2023年09月30日

金利上昇局面、住宅ローン金利の行方は

大手銀行は9月1日から住宅ローンの固定金利を一斉に引き上げました。

背景には長期金利の上昇がありますが、その長期金利、9月に入ってもじりじりと上昇を続けています。

住宅ローンの固定金利はさらに上がるのか、そして利用者が多い変動金利への影響が気になるところです。



いまなぜ日本の長期金利が上昇傾向にあるのか、コロナ禍からの経済活動の正常化、そして円安も追い風となって日本企業の間では利益を増やす企業が相次いでいて、株価も上昇傾向にあり、日本の景気回復への期待感が高まっていることも1つの要因です。

ただ、長期金利上昇の最大の要因は、日銀が金融政策の運用を見直したことだといわれています。



日銀はことし7月28日に金融政策の運用を柔軟化し、長期金利の一段の上昇を容認しました。それまでは、長期金利が0.5%以下となるよう抑えていましたが、事実上、1%までの上昇であれば認め、円安が進む中、為替の大きな変動を防ぐという目的もあったと見られています。

この結果、長期金利はじりじりと上昇を続けましたが、さらにその動きを後押ししたのが9月20日に行われた米国・FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策を決める会合とその後のパウエル議長の記者会見での発言です。

ここで示された今後の金融政策の見通しを踏まえ、市場では金融引き締めが長期化するとの観測が強まりました。

この結果、アメリカの長期金利は4.4%を超え、およそ15年10か月ぶりの水準まで上昇しました。

これを受けて日本の債券市場では、長期金利がさらに上昇しても日銀がこれを抑える対応をとりにくくなるとの見方から、長期金利がさらに上昇し、9月21日には、0.745%と、10年ぶりの水準となったのです。



長期金利が上昇を続けていることから、銀行がこれを参考に、さらに住宅ローンの固定金利を引き上げる可能性はあります。

ただ、これについて日銀が長期金利の上限の目安を1%としている以上、この先の固定金利の上昇も限定的だという見方が大勢です。



それでは多くの利用者がいる変動型の住宅ローンはどうなるのかですが、住宅ローンの変動金利は、短期金利に連動する形となっています。

これについては日銀がマイナス金利政策を変えていないため、大手銀行各行は金利を据え置いています。



それでは日銀がマイナス金利政策を転換し、変動金利にも影響が及ぶのはいつなのか。

市場には、マイナス金利政策の解除を判断する時期が近づいているのではないかという観測も出ていましたが、日銀の植田総裁は、9月22日の記者会見で「マイナス金利解除への距離感がすごく動いたわけではない」と述べて市場の早期正常化観測をけん制しています。


仮に日銀がマイナス金利政策を見直し、短期金利が上昇する局面になっても、銀行が住宅ローンの変動金利を一気に引き上げるかどうかは不透明です。

あるネット銀行の経営トップは、「金利が正常化されれば、当然、変動金利も連動して上がることになるが、他社との競争環境に加えて、預金金利が上がるかどうかを見た上で変動金利の水準を決めることになる」と述べています。
posted by 川上義幸 at 16:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年09月29日

CO2海外貯留へ

温暖化ガスの一種である二酸化炭素(CO2)を回収して地下に封じ込める技術「CCS」を巡り、マレーシアでの貯留に向けて協議を始めるようです。



CCSは国内の発電所や化学工場などから排出されたCO2を他の気体から分離して回収し、CO2を通さない地層の下の隙間が多い場所まで掘って気体のまま封入するもので、こうした一連の技術をさします。

CCSは既存の火力発電所を稼働させながら温暖化ガスの排出を削減できる技術として世界的に導入機運が高まっています。



今はまだどのように埋めれば何トン分のCO2の削減と見なすかといった国際基準は定まっていません。

日本は東南アジアやオーストラリアなどと共通のルール作りを進めているようです。



普及に向けてはコストの低減や安全性を巡る地元自治体の理解などが課題となります。

日本は国内に貯留候補地が多いとされているが、自治体との調整に時間がかかる可能性があります。


政府は海外貯留の実績を積み重ねることで国内での貯留促進にも追い風になるものと期待しているようです。
posted by 川上義幸 at 17:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年09月28日

年収の壁

企業などに勤め、厚生年金や健康保険に加入している配偶者の扶養に入っている人は、みずから社会保険料を支払わなくても、基礎年金を受給できるほか、保険診療を受けることができます。

ただ、パートなどで働き一定の年収を超えると扶養を外れてみずから保険料を支払う必要があり、手取りが減ることから「年収の壁」と呼ばれています。



従業員が101人以上の企業などで働く人は、年収が106万円を超えると扶養を外れ、厚生年金や健康保険の保険料の支払いによって手取りが減り、おおむね125万円まで、その状態が続きます。

このため、パートタイムの従業員が多く働くスーパーの業界からは、「年収の壁」を意識して従業員が労働時間を減らすことによる人手不足への懸念の声があがっています。



「年収の壁」を超えると、世帯でどれくらい“損”をするのか、条件は住んでいる地域や勤めている会社の規模によって異なりますが、以下の条件で試算結果では次のようになります。

[条件]
●二人世帯(他に扶養者なし)
●夫の年収 500万円(家族手当含まず)
●税金や保険料が引かれる
●妻はパートタイムで働く
●妻の年収が…
 ・100万円超で住民税がかかる
 ・103万円超で月額1万7000円の会社の「家族手当」支給停止
 ・106万円超で社会保険加入

妻の年収が100万円のときは世帯の手取り額が「513万円」ですが、妻の年収が106万円に上がると社会保険料などの支払いが増え、手取り額は「489万円」に減ってしまうのです。

この差額の「24万円」がいわば“働き損”です。

「年収の壁」を超えて手取りを増やすには、妻は年収の4割増しにあたる138万円以上になるまで働かないといけないということです。



さらに人手不足の要因と考えられるのが、最低賃金の引き上げがあります。

最低賃金は、今年度までの10年間で4回にわたって引き上げ幅が過去最大を更新し、10年前の2014年に全国平均で時給780円でしたが224円上昇し、今年度は時給1004円となりました。



