2023年11月30日

中国の融資の実態

  中国は一帯一路構想のもと、投融資をパッケージにして途上国でのインフラ開発を進めてきました。

  中には多額の債務を返済できず、港湾施設などの権益譲渡を迫られる「債務のわな」に陥ったと言われる国も出てきました。



  しかし、中国の融資の実態は「債務のわな」より、はるかに巧妙だと指摘する衝撃のリポートが公表されています。

  公表したのは、アメリカ南部バージニア州にある名門公立大学、ウィリアム・アンド・メアリー校に拠点を置く研究所、「エイドデータ」です。

  エコノミストや政治学者、地理学者にプログラマーなどさまざまな専門家が集まり、詳細なデータを収集して政策や投資の影響を分析しています。

  チームを率いるブラッド・パークス所長はグローバル経済における中国融資の存在感が桁外れに大きいと指摘します。

  調査対象は、中国が22年間にわたって165の低中所得国に融資などを行ってきた2万を超えるプロジェクトで、途上国が中国と結んだ融資の契約書や途上国の政府高官など数千人への聞き取りをもとに、およそ400ページにわたってその実態を克明に記しているといいます。



  まず、明らかになったのは、中国による融資の規模とスピードです。

  世界銀行や西側諸国は、これまで多くの途上国が債務危機に陥り、救済策として借金の棒引きを行った経験を踏まえ、途上国融資に慎重になっていたといいます。

  一方の中国は、その穴を埋めるように、外貨準備として抱える巨額のドル資金をもとに、大規模な融資を素早く行ってきました。

  このため、中国が資金を提供したインフラ事業は、平均わずか2.7年で完了したというのです。

  世界銀行などが融資した同様のプロジェクトは完了までに通常、5年から10年掛かっていて、その優位性は一目瞭然です。

  短期間でインフラを整備でき、経済成長や国民からの支持拡大につながるインフラ事業の実現は、途上国の政権にとっては魅力的です。



  中国はこうして世界最大の債権国にのぼり詰め、途上国への融資の残高は、元本だけで少なくとも1兆1000億ドル、日本円でおよそ165兆円に達しています。

  しかし、待っていたのは、途上国の返済が滞るという現実で、全体の融資のうち、55%が2023年には返済期限を迎え、その割合は2030年には75%にのぼるとも推計されます。



  こうした中、今回のエイドデータ研究所が明らかにしたのは、巨額の融資を行いながら返済が滞った“失敗”を教訓に、中国が危機管理能力を高め、融資のあり方を根本から変貌させた姿です。

  その手段の1つとして、2国間の融資で、中国が途上国と秘密裏に結ぶ独自の契約が判明し、融資の返済が滞った場合、中国だけが途上国の専用口座から担保の現金を強制的に引き出せる契約になっていたというのです。

  すべての債権者の中で中国が優先して返済を受けるためです。

  また、返済が遅れた国への罰則を強化していて、2017年までの4年間は上限が3%だったのに対して、2021年までの4年間は8.7%と、3倍近くに引きあげていたということです。



  中国の途上国の融資をめぐっては、多額の債務を返済できない場合、港湾施設など重要なインフラの権益の譲渡を迫る「債務のわな」がよく指摘されますが、こうしたインフラ施設は、実はすぐに現金化するのが難しい流動性が低い資産です。

  今回、明らかになった専用口座の存在と、バックアップで現金を補填される仕組みは、中国が融資の回収を確実にできるという点において、債務のわなより、はるかに巧妙だと研究所は指摘しています。

posted by 川上義幸 at 16:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年11月29日

トリュフ

トリュフは「世界三大珍味」として知られ、芳醇な香りとジャズイモのような塊状の外見が特徴です。


日本は欧州ほか、中国やオーストラリアなどからの輸入に頼っています。

価格は上昇が続いており、欧州の主産地(イタリア、フランス、スペイン)から輸入したトリュフの平均単価は2022年実績で約125000円/kgで、過去10年かで4割上昇しました。

