋トンネル(3)専用の掘削機で軟弱地盤を安定して掘り進むシールドトンネルについて技術面や安全性などを評価しています。

橋梁と沈埋トンネルは空港周辺の高さ制限や水深の浅さ、漁業への影響などで困難と判断し、シールドトンネルは技術的に可能ですが、河口付近の軟弱地盤で「不等沈下」と呼ばれる不均等な沈み込みが構造物に発生し、高速走行に支障が生じる恐れがあるとして「選択肢とはなり得ない」と判断しました。  



国交省はこれまで未着工区間を巡るルート別の概算建設費を▽佐賀駅ルート約6200億円▽佐賀北部ルート約5700億〜約6200億円▽空港ルート約1兆1300億円と試算するなどし、整備効果は佐賀駅ルートが「適切」と提示していました。

これに対し佐賀県側は「佐賀駅ルートにこだわらない議論」を注文し、南回りルートを「一考に値する」としていました。


これまでの新幹線議論は建設費用に関する話題が主で、残された整備区間が佐賀県内ということで、佐賀県は受益が少ない割に負担が大きいことから難色を示していることのみが取りざたされていました。



しかし、西九州ルートの根本的な問題は、沿線の人口が少ないことです。

ですから、いかにインバウンドも活用し交流人口を増やすかで、そのためには西九州の魅力を増加させることが不可欠になります。

利用者が少ないとJR九州の採算性が悪くなり、ダイヤを新幹線中心にしますから在来線が利用しづらくなります。

そもそも、並行在来線として廃止に追い込まれることもあります。



現在考えられている3ルートについて予算、負担等の建設に関わる問題だけでなく、将来性も含めて効果の最大化や地元の利便性の向上など、幅広い検討項目を総合的に判断して決定しないといけません。

今回の判断は、南回りルートを否定するための結果を導き出すための検討だったようにも思えます。



15年以上前から世界的に例がなかったということで、佐賀空港(北部九州の国際空港という位置づけで)と新幹線の一体的整備の南回りルートを推奨してきましたが、時間が経過する中でその適した環境をつくれませんでした。

福岡空港は国際ターミナルを改築するようですし、熊本空港も鉄道整備がすすめられ、新北九州空港は貨物便で実績を作っていますし、佐賀空港はオスプレイの話が進んでも北部九州における空港としての存在感が全くなくなってきました。



南回りルートは工事上の課題はもとより、北部九州にとっての魅力をつくることそのものが難しくなっているようです。

西九州ルートの今後の展望が見えなくなってきました。
posted by 川上義幸 at 20:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記