「年収の壁」をめぐっては最低賃金の大幅な引き上げが続くなか、パートタイムで働く人たちなどが年収を配偶者の扶養の範囲内に収めようと働く時間を減らす「就業調整」を行うことが、企業の人手不足を加速させていると指摘されています。

このため、スーパーの業界や宿泊業界などパートタイムで働く人を多く雇用する企業からは、「年収の壁」を意識した就業調整が人手不足の要因となっているとして、対策を求める声があがっていました。



岸田総理大臣は「若い世代の所得向上や人手不足への対応の観点から『年収の壁・支援強化パッケージ』を週内に決定し、時給1000円超えの最低賃金が動き出す来月から実施していく」としています。

厚生年金が適用される企業などで、働く人が扶養を外れる「106万円の壁」について、年収がおおむね125万円を超えると手取りが増え始めるため、その水準まで手当を支給したり、賃上げを行ったりした企業に対し、従業員1人当たり最大で50万円を助成するとしています。

今回の助成金は手取りが減らないようにするためのものですが、期限を設ける予定で、いわば当面の対策のようです。

posted by 川上義幸 at 14:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年09月27日

サンマ水揚げ一転好調

秋の味覚の代名詞であるサンマの水揚げが好調のようです。

シーズン前には不漁が予想されていましたが、今月に入って水揚げ量が増え始めました。



豊洲市場への入荷量は昨年の3倍近くになり、サイズもひとまわり大きくなっています。

店頭価格は3割下がっており、買いやすくなっています。



サンマ漁は北海道で8月に始まり、昨年と同様、当初は不振でした。

ところが、9月上旬以降、徐々に水揚げが上向き、気仙沼漁業協同組合によると、漁業者から昨年はほとんど見つからなかったサンマの群れがあったと報告を受けたといいます。



気仙沼市で水揚げされたサンマは10月8日に恒例となっている目黒区の「目黒のさんま祭り」で振る舞われる予定で、3年ぶりの開催だった昨年は不漁で、提供できたのは1000匹のみでしたが、今回は水揚げが上向いたことから1500匹を配るということです。

東京の鮮魚店では水揚げされたサンマが並び、1匹250円と昨年より3割近く安くなったようです。

サンマは1匹が100円ほどで買えた時代(25年前の東京単身の時がそうでした)もあっただけに、まだ割高感を感じる消費者も多いようで、売れ行きはいまいちのようです。



サンマ漁は10月から11月にかけてピークを迎えます。

水産の専門家は「今年は漁場に発生する群れが濃いようだ。漁は始まったばかりなのでこの傾向が続くかは、もう少し見極めが必要」と話します。
posted by 川上義幸 at 10:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年09月26日

クジラ缶詰、なぜか安定

水産食品の値上げラッシュの中で、店頭価格がほぼ変わらない商品があって、それはクジラの缶詰です。

原料高で2〜8割値上がりするサバやサンマの缶詰とは一線を画し、食品インフレの強い耐性を示しています。



変わらぬ価格は鯨肉の特殊性を映しています。

スーパー店頭のクジラ缶詰の平均価格は7月時点で1個400円で2019年の同月比で5%安くなっています。

サンマの缶詰は同じ期間で8割、マグロやサバの缶詰は2割上昇しました。

漁業を取り巻く環境が悪化する中で、なぜクジラの缶詰は安定した価格を維持できるのか、どうも捕鯨を巡る歴史と特殊性に理由がありそうです。



日本の鯨肉は1988年の商業捕鯨停止以降、調査捕鯨の副産物として流通する時期が続きました。

2019年に国際捕鯨委員会を脱退し商業捕鯨を再開しましたが、領海内と排他的経済水域内に限られ、漁獲する頭数を制限し、年間に供給される肉は2000トンでした。

捕る量が絞られた結果、市場に出回る量も減り、やがて消費自体もしぼみました。

かつて鯨肉は手ごろな肉として家庭や給食で口にすることが多かったわけですが、現在は専門店や居酒屋など限られた場で味わう珍しい肉となり、そもそも鯨肉の味を知らない若い世代も増えました。



日本の水産物の漁獲は減り続けています。

サバやサンマは急激な漁獲量減で卸値が高騰し、缶詰の価格にも反映されています。

一方クジラは、かつて乱獲が問題視され、国際的な漁獲規制が続きますが、市場に出回る鯨肉は大きく増えもしませんし減りもしない状況から、缶詰の価格は安定しています。
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2023年09月24日

博多のうどん

  全国的にはうどん51%、そば49%とほぼ拮抗しながらも、西南日本はうどん、東北日本はそばを好むようで、ウェザーニュースが行ったアンケート調査の結果からも西のうどん、東のそば≠ニいう傾向が見られます。

  ウェザーニュースでは、同結果をまとめて、『“うどん文化”と“そば文化”の境目は「気候の境目」だった?』という記事を公開しています。



  同記事によると、そば文化とうどん文化が分かれている理由として、『気候風土』を挙げています。

  救荒作物であるそばは古来、寒冷地や痩せた土地で栽培されていて、東日本での栽培にそばは適していたといいます。

  一方、うどん(小麦)は、温暖な気候で育つ作物で、肥沃な土地が多い西日本では、うどんを栽培する地域が多かったということです。



  日本人にとって、代表的な国民食の一つともいえる『うどん・そば』の発祥地については、博多だといわれています。

  古来、中国大陸から日本へ渡って来た文化の多くは、留学僧らによってもたらされたといわれ、中世の博多が中国大陸との玄関口の役割を担っていた1241年、宋から帰朝した聖一国師(円爾)は、諸寺の設計を記した
『大宋諸山之図』を持ち帰りました。

  そして、同図の末尾に水車と歯車が連動して粉を挽く石臼式水力利用製粉装置の立面図である『水磨の図』があったのです。

  現在、京都の東福寺に所蔵されて、国の重要文化財に指定されている大宋諸山之図ですが、このうち水磨の図にある石臼の一方に「茶」、他方に「麺」と記されていたといいます。