トリュフは色合いから白と黒に大別され、9〜12月に旬を迎えるイタリア産の生の白トリュフが、香り高い最高級品とされています。



国内での引き合いの強さもあり、今シーズンの飲食店向けの卸売価格は100万円/kg程度で、極端に不作だった2022年では130万円/kgにもなったようです。

黒トリュフは年末から翌年の春先にかけて収穫される品種が、芳香などを高く評価され、今シーズンは20万円/kg程度を下回らない高値が見込まれています。

いずれも手が届かない高額のもので、円安の影響だけでなくも世界的な経済成長で中国や新興国を中心に新しい需要が生まれていることも高額の一因となっているようです。

トリュフは生育に適度な湿度が必要で、小雨等で収穫が減少傾向であることも値上がりの要因になっているようです。



価格が高くても国内の需要は堅調のようです。

今年の冬もクリスマスに向け、昨年並みかそれ以上の引き合いが見込まれていて、生のトリュフは品質を維持できるのが収穫後2週間ほどですから、日本の輸入商社も空輸体制を整えています。



高値の花であっても、消費者の親近感が強まっているといいます。

SNSが最近の人気に火をつけたようで、外食先や自宅でトリュフを楽しむ動画などがSNSに投稿され、フォロワーの関心を引いたということです。



自給につなげる動きも始まっており、森林研究・整備機構森林総合研究所は2022年秋にトリュフを人工的に
発生させることに成功しました。

研究責任者は、10年後をめどに商用化し、アジア全体に日本産のトリュフを広めたいとしています。
posted by 川上義幸 at 16:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年11月27日

熊本に大空港構想

  半導体受託生産の世界最大手のTSMCの工場完成が近い熊本で、熊本空港の機能強化と周辺の半導体産業集積を両輪とした街づくり構想が動き出したようです。

  TSMC熊本工場やサプライヤー企業が集積する空港北側一帯を、TSMCの台湾本社を中心に一つの街を形成している「新竹サイエンスパーク」のような都市に育てようとしています。



  日本航空は12月から、熊本空港で国際貨物の取り扱いを本格的に始め、まず台湾の中華航空からの委託を受け、同社が同月から週4便に倍増する熊本〜台北の直行便で運ぶ貨物に対応します。

  ANAカーゴも10月から同様に熊本空港での国際貨物業務を始めており、JALが続いた形です。

  ANAは熊本〜羽田便を使って、羽田空港や成田空港経由で国内各地を結びます。

  台北へは午後6時までに荷物を搬入すれば、翌日の昼には届けられるといいます。

  待望の「空の物流ルート」が開かれることで輸出入の利便性は飛躍的に高まります。



  TSMC熊本工場の存在を核とした「半導体城下町」の形成に向けた大きな一歩となります。

  県は10月に、新たな「大空港」構想を打ち出しました。

  構想策定にあたっては、三井物産の飯島顧問を座長とし、ラピダスの東会長やサントリーホールディングスの新浪社長など7人で構成する有識者会議を設置しました。

  8月に向こう10年間の取組みの方向性として「新生シリコンアイランド九州」の実現や「半導体城下町の創造」を目指すとする5分野23項目の提言を受けています。



  熊本ではすでに空港北側にTSMC工場に加えて、このエリアではさらに半導体産業の集積を図るとともに、次世代半導体の技術研究などに取り組むとしています。

  空港をはさんで南側では、東海大学の農学部新キャンパス「阿蘇くまもと臨空校舎」を中心に、大豆由来の「植物肉」原料を開発・製造するスタートアップのDAIZが新工場を建設予定で、ライフサイエンスをテーマに農業や医療の集積地を目指します。



  熊本では、半導体とライフサイエンス産業が熊本空港を中心に広がり、空港で海外に輸出する、そんな壮大な事業展開が進んでいます。
posted by 川上義幸 at 09:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年11月25日

長崎・松浦のアジフライ

  「アジフライの聖地」をアピールする長崎県松浦市の取組みが、地元飲食店を潤しているようです。



  「刺身でも食べられる鮮度」という掟を定め、一味違う柔らかい食感が市外から観光客を呼び寄せます。

  この「聖地」戦略で地元店の売り上げが増えているほか、看板メニューに据えた飲食店を新たに福岡市などに出店する水産会社もあらわれており、市は手ごたえを感じているようです。



  料理店「和」では、看板メニューの「活あじフライ御膳」を注文すると、料理人が店内にある水槽から泳いでいるアジをすくってさばき、パン粉をつけてあげていきます。

  食べてみると、衣がサクサクとしていて身はふっくらとして柔らかく、青魚特有の臭みも感じられず、普段食べるアジフライとの違いを実感するそうです。

  生け作りで食べられる鮮度のアジでさえ揚げるのが、松浦の掟だそうです。



  市が2019年に「アジフライの聖地」を宣言した際に定めた「松浦アジフライ憲章」に沿った調理法で、憲章では近海アジを「ノンフローズン」か「ワンフローズン」で加工し、揚げたてで提供することをうたっていま
す。

  ノンフローズンとは、水揚げ後に1度も凍らせずにさばき、パン粉をつけて揚げる方法で、ワンフローズンはパン粉をつけてから1度冷凍し、調理するときまで解凍しないやり方です。



  また、500グラムの特大アジを提供する店、店主が釣ったアジにこだわる店やバーガーを開発したカフェなど各店舗が個性を競っています。

  こうした盛り上がりをもたらしている「宣言」に市が踏み切ったのは、進む過疎化への危機感がきっかけです。



  だれでも知っている安価なアジフライですが、「刺身でも食べられる鮮度で、あえてフライにする」ことで一味違うアジフライをアピールする作戦です。

  こうした取り組みで観光客が増え、飲食店の売り上げも伸びているといいます  。
posted by 川上義幸 at 17:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年11月24日

北部九州の産業用地の動向

  佐賀県東部で産業用地の需給がひっ迫しています。


  そもそも、鳥栖エリアは九州の各方面からのアクセスが良く、企業からの引き合いが多いところです。

  佐賀県では初となる官民連携の手法でスピード感をもって用地の整備と企業誘致を進めているようです。



  九州自動車道鳥栖ジャンクションと久留米IC間で建設が進められているスマートIC付近が注目されていて、この付近の農地34haを開発します。

  通常は、産業団地の開発では、県や市が用地取得に向けた地元との調整や方針説明の役割を担い、議会で開発の是非を問い、用地取得に向けた承認を得て必要な予算措置を行ったうえで初めて、用地取得手続きが始まります。

  その後で工事事業者を選定することになるため、実際に造成着工となるまでに長期間かかることが多くなります。



  商機を捉えたスピーディな用地の整備・供給が求められるため、今回のプロジェクトでは官民連携型による開発手法を取っています。

  用地取得や造成工事は民間の事業者が担うため議会での予算手当の審議プロセスは不要で、市の財政負担も軽減されます。



  鳥栖市内では、2029年にアサヒビールの新工場が操業を始めるほか、吉野ヶ里町でも半導体素材大手のSUNCOが工業用地を取得し、同年の供給開始を目指しています。

  いずれも今回の大型産業団地開発予定地からは至近で、用地規模はそれぞれ22haを超えています。

  また、同エリアには、半導体・電子部品関連企業の集積や自動車関連企業の進出も進んでいます。

  鳥栖から九州自動車で約100km軟化した熊本県菊陽町では、半導体受託生産の世界最大手、TSMCの新工場の完成が近づいています。



  半導体関連企業にとって福岡空港や佐賀空港からも近い鳥栖エリアは、地価が高騰する福岡や菊陽町周辺に比べて比較的安価であることも魅力的に映るようです。
posted by 川上義幸 at 15:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年11月23日

「空飛ぶクルマ」

  「空飛ぶクルマ」と呼ばれる電動垂直離着陸機(eVTOLイーブイトール)の実用化が近づいてきました。

  滑走路が不要で騒音が少なく、大都市の渋滞対策の切り札になると見込まれています。

  国内外で約30のスタートアップが立ち上がり、軽量化や航続距離などの課題解決に臨んでいます。



  日本勢で開発をリードするのが、スカイドライブで、トヨタ自動車出身の創業者は「移動革命を起こす」と意気込んでいます。

  初の商用機「SKYDRIVE」は3人乗りで、自動車の車検に相当する耐空証明を2025年に取得することを目標に掲げ、生産面ではスズキと提携し、最大年間100機の製造能力を計画しています。

  スカイドライブが追求するのは機体の軽さで、航空機にも使われる炭素繊維複合材を採用し、中型ヘリコプターの半分程度に抑えました。



  一般的なビルの屋上で離着陸することを想定しています。

  現在、都市内の空の異動はヘリコプターが担っていますが、離着陸の拠点となるヘリポートに関する規制が多く、またエンジンで大型のローターを回すため騒音も大きくなっています。

  国内の航空法ではビルの谷間では飛行は原則禁止されています。



  イーブイトールは一般に複数の小型プロペラを使って飛行するため騒音が小さく、細かな姿勢制御も容易になるようで、これまで活用が進んでこなかった低高度の空域を移動のための空間に変える可能性があります。