  このことから日本で本格的な粉食文化が始まったとされ、聖一国師が開山した承天寺(福岡市博多区)の境内に『饂飩蕎麦発祥之地』と記した碑が建てられていて、発祥碑の建つ承天寺では、10月7日の『開山忌』に饂飩供養が行われ、うどんが振る舞われます。



 うどん県≠自認する香川県の讃岐うどんは、しっかりした歯ごたえ・つるっとした表面・モチモチした弾力が特徴で、これに対して、発祥地・博多のうどんは、やわらかく・ふわふわした表面・モチモチ感を特徴とします。

  博多のうどんはなぜ、このような特徴を持つ麺になったのかというと、博多が商人の町だったことが大きく、せっかちで食事を早く済ませたい博多商人は、注文して、すぐに出て来て、さっと食べられるものを好んだといいます。


  このため、調理時間を短縮するためにゆで置きにされていた結果、あらかじめ芯までやわらかくなっているというのです。

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2023年09月22日

中国の政治的反応

  福島原発の処理水対応に対する各国の反応は、なぜか中国が執拗に突出して日本への批判を強めています。

  中国はベネズエラとの首脳同士の共同声明において、日本の「核汚染水」に対する反対と明記しました。

  ベネズエラは反米左派で中国寄りの国なので中国に求められて同調した模様です。



  「内患」の中国で、日本たたきの真相を知りたいところです。

  今月の6日のジャカルタでアセアン関連会議がありました。

  中国の李強首相も日本の処理水を「核汚染水」と呼んで批判し、それを理由に日本からの水産物の輸入をストップさせています。



  一方、世界各国の反応はというと、米国をはじめとするG7の主要国、東南アジアの国々、太平洋諸国は日本への支持や理解を示しています。

  IAEAは安全だと分析し、すでにモニタリングを実施しています。

  韓国も国内では不安や批判があるものの、ユン大統領はIAEAの分析を信頼するといっています。

  なのに中国が異様に突出して批判をしており、科学というよりも政治的な事情があるとしか思えません。



  政治的事情には、台湾問題とか外部の火種に加えて、不動産の不況、若者の失業増などの内部不安が高まっており、共産党にとって存立の前提が揺らぎかねない状況にあります。

  中国民は「今日」より「明日」が豊かになることで共産党を支持しており、現下の国内事情からすると対日政策において融和的になるよりも強硬な方向に拍車がかかるということでしょうか。



  これまでも2012年の「日本の尖閣諸島の国有化」したときの反応が同様でした。

  当時は10年に1回の政権交代の時期で、権力闘争が起きていた時でした。



  日本としては今後どのように対応するかが問われていて、処理水へは基本的には科学で対応していくことですが、中国が批判していることに政治的要素が含まれるとすると、埒があきません。

  中国とのパイプを生かして、まずは共産党の中枢で何が起きているのかを把握し、最終的には習近平主席と意思疎通を図り関係修復を図ることに尽きると思われます。



  30年前にJICAの案件で中国を初めて訪れた時のことを思い出しました。

  渡航の目的は、鄱陽湖の環境問題でJICAの開発調査の実施にあたってのS&W締結でしたが、内容に問題がないはずなのになかなか合意ができず暗礁に乗り上げました。

  調査に必要という位置づけで高速船が欲しいという本音を引き出すことで、そして日本側がそのことをかなえることで無事締結の運びとなりました。


  協議中の裏話で中国側が言っていた「今の中国はお金がないからJICAの開発調査をお願いしているが、考える知恵はある(大学の教授)、ないのは金だけで本音は金さえ提供してくれればよい」ということが思い出されます。

posted by 川上義幸 at 16:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年09月20日

彼岸花

  23日は秋分の日でお彼岸の中日にあたり、前後3日間がお彼岸ですから、今日、20日はお彼岸の入りです。

  今年は秋の訪れをあまり感じさせない残暑が続いていますが、お彼岸となるといたるところで彼岸花が一斉に咲き始めました。
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  彼岸花は、お彼岸の頃に鮮やかな赤い花が咲くヒガンバナ科の球根の花で、彼岸花の花言葉は「あきらめ」「独立」のようです。

  白の彼岸花の花言葉は「また会う日を楽しみに」、赤の彼岸花の花言葉は「情熱」、黄の彼岸花の花言葉は「深い思いやりの心」だそうです。

  彼岸花は、夏の終わりから秋にかけて咲く花で、彼岸花の花は、1本の真っ直ぐな緑色の茎の先端に、直径約10cm前後の花を咲かせます。



  田んぼなどのあぜ道に咲いている風景が印象的です。

  面白い事に花が咲く時期に葉っぱはつきません。

  花が枯れた後ににょきにょきと生長するのです。花と葉が同時に着かない事から「葉見ず花見ず」と言われています。



  彼岸花は秋に咲く、別れの花で、少しうら寂しいイメージは、音楽を作る人にとって創作意欲を沸き立てるようで、「彼岸花」というタイトルの曲を持つ歌手は沢山います。

  例えば、森昌子さんが歌う「彼岸花」は阿久悠さん作詞で、彼岸花の別名「曼珠沙華」というタイトルでは、工藤静香さん、藤あや子さん、山口百恵さんらがテーマにし歌っています。



  彼岸花は墓地や畦に植えられていることが多く、実はこの植えられている場所にも理由があります。

  彼岸花の球根にはアルカロイド系の毒が含まれており、誤って摂取すると中毒症状を引き起こす可能性があって、昔の人はモグラやネズミなどから稲や野菜などの作物を守るために、侵入を防ごうとして彼岸花を畦に植えたと言い伝えられています。


  また、墓地に植えられているのは同じくモグラやネズミから埋葬された遺体を守るためと言い伝えられています。
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2023年09月19日

中国公表地図

中後政府が公表した同国の領土や領海を示す新しい地図を巡り、アジア各国・地域が一斉に反発しています。

中国と領有権を巡り対立する東中アジアなどが、自国の領土や領海と主張する地域が中国領と記されたことに抗議をしました。



フィリピンは南沙諸島について「フィリピンの島や海域で中国主権と管轄権を正当化しようとする試みに国際法上全く根拠はない」との声明を出しました。

国連海洋法条約に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所は2016年に、中国の南シナ海における領有権の主張を否定する判決を出していますが、その後も中国は海洋進出や軍事拠点化を通じて領有権を既成事実化する試みが続いています。