  商業運航に必要な型式証明の取得は2026年となる見込みですが、すでにベトナムや米国、韓国で航空機リース大手などから購入予約を獲得しているといいます。



  世界では現在、スタートアップを中心に28社がイーブイトールの開発に取り組んでおり、課題は輸送力で、開発中の機体は3〜4人乗りで、運航コストが割高になる恐れがあります。


  米ウィスク・エアロは、4人乗りの新型機では民間航空機の管制技術を応用し、操縦席をなくすとともに、地上からの制御も少なくしました。


  また、航空距離を伸ばすために搭載する電池の容量を増やすと、期待が重くなって電力消費が増えてしまうジレンマを抱えていましたが、仏アセンダンス・フライト・テクノロジーズの「ATEA」はモーターとエンジンを併用するハイブリッドの駆動方式を採用して400kmの航続距離達成を目指しています。
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2023年11月22日

国の全体最適を損ねる部分最適

  インドネシアを含む東南アジアでは一般ドライバーが乗客を運ぶ「ライドシェア」が定着しているようです。


  日本では、路上で空車を探し、運転手に住所を伝えカーナビに打ち込んでもらい、降車時に料金を支払うシステムが、携帯電話の操作一つで目的地にたどりつける配車アプリを遣えば、こうした手間がすべて省略できるといいます。



  岸田政権では遅ればせながらライドシェア解禁に向けた検討に入るといいますが、安全の確保、利用者の保護の観点から様々な課題があって慎重論も聞きますが、どうもその本音がタクシー業界の保護にあるようです。

  優先すべきは圧倒的多数である消費者の利便性にあることから、菅前首相や河野デジタル相の推進のリードに期待したいものです。

  日本は一部の集団の部分最適を考慮するあまり、国の全体最適を損ねる傾向があるようです。



  このような事例はオンライン診療にも当てはまります。

  インドネシアなら軽い風邪ならオンライン診療サービスを活用し、医者を選び、チャットで病状を伝え、薬を処方してもらいます。

  アプリは薬局や宅配事業者とも連携しており、ジャカルタ中心部なら30分で薬が自宅に届きますが、日本の医療行政に影響力を持つ日本医師会がオンライン診療を対面の補完と位置づけ普及が進みません。

  オンラインで対応できる病院に患者が流れるのを避けたい狙いが透けて見え、厚労省と医師会と歩調を合わせがちです。



  重要なのは消費者が選択肢を持つことです。

  日本では消費者が広い選択肢の中から自らの責任で選べる環境が整わず、サービスを実感する機会さえ限られます。

  タクシーとライドシェア、対面診療オンラインを見ても、乗り越えないといけない課題はあると思いますが、日本が世界標準から取り残されないようにしっかり議論して一歩前へ進んでほしいものです。

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2023年11月20日

クリスマスアドベント

  昨日は夕方、買い物で博多駅に行ってきました。

  コロナ禍の時は、閑散としていた博多駅のコンコースも人手で賑わっていました。

  外国人が増えたのが印象的で、スーツケースや言葉ですぐにわかります。


  それにもまして多くの人でいっぱいだったのがイルミネーションとクリスマスマーケットの会場となっている駅前広場でした。
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  福岡クリスマスマーケットは、この10年間、博多、天神、中洲、都次々と会場を増やし、福岡の街を光りで繋いできました。

  今年から、これらの総称を「クリスマスアドベント」とし、天神中央公園、貴賓館前広場、福岡大名ガーデンシティにも拡大してます。


  「アドベント」とは、ラテン語のAdventus(アドベントゥス)が語源で、「キリストの到来」を意味する言葉
です。

  ヨーロッパの各地には、クレスマスまでの4週間を、身近な人大切な人に感謝の気持ちを伝え、ワクワクしながら待ち望むための様々な風習があります。

  たとえば、アドベントカレンダーは、12月24日まで毎日カウントダウンしながら、お菓子屋贈り物が入った小さな引き出しを開けていきます。


  「クリスマスアドベント」は、そこに集う人々に「愛」「喜び」「安らぎ」「愉快」「希望」を感じていただけるよう、これまで以上にコンテンツを充実させるということです。

  そして、福岡の「冬の風物詩」となったクリスマスマーケットから、「世界一のクリスマスの街」を目指すといいます。



  昨日は、筑紫丘ゴルフクラブの月例会に参加しました。

  一昨日の寒波の到来で肌寒い日から一転して比較的穏やかな一日となり、この時期ではゴルフ日和といってもよかったと思います。

  ここしばらく、ドライバーもアイアンも本調子とは程遠く、飛ばない、飛ばそうとして力んで曲げる、シャンクするなど自信を無くしていましたので、不安のスタートとなりました。

  何とかショットが悪くてもグリー周りの寄せでカバーすることで耐えていましたが、一瞬競技ということを忘れ、OKの距離をパットせずにピックアップしてしまいました。

  不用意な行動で2打罰となり、これを機会に崩れていきました。

  後半は何とか修正し挽回ましたが、このことで連続入賞を逃してしまいました。

  次を頑張りましょう。

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2023年11月18日

セントラルパーク構想

福岡市の中心市街地に位置し、福岡県が管理する大濠公園と市が管理する舞鶴公園を一体的に整備する「セントラルパーク構想」が動き出しています。



県は市内の繁華街寄りにある県立美術館を大濠公園に移転して芸術文化拠点とする方針で、設計者は世界的な建築家で国立競技場の設計にも携わった隈研吾氏に決まったようです。

開館は2029年度中の予定で、大濠公園にある能楽堂などのイベントとの相乗効果を狙っています。



現在の県立美術館は福岡市の天神地区にあり、1964年に図書館などの機能も備えた文化会館として開業し、同県にゆかりのある美術・芸術品を多数所蔵しています。

元々美術館専用の施設ではないため、作品を補完する収蔵庫の面積が限られ、天井高の低さから大型作品の展示会を開催できないなど課題を抱えていました。

老朽化も進んでおり、新美術館は全国規模の大型展覧会やICT(情報通信技術)を活用したデジタル展示にも対応した最先端の施設に生まれ変わる予定です。



大濠公園への移転が決まった背景には、県と市が2014年から掲げてきた「セントラルパーク構想」があります。

隣接している大濠公園と舞鶴公園を一体的に整備する内容で、両公園は福岡城やその外堀があったエリアに位置します。

福岡城跡に加え、飛鳥時代から平安時代ごろの迎賓館である「鴻臚館」跡といった国指定の史跡が点在し、さらに能や狂言、日本舞踊といった伝統芸能の公演が開催される大濠公園能楽堂や、近現代の絵画や彫刻など国内外の美術品を展示している福岡市美術館があります。



県などはこうした両公園の芸能・文化・歴史施設をつなぐ散策路の整備にも乗り出していて、エリア全体の回遊性を高めることで相乗効果を生み出そうとしています。
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2023年11月17日

ホテル大競争

インバウンドの急回復を背景にホテルの建設ラッシュが続いています。

外資系の進出も目覚ましく、人材の争奪戦も繰り広げられていて、宿泊料金は需要回復に伴い、多くの地域でコロナ前の水準をはるかに超えました。



8月の京都市のホテルの平均宿泊価格(1室2人)は1.9倍で、東京23区は1.8倍となりました。

価格は基本的に需要と供給のバランスによって決まり、ホテル業界では価格変動制が主流で、需要が高まると価格は上がります。

最近の価格高騰は主に訪日外国人の需要回復によるものです。

日本のホテルは海外に比べて安く、円安もあって訪日外国人はさほど高いと感じていないようです。



ホテルの価格はまだ上がり続けるとの見方が多く、人出不足もあり、ホテルは安売りをして稼働率を無理に上げようとはせず、単価の上昇を狙っているようです。

観光庁の調査では、訪日外国人の宿泊費はコロナ禍前に比べて全国・地域平均で5割近く伸び、消費額を押し上げています。



今後もホテルの建設ラッシュは続き、「ブルガリ東京」やアマンの姉妹ブランド「ジャヌ東京」など外資系高級ホテルの進出が目覚ましくなっています。

能力や経験のある人材が外資系高級ホテルに引き抜かれる争奪戦も水面下で繰り広げられ要るようです。


これからはというと、世界経済フォーラムの旅行・観光競争力ランキングで日本は世界1位になったこともあり、アジア新興国の中間所得層の拡大を背景に今後も増えそうです。



また、観光地の旅館は小規模事業者が多く、後継者が見つからずに廃業に追い込まれる場合もあり減少の一途をたどっていますが、一方で伝統文化体験の場として旅館の価値も再認識されています。