マレーシアも一部海域が中国領と明示され、「南シナ海における中国の主張を認めない」と抗議しました。



ベトナムは西沙諸島をめぐり「ベトナムの主権を侵害している」述べ、インドネシアも「地図の線を引く上
では国連海洋法条約を順守しなければならない」と抗議しました。



インドも中国が両国の係争地域などを中国領と地図に帰したことを受け抗議したようです。

8月に行われたBRICSサミットで習近平国家主席とモディ首相が「非公式な会話」を交わした直後だっただけにインド政府関係者はショックだったようです。



かねて中国が南シナ海で主張してきた管轄権は地図上で「九段線」と呼ばれる9本の線で構成されていましたが、10本の線の「十段線」となっていて、台湾の東側に線がひかれていました。

  排他的な領有権の主張や軍事拠点化が過熱すれば国際的な海上物流網として重要な役割を果たす同海の安全性にも影響を及ぼしかねません。
posted by 川上義幸 at 14:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年09月18日

食料インフレ

食料危機への不安が世界を覆っています。

ウクライナ侵攻直後の食料価格の高騰が一服した後も火種がくすぶり、長引く戦争や異常気象、自国優先の輸出政策など複数の要因が重なり価格の振幅が広がりだしてきました。



米シンクタンクの国際食糧政策研究所は食料価格の過度な変動を監視する早期警告システムを公表しています。

世界の主要な食料価格の日次の変動を、大きい順に「赤、オレンジ、緑」の3段階に色分けし、視覚的に食料危機発生の危険度を示すものです。



今年の6月以降、小麦、トウモロコシ、大豆、コメ、野主食・油種5品目すべてで過度な価格変動が起こっていることを示す「赤信号」が点灯しています。

価格変動が大きく、収益の見通しが立ちにくい状況では、農家はいつ何をどのくらい生産するかという決断が難しく、企業なども農業への投資に消極的になり、生産に影響が出やすく、食糧不足を長引かせます。



変動拡大の裏には複合要因が絡んでいて、きっかけの一つは干ばつや豪雨などの異常気象です。

「エルニーニョ現象」により東南アジアやアフリカなどで干ばつによる農作物の不作が深刻化しかねず、コメや砂糖などの品目で価格急騰を招いています。


異常気象は物流にも影響し、海上物流の要衝のパナマ運河では異例の水不足を理由に航行制限が導入され、通過を待つ船の渋滞が起こっています。

このことで産地の米国からパナマ運河を経由して東アジアへ運ばれるトウモロコシや大豆などの輸入コストの上昇につながっているようです。



小麦など幅広い地域で作付けされる穀物では、不作になる地域があっても気象条件が異なる別の地域では通常の収穫が見込め、世界全体でみれば供給量の深刻な不足は起こっていませんでした。

しかし現在は、これを妨げる別のリスクが生じていて、自国の食料インフレを抑えようと輸出を制限する国の広がりです。

輸出制限は問題をかえって大きくしかねないところがあって、輸出の絞り込みで市場への供給が滞れば国際価格の高騰につながり、自国以外の国の調達価格を押し上げます。


食料不安の増大や価格の高騰を抑えるためには、自国優先の輸出制限の広がりを避け、正常な貿易ルートを維持し、国際市場での需給調整を可能にし続けることが不可欠で、危機が再燃すれば最も貧しい国で飢餓人口の増加や社会不安の拡大を招きかねない状況にあります。


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2023年09月16日

賃貸マンション開発活況

  不動産各社が賃貸マンションの開発を進め、野村不動産は今後3年間で1500戸開発します。


  分譲マンションの価格が高騰する中、住宅購入を見送ったカップルやファミリー層は少なくないといいます。

  単身向けだけでなく、ファミリー層向けの賃貸マンションの開発で収益確保を目指しているようです。

  野村不動産の賃貸マンション事業は、不動産ファンドやマンション投資家になどに売却することで収益を上げ、足元手背は60〜70m2以上のファミリー世帯に焦点を当てた物件も数多く手がけています。



  東京建物も開発中の賃貸マンション戸数は約2000戸に上り、野村と同様に不動産ファンドやマンション投資家になどに売却することで収益を上げようとしています。



  国交省によると、賃貸物件は需給ともに増えています。

  賃貸需要の高まりの背景の一つに分譲用マンション価格の高騰があり、東京23区内の新地期分譲マンションの平均価格は、2023年1〜6月に前年同期比に比べ約6割高い1億2962万円と過去最高になっています。


  住宅価格の高騰を受け、購入せずに賃貸住宅を選ぶ傾向となっていて、住宅ローン金利が高くなるのではないかという不安感も賃貸シフトが進む一因となっているようです。


  日本の低金利下で、海外からの賃貸マンション市場への投資も活発です。

  オフィスと比べて安定した賃料が見込める賃貸マンションに豊富な投資マネーが流入し、不動産開発を後押しをしています。
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2023年09月15日

風力発電事業、中国勢が台頭

再生可能エネルギーの切り札である風力発電機で、中国勢のシェアが急激に伸びていて、世界風力会議(GWEC)の調査で2022年に導入された風力発電機のうち6割弱を中国勢が占めたことがわかりました。


太陽光パネルも中国勢が世界首位で、再生エネ産業で中国の一極集中が一段と高まっています。



シェアの首位は14%のデンマークのべスタスですが、2位に入ったのは13%の中国の金風科技他、上位15社中10社が中国企業で、全体の56社を占め世界最大でした。

これまで、欧州勢が2018年に56%あったシェアが2020年には中国勢に逆転され、2022年には42%まで落ち込みました。



中国政府は電力不足や大気汚染への対処だけでなく再生エネを経済成長の基盤にしようと、洋上風力発電産
業の育成に積極的に介入しています。

2021年までに送電線につなげなければ、固定価格買取制度の承認時の売電価格を認めないとの通知出したため、高値で売りたい風力発電事業者が一斉に動きました。

中国勢は規模の拡大でコスト競争力を磨き、欧州や日本でも販路を広げ始めました。

欧州では2010年代から先手を打って、風力発電で主導権を握ってきましたが、足元では金利上昇やインフレなどによるコスト高を敬遠し、開発が鈍化しているようです。



中国勢への依存を深めると、米中対立の激化で供給が滞るリスクがあり、米国は中国製の太陽光パネルについて関税をかけて輸入を制限しています。

米国は洋上風力で現在数万kwに留まる発電容量を、2050年には1億1000万kwまで引き上げる野心的な目標を掲げています。

安全保障の観点から風力発電機でも警戒し、同様の規制をかける恐れがあります。



日本は国内市場が育っていません。

大規模開発が可能な洋上風力は、経済への波及効果が大きく、各国が補助金で巨額の支援をする中、日本も官民一体で供給網を再構築していくことが必要のようです。

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2023年09月13日

交通渋滞、先進国で再浮上

先進国で交通渋滞問題が再浮上しています。

インフラ老朽化が渋滞を悪化させる要因となっていて、急ピッチでインフラ開発を進めて中心部の渋滞緩和を目指している新興国との明暗が分かれています。

インフラ修繕や改修への予算が不足する中、米国などでは中心部に車で乗り入れる際に課金する「渋滞税」導入の議論も盛んになってきました。



短期的な要因としては、新型コロナウィルスの感染拡大が落ち着いたことがあります。

経済再開が進んだ先進国で都市にヒトの流れが先行して戻ったからです。

しかし、より本質的な理由はインフラの老朽化にあるようです。



ニューヨーク中心部マンハッタンとニュージャージー州をつなぐジョージ・ワシントン橋は、朝夕のラッシュ時にはニュージャージー州からの通勤者で大渋滞が発生します。

1931年に開通した歴史の古い橋で、建設当時は橋の上を大量の自動車が走ることは想定外だったからです。

インフラの老朽化は全米で進んでおり、2022年時点で全米の橋の1/3以上で補修が必要のようです。



東京では開通から60年以上が過ぎた首都高速道路の老朽化対策急務となっています。

パリも2024年に五輪・パラリンピックを控え、鉄道インフラなどへの投資を急いでいます。



先進国では主要インフラへの投資は一巡し、補修や維持に重点が置かれ、米国では2022年に道路インフラの修繕に約7兆4000億円を投じました。

それでもインフラ修繕費用が足りないとの声が強く、インフラ修繕の遅れや修繕コストの上昇は経済成長の重荷になっているとの指摘もあります。

市民の不満も根強く、自国のインフラに満足していると答えた人の割合は米国で27%、英国も35%となっています。



交通渋滞といえば、これまでジャカルタやニューデリーなどの新興国の主要都市で発生しているというイメ
ージが強かったと思います。

急速な経済成長に伴って自動車や二輪車の利用が増加し、脆弱な交通インフラが吸収しきれない量の車が道に溢れました。

30年前JICAの案件でジャカルタに行きましたが、渋滞がひどく週に2回ほど1人乗りで運転していると罰金が科せられました。

ですから、そうならないように助手席に乗ってあげるアルバイトが流行していたのを思い出します。

公共交通が脆弱なこともあり、都市の機能不全が顕在化しました。



しかし、新興国の改善ペースは速く、主要都市の中心部にインフラ開発予算を集中的に投入し、都市鉄道の開業が相次いでいます。

ハノイでは市民の足である二輪車の中心部乗り入れを禁止する案を検討し、エジプトやインドネシアは首都移転という荒業も採用しました。



新興国が中心部の渋滞を一定程度緩和させたことで、先進国の渋滞対策の遅れがクローズアップされるようになりました。

先進国では急速なインフラ改善の見込みが薄い中、渋滞対策として期待されているのが渋滞税です。

ニューヨークでは早ければ2024年から導入し、ピーク時の乗り入れで課金をするようです。

そのほかにも時間帯によって料金を変えて交通量を調整する「ロードプライシング」も有効な手段として考えられ、東京でも2021年の五輪・パラリンピック開催時に首都高の渋滞緩和として、日中の基本料金の上乗せを行いました。
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2023年09月11日

久留米、バイオ産業の街に

古くから酒造りが盛んだった久留米市がバイオ産業の街に生まれ変わりつつあります。

醸造技術の蓄積に加え医学系の大学や研究機関が多く立地する特性に着目し、医薬品や機能性食品などヘルスケア関連のスタートアップが集積し、5月には米創薬企業のワクチン工場誘致も決まりました。

世界企業の創出へ向け官民の投資が加速しているようです。



米VLPセラビューティックスのCEOは、「ランニングコストの安さなども含め、全国10カ所ほど見た中で最終的に久留米を選んだ」といいます。

この工場では、新型コロナウィルスワクチンにも使用されたメッセンジャーRNA技術を応用した次世代型ワク チンなどを開発・製造する予定です。

久留米リサーチパーク(KRP)が運営する施設内で2024年から稼働します。



久留米市は現在でも国内有数の酒造数を擁し、灘、伏見とともに「日本三大酒どころ」と呼ばれる醸造の街です。

久留米大学医学部を中心にバイオ関連の研究機関も多く、県は2001年から米シリコンバレーになぞらえて「福岡バイオバレープロジェクト」を立ち上げてバイオ産業の集積を図ってきました。

県にとってバイオは成長産業の一つで、KRPには蚕を活用したワクチン開発のKAICOや、臓器の3次元解析を手掛けるCUBICStarsなどが入居します。

バイオ関連企業の進出も相次ぎ、2001年度時点の32社から2022年度には246社と7倍超に増えています。



県はバイオ関連予算に5年前の10倍超となる2億2098万円を計上し、県内企業の育成・グローバル化に向けて現地の企業やベンチャーキャピタルとの連携を目指します。


資金力の乏しいスタートアップを金銭面的に支える体制も整えます。
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2023年09月10日