コロナ下で他業界へ流れた人材が戻らず、空室があっても予約を受け付けないホテルが多くなっていて、外国人を採用するホテルも少しずつ増えています。

  ロボットやデジタルの活用で省力化する一方、従業員の「おもてなし力」を高める取り組みも進んでいるようです。
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2023年11月15日

インバウンド消費の質の向上

  JTBや三井不動産が富裕層のインバウンド需要を開拓していて、がんの診断・治療や日本酒、雄大な自然体験など、『医・食・体験』ら着目した旅を仕掛けています。

  オーバーツーリズムを軽減しながら、インバウンド消費の質を高めようというものです。



  旅行中に現地で100万円以上支払う富裕層は、米欧豪5ヵ国で計4兆7000億円を消費します。

  一般旅行者の約9倍の経済効果が見込めるとされる富裕層の取り込みが急務となっています。



  JTBはNECの子会社と組み、訪日客向けにがんや心筋梗塞のリスクを調べる血液検査をはじめました。

  検査サービスを人間ドックとセット販売します。

  医療インバウンドの利用者数は着実に増えており、日本の質の高い医療は富裕層にとって魅力的で、東南アジアからの渡航者が多いといいます。

  直近の1年間に国内で300万円以上を消費した層を分析すると、「病院・クリニック」での消費率が高く、訪日客の消費額全体の30%を占め、「貴金属・時計」に次ぐ高さです。



  高額消費につながる商品やサービスの開発は、食分野でも進んでいます。

  日本酒企画などを手掛けるアーキスは、ビンテージ日本酒「夢雀」を98万円で販売し、さらにペット同伴の富裕層に特化した宿泊施設も開き、香港の富裕層3組に地元産品を使うディナーも提供しました。

  今秋にはキャンピングカー事業も始め、出張シェフや多言語対応コンシェルジュが突くプランを提案するといいます。



  富裕層の満足度を高める観光資源として国内の豊かな自然や習慣も脚光を浴びていて、北海道は官民で、体験を重視する旅行スタイル「アドベンチャートラベル」の普及に力を入れます。



  これまでの実績からすると、富裕層の訪日が2倍になれば、1兆円を超す消費が見込め、少人数でも快適で質の高いサービスや体験を提供できれば、消費拡大に大きく貢献するようです。



  インバウンドが急回復する中、懸念されるのが観光公害で、あまりに多くの旅行者が観光地に集中すれば、混雑などで満足度が低下するだけでなく、地元住民との共存も難しくなります。

  イタリアの「水の都」ベネチアでは、水質汚染が問題となりましたが、インバウンド消費の質を高めることは、こうした観光公害対策にもつながるというわけです。
posted by 川上義幸 at 13:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2023年11月13日

日銀の金融政策

  日銀は先月末に金融緩和の柱のひとつ、長期金利をゼロ%程度に抑えるとする大規模緩和の枠組みを、一段と柔軟に運用するよう見直しました。

  7月に続いての見直しで、今回で、世界的にも異例な、「長期金利を抑える政策」は事実上形骸化されたのではないか、という見方もでています。



  日銀は、短期金利をマイナス0.1%にして、返済までの期限が10年の長期金利をゼロ%程度に抑える、この2つを柱とした大規模な金融緩和政策を進めてきました。

  これによって、全体の金利を低く抑え、持続的な景気の回復を支えるとともに、デフレを脱却し、安定的に2%の物価上昇を達成しようという狙いでした。



  そして、今回の決定会合で、日銀は、この枠組みは維持することを決めその上で、実際には、市場での国債の売り買いで変動する長期金利の変動幅の上限をこれまでは「1%の水準で厳格に抑える」としてきましたが、その方針を「1%をめどにする」と見直しました。



  なぜ、日銀は、7月に続き、わずか3か月で再び政策の見直しに踏み切ったかというと、背景には、国内の長期金利が天井の1%に近付きつつあったことと、円安が進んでいることの2点があるとみられます。