太平洋の島々に熱い視線

かつて太平洋戦争で、日米が激戦を繰り広げた太平洋の島々ですが、いま、この島々をめぐって、アメリカと中国の勢力争いが激しさを増しています。



太平洋島しょ国は、赤道を挟んで位置する島々で構成される14の国と地域です。

地域最大の国はパプアニューギニアで、人口はおよそ1000万人で、そのほかの国は人口が100万人に達しない比較的小規模な国です。

これまでは、アメリカ、オーストラリア、日本などとの関係が深く、中国の足がかりは小さいとみられていました。



去年4月、ソロモン諸島が中国と安全保障協定を結び一変します。

両国政府は協定の内容を明らかにしていませんが、どうもソロモン諸島が中国に軍や警察の派遣を求めたり、中国の船舶がソロモン諸島を訪問して、補給を行ったりすることができる内容が盛り込まれているようです。



8月24日、東京電力は、福島第一原子力発電所にたまる、トリチウムなどの放射性物質を含む処理水を薄めた上で、海への放出を始めました。

日本政府は事前に、すべての国に直接、出向いて説明を行い、これまでのところ、13の島しょ国からは明確な反対の声は出ていません。

しかしその一方で、ソロモン諸島のソガバレ首相は、「放出は、人々や海洋、経済、暮らしに影響を与えるもので、強く抗議する」という声明を出し、中国と足並みをそろえる形となりました。


中国は、国交のあるそのほかの国々にも、ソロモン諸島と同様の安全保障協定の締結を働きかけています。
こうした状況にアメリカは危機感を強めていて、巻き返しに出ています。



バイデン大統領は、去年9月、この地域の14の国と地域の首脳などを招いた初めての会議を開き、中国に対抗していくため、8億1000万ドル、日本円にして、1100億円あまりの支援を表明しました。

また、ことし5月、ブリンケン国務長官は、ソロモン諸島の隣国、パプアニューギニアを訪れて、防衛協力協定に署名しました。

協定は、現地政府が認める施設や区域を、アメリカ軍が使用できるというもので、海軍基地や空港、港湾施設などが候補にあがっています。



一連の動きの引き金となったのは、中国がソロモン諸島をはじめ、地域への関与を強めたことですが、これについて、日米の当局者は、中国軍が、この地域の軍事戦略上の利点を2つの面から着目したからだとみています。

1つは、グアム、ハワイへのけん制です。

台湾海峡で不測の事態が起きた場合、アメリカ軍は、インド太平洋軍が司令部を置くハワイ、そしてグアムなどを拠点に対応するものとみられていますが、中国軍が、グアムに対し、中国本土とは逆の方向から活動できるとすれば、大きなけん制になります。


中国軍が着目するもう1つの戦略的な利点は、オーストラリアやニュージーランドへのけん制です。

特に、オーストラリアは、中国を念頭に抑止力の強化に取り組んでいて、原子力潜水艦の導入も計画しています。



およそ80年前、旧日本軍は、ソロモン諸島のガダルカナル島に進出し、アメリカ軍との間で熾烈な戦いを繰り広げました。

オーストラリアがアメリカの反攻作戦の拠点になるとみたことが背景にあり、周辺はオーストラリアをにらんだ戦略上の要衝です。



こうした中、ことし1月、アメリカのシンクタンクが発表した1本のレポート「太平洋戦争から中国が得た教訓」が注目を集めました。

戦略予算評価センターの上席研究員で、中国海軍の研究で知られるトシ・ヨシハラ氏が、中国の国防大学や軍事科学院などで発表された論文を分析したというレポートです。

そして、ガダルカナル島での戦いを分析した中国の論文は、特に補給面に注目しており、前線基地の確立と、物資を運搬できる船舶などの必要性に言及しているということです。

軍と関係の深い機関で行われたこれらの研究が、中国がこの地域の戦略上の重要性に着目するきっかけになったのかもしれません。



両国とも、この地域への関与を強める姿勢を示していることから、争いは激しさを増していきそうです。
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2023年09月07日

ラーケーション

最近は、不登校問題も顕在化しているようですが、愛知県では新学期から、平日、学校に行かなくても欠席にならない日が設けられます。

その名も「ラーケーションの日」と言って、土日、保護者が仕事で休めないという家庭で、平日に子どもと一緒に過ごせるようにと設けられました。



「ラーケーション」とは、「学習」を意味するLearningと「休暇」を意味するVacationを組み合わせた造語で、子どもが休暇中の保護者とともに、学校以外の場でさまざまな学習活動を楽しんでもらうという意味が込められています。

「ラーケーションの日」は、県内の公立の小中学校や高校、特別支援学校に通う児童や生徒が、保護者の休みにあわせて、年間3日まで取得できます。

1日ずつ取ることも3日連続で取ることも可能です。

取得するには、家族でいつ、どこで、どのような活動をするのか話し合って計画を立て、事前に保護者が学校に届け出ることで取得できます。



愛知県は「旅行に行って何か体験してもいいし、家で活動してもいい。主旨を理解したうえで、その日を家族で自由に計画して使ってもらえればいいんです」と説明しています。

「ラーケーションの日」は、インフルエンザや身内の不幸などで学校を休んだときと同様、欠席にはなりません。

県は、受けられなかった授業の内容は、家庭での自習で補ってもらうとしています。



愛知県が「ラーケーションの日」を導入する背景には、親子で休みが合わないという実態があります。

愛知県は、ラーケーションを導入することで、子どもたちが保護者の休暇に合わせて、一緒に過ごせる機会を増やすとともに、保護者が有給休暇を取得するきっかけにしたいとしています。



実は、愛知県では、「ラーケーションの日」だけでなく、「休み方改革」として、さまざまな事業を進めています。

「休み方改革」とは、プライベートの時間を充実させることで仕事の効率を上げ、経済の活性化につなげようというもので、2023年度から本格的にスタートしました。

そのひとつが、有給休暇の取得促進で、県は、有給休暇の取得に積極的に取り組む中小企業を認定し、公共工事の入札参加資格の審査で加点したり、融資制度の利用時に優遇措置などを講じたりすることにしています。

  さらに、取得した休みを快適に過ごしてもらおうと、週末や長期の連休に集中していた旅行需要を平準化することも目指しています。



  大村知事は、全国知事会の中でも「休み方改革プロジェクトチーム」の発起人として、労働組合や経済界、関係省庁に取り組みへの協力を要請するなど、全国に取り組みを展開しようとしています。

  全国で初めてとなる「ラーケーションの日」について、人材活用や企業のワーク・ライフ・バランスの推進に詳しい専門家は、社会全体への波及効果も期待できると評価しています。



  一方、初めての取り組みだからこその懸念や課題もあります。

  ラーケーションを導入するかどうかは、県立学校以外は市町村単位で決定することになりますが、名古屋市は現時点での導入を見合わせています。

  名古屋市教育委員会は、休み方改革の趣旨は理解しているとする一方、ラーケーションの日を取得できる家庭とできない家庭という差ができると不公平感が高まること、そして、登校しなかった日の授業を家庭だけで補いきれないのではないかという2つの懸念があるとしています。
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水害をAIやセンサーで防ぐ

  地球温暖化の影響で、記録的な豪雨が各地で発生しています。

  日本は急峻な国土で河川や水路が増水しやすく、洪水被害が増加傾向にある中、AIやあらゆるモノがネットにつながる「IOT」の技術を防災に生かす取り組みが厚みを増しています。



  ウェザーニュースは天気予報のほか、個人や法人向けに気象サービスを提供しますが、国内約1万3000カ所にある雨量計を活用し、1km四方ごとに精緻な気象予報を手掛けます。

  さらに気象アプリ「ウェザーニュース」の利用者から収集した口コミや画像をAIで解析し、気象予報士が予測に生かしています。


  昨年の9月からは法人向けサブスクリプション(定額課金)サービスを始め、例えば台風の接近で雨量や風速などが基準値を超えると、自動でプッシュ通知を発信し、店舗の臨時休業や従業員の避難などの初動対応に生かしてもらいます。


  足元では自治体向けに災害リスクを可視化・検証するサービスを開発中で、住民から対話アプリを通じて倒木や河川の増水などの情報を収集し、AIが内容を解析して地図に落とし込みます。

  こうしたデータを過去の雨量データなどと組み合わせ、災害の発生地域を予測する活用法などを検討しています。



  IOT導入支援を手掛けるエコモットは、河川氾濫などの自然災害の兆候を可視化する「災害検知サービス」を提供します。

  太陽光発電で稼働するカメラやセンサーから得た現地の画像や河川の水位などの情報を顧客に送信しますが、累計で全国400カ所以上で導入されています。

  電源配線や通信回線を必要とせず、現地に機器を設置するだけで稼働する構築しているのが強みだといいます。



  KDDIと法人向けIOT分野などで資本・業務提携し、2023年3月にはKDDIが米スペースXと展開する衛星通信サービス「スターリンク」を活用し、山間部や島しょう部におけるネットワーク接続の環境を整えました。



  水害発生時の排水需要も大きく、消防用ホースで国内シェア約4割を持つ最大手の帝国繊維は高性能ポンプと防災車両を組み合わせた大量送排水システムを構築し、受注が好調のようです。

  洪水や水没地点からの排水のほか、森林火災などにも対応可能で、自治体やインフラ施設で導入が広がっています。



  上下水道の整備に関するコンサルティングを手掛けるNJSは、台風や豪雨による浸水予測など水害対策のサービスも提供していて、独自に開発した点検用ドローンやカメラを用いた装置で排水設備の状況を調査し、高い精度での浸水予測を可能にしています。

  内水氾濫の対策として浸水の想定区域を予測するシステムに力を入れいるようで、降った雨がどの場所にどう流れて排出されるのかを地形や排水施設の状況などから把握し、データを解析します。


  九州など降水量の多い自治体を中心に引き合いが増えているようです。
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2023年09月04日

高効率の地熱発電

  中部電力が出資するカナダのスタートアップ、エバー・テクノロジーがドイツで、新たな仕組みの地熱発電に乗り出します。

  地下にたまった蒸気や熱水を使う一般的な手法ではなく、発電用の水を地上から注入する技術を世界で初めて商用化します。



  一般的な地熱発電は地面を垂直方向に掘削し、地下にたまる蒸気や熱水を取り出して活用し、タービンを回転させて電気をつくったり、熱エネルギーとして暖房に利用したりします。

  事業化調査から操業まで15年程度かかり、事業の成功率は3割以下にとどまり、地下にたまった蒸気の正確な分量や温度が事前にわからないためです。



  対して、エバーもまずは垂直方向に5〜7km掘削し、そのうえで地下で水平方向に直径20cmの穴を開け、水の通り道となる「ループ」(長さ約3km)をつくる点が特徴です。

  ループは24本を張り巡らし、そこに地上から注入した水を循環させ、地熱で温めて蒸気や熱水にしたうえで地上に引き上げ、これにより、地下の状況が事前にわからなくても安定的に発電ができるというわけです。



  気候に左右されず安定的な地熱発電への期待は大きく、独政府は地熱発電所を2030年までに現状の2.5倍となる100カ所に拡大する計画を掲げています。

  ドイツの地熱発電の高まりは日本を変える可能性があるとみて、エバー株の10%弱を保有する中部電力は日本での事業展開を狙っています。



  火山国の日本は2347万kwの地熱資源量があるとされ、米国とインドネシアに続く世界3位の「地熱大国」です。

  地熱発電容量は62万kwで、2.6%しか活用できていません。



  開発の進まない理由の一つは、地熱資源の8割が山間部の国立・国定公園内に位置している点にあるようで、周囲の温泉や生態系への影響を懸念する地元の反発は根強いようです。

  エバーは世界25ヵ国で原発10基分以上にあたる発電容量の地熱発電計画を進めていて、当面はドイツなどの非・火山国が中心で、日本のような火山国でループが耐久性や機能性を維持できるかは不透明のようです。
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2023年09月03日

世界の海、異常高温

世界の海が地球温暖化の影響で以上に温まっていて、世界の海面の約5割が8月に異常な高温状態になりました。

東日本の太平洋沖などが特に高温となっています。

世界の海面の平均水温は過去最高を更新しており、気象や生態系、漁業への悪影響が懸念されています。



特定の海域の水温が平年を大きく上回る現象は「海洋熱波」と呼ばれます。

米海洋大気局(NOAA)は人工衛星の観測データなどを分析し、「8月現在、世界の海域の約48%が海洋熱波の状態にある」と報告しています。

大気に蓄えられた熱の9割を海が吸収し、この夏の世界的に記録的な熱波が発生しており、海水温の上昇が今後も続く見通しです。


NOAAは日本では東北地方の太平洋沖で海水温が平年よりも約2〜6度高いと分析しています。

太平洋赤道域東部では海水温が高くなるエルニーニョが発生しており、南米西海岸沖では約2〜4度高く、北大西洋や地中海でも広範囲にわたり約2〜5度高い状態です。



国連のグテレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球が沸騰する時代が来た」と指摘します。

海洋熱波が強まる要因として地球温暖化の影響が指摘されますが、海洋熱波は魚や鳥の大量死を招くほか、赤潮などが起こりやすくなり、NOAAは海洋熱波により世界で毎年数十億ドルの経済的損失が生じていると指摘します。



2019年以降、東北沖では海洋熱波が毎年のように発生し、冷たい水を好むサケやサンマが沿岸に近よらず漁獲が大きく減りました。

また、水温上昇による産卵海域の環境悪化でスルメイカの漁獲量も落ち込みました。


生態系への影響も大きく、米国ではフロリダ州のキーズ沖のサンゴ礁が大規模に白化しました。

サンゴは水温上昇に弱く内部の走塁が失われて栄養が得られなくなり白化します。


2014〜16年に米西方沖で起きた海洋熱波ではエサとなる魚が減り、海鳥が多数餓死しました。


また、水温が高い海域ではハリケーンなどの熱帯低気圧が発達しやすくなります。



今更ですが、温暖化ガスの排出削減のための取組みが急務となってきています。
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2023年09月02日

消費支出の二極化

  消費支出の二極化が鮮明のようです。

  百貨店や服飾小物の支出は高所得層が全体をけん引し、ブランド品は価格上昇のピッチが急なため、これから値上がりが進むと予想する消費者が「今が買い時」とみて旺盛な需要につながっているようです。



  日本経済新聞と三井住友カードがキャッシュレスデータ分析サービスを活用して、個人消費の動向を調べたものがあります。

  それによると、様々な支出動向を見ることができます。

  年収500万円未満を低所得、500万〜1500万円未満を中所得、1500万円以上を高所得とし分析しています。


  大きな差がみられたのが百貨店での支出で、2023年は低所得層がコロナ前比18%減、中所得層が8%減のな
か、高所得層は11%増でした。

  首都圏などで百貨店各社の業績が回復しており、高所得層が全体をけん引している可能性が高いようです。


  専門店などで買う服飾小物は低所得層がコロナ前比で6%減でしたが、中所得層は5%増、高所得層が35%増と支出はコロナ前を上回っています。

  貴金属・時計・宝飾品は低所得層が27%増、中所得層が25%増、高所得層が48%増でした。

  担当者は「今が一番安く、買い時だというお客様が多い」といいます。

  資源価格や物流コストの上昇で高級ブランド品は価格が頻繁に改定されており、「待っていれば安くなる」というデフレ下で定着した消費行動が高級品の一部では通用しなくなりつつあり、それが高額所得層の消費意欲を刺激しているようです。



  様々な支出を衣・食・住の3領域で見た指標では「衣」の消費が特徴的です。

  2023年の1〜5月に低所得層はコロナ前比で14%減と大きく落ち込み、中所得層も10%減でしたが、高所得層は7%増えました。

  中所得層はインフレで支出内容を見直し、衣料品への支出意欲が落ち込んでいるようで、高所得層は保有する金融資産の価値上昇などもあり、衣の分野に積極的にお金を使っていようです。


  「食」はいずれの所得層でもコロナ前に比べて支出拡大がみられ、特に低所得層で伸びが大きかったよです。


  「住」の分野は中低所得層はコロナ前を超えましたが、高所得層は下回りました。

  2021年にテレワーク対応などで家具や家電を買った反動が出たようです。
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2023年09月01日

パン用小麦「はる風ふわり」

ウクライナ戦争による世界的な食糧価格の高騰や円安もあって国産小麦への関心が高まっています。


そのような中、製パン用として佐賀県産の新品種「はる風ふわり」が注目を集めています。

従来の品種より成長が早く、梅雨入り前に収穫ができる可能性が高いのが特徴のようです。

県や農協、地元の製粉会社や製パン工場が一体となって「オール佐賀」のブランド小麦育成に取り組んでいます。



2022年産小麦の国内生産量の佐賀県産が占める割合は6%で、福岡県(8%)に次ぐ3位です。

福岡県とともに温暖な気候を生かしてコメと麦の二毛作ができるのが強みです。

この二毛作で栽培される麦は伝統的に大麦が多く、パン用の小麦はパンのふくらみや焼き色をよくするため、原麦のたんぱく質含有率で12.5%以上が必要になるようで、これまでは水田を転用する土壌で生産しやすいことなどから製麺用の品種が主体でした。



近年はパン用品種の「ミナミノカオリ」も栽培されるようになってきましたが、収穫期前の成熟期に雨が続くと穂上の種子が発芽しやすくなる性質に課題がありました。

そうした状況をパン用小麦「はる風ふわり」によって一変することができました。

雨続きでも穂発芽が発生しにくいことに加え、原麦タンパク質含有率も14%を記録し、高品質とされるカナダ産のパン用小麦と比較してもそん色がないことが判明しました。



この小麦粉を使い、「はる風ふわりブレッド」としていち早く商品化したのがリョーユーパンです。

県内で栽培された小麦を県内で製粉し、県内の工場で焼き上げ、究極の地産地消を目指し、パンの生地には唐津産の塩を使っているようです。

佐賀県内の学校では、はる風ふわりを使った食パンの給食も始まり、「子どもたちのソウルフードになれば」と期待します。
posted by 川上義幸 at 13:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記