  ただ、円安の動きはとまっていませんし、長期金利の上昇も収まっていません。

  今回の政策見直しについては、厳格な上限を設けなかったことで、日銀が、金融政策の正常化に向けて、一歩、歩みを進めたのではないかという見立てになっています。



  次に焦点になるのは、短期金利で、マイナス金利をいつやめるのかという点です。

  マイナス金利の解除に踏み切るとなると、それは金融の引き締めで、金融緩和の終了し本格的な政策の転換を意味します。

  この点に関して、日銀の植田総裁は「賃金の上昇が伴う形で、持続的・安定的に2%の物価目標を達成すること」が前提となるという考えを示しています。

  今は、円安や原油価格の上昇が物価を押し上げている分が大きく、まだその段階ではないという見方です。



  その見極めのため、日銀が重視しているのが、来年の春闘での賃金引き上げです。

  今年に続き大幅な賃上げにつながるかが焦点です。

  経済の専門家の間からは、来年の春には、マイナス金利が解除し、金融緩和の終了、そして本格
問題はこの先です。



  今後、金利が上がる世界に変わることになると、住宅ローンをはじめ、様々なローンを借りている企業や家庭にとっては、負担が増えることになります。

  日本経済に、そして、私たちの生活に大きな混乱が起きないよう、日銀は今後も、慎重な政策運営、そして、丁寧な説明が求められることになります。

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2023年11月12日

打算の貿易正常化

中国の習近平国家主席は豪州アルバニージー首相と6日北京で会談し、中国による豪州への貿易制限の緩和と正常化を確認した模様です。

関係修復の背景には対中包囲網を弱めたい中国と、支持率低下を打開したい豪州の打算がありそうです。



中豪関係は豪州のモリソン前政権が2020年4月、中国に新型コロナウィルスの期限を巡る調査を要求したのをきっかけに悪化しました。

中国は対抗措置として豪州産の牛肉やワイン、大麦の輸入制限に踏み切りました。



しかし、転機となったのが2022年5月のアルバニージー政権の発足で、同氏は中国との対話を重視し、同年11月に豪首相として6年ぶりとなる習氏との対面会談を実現させ、中豪の貿易正常化も進めました。

中豪にはそれぞれ関係を改善に動く理由がありました。

中国は貿易などをテコに豪州に接近すれば、米国が主導する対中包囲網にくさびを打ち込めるという思惑があります。


アルバニージー氏は対中貿易拡大を外交成果として掲げ、低迷する政権支持率の向上を狙います。

最近の世論調査では、与党・労働党の支持率は35%となり、野党・国民党の37%を下回っています。



しかし、豪州は日米にインドを加えた4か国の「クアッド」と、米英豪3か国が安保協力する「オーカス」にそれぞれ加盟し、いずれもインド太平洋で中国を抑止する枠組みで、豪州が果たす役割は大きくなっていることを考えると残念です。



今回の北京での首脳会談では、両国の関係修復の重要性で一致し、習氏は貿易拡大に意欲を示し、TPP加盟を希望した一方、アルバニージー氏は制裁全面解除を要求した模様です。
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2023年11月11日

通販セール「独身の日」

中国で年間最大級のインターネット通販セール「独身の日」が11日に山場を迎えます。


若者の就職難や不動産市況低迷などで節約志向が強まる中、セールの動向は新型コロナウィルス禍後の個人消費の行方を占う意味でも注目されています。



独身の日のセールは2009年にアリババが開始し、今年で15回目となります。

同じく大手の京東集団の創業記念日にあたる6月の「6.18セール」とともに、中国のネット通販の大型セールとして知られています。

11月11日は「シングル」を意味する1が並ぶことから、若者の間で単身者の日とされ、「アンチバレンタインデー」との位置付けでした。

アリババが目をつけ、独り身の人が自分へのご褒美を買う日としてセールを始めました。



中国の景気回復がもたつくものの、今年のセールは持ち直しの可能性を指摘する声もあります。

米アリックスパートナーズの調査によると、今年の独身の日のセールに対する平均支出額は5500元と、前年同時期と比べて18%増える見通しです。



一方で、中国人消費者の嗜好は変わりつつあり、すべての出店者が成長を享受できるわけではなさそうです。

特に美容関連などでは中国人の嗜好に合わせた商品開発や販促活動を展開する中国ブランドの存在感が高まっています。



アリックスの調査では、「中国ブランドへの支出を増やす」と答えた消費者は66%に上り、自国ブランド志向が鮮明となりました。

品質や安全性で、中国ブランドが海外ブランドに追い付きつつあるとの認識が広がっているといいます。


中国を除く12か国のブランドについては購入意欲が減少し、中でも日本ブランドの購入を減らすとの回答が多かったようです。

どうも福島原発の処理水の海洋放出を受けて、中国のSNSで日本の化粧品ブランド「不買リスト」が出回った影響かもしれません。

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2023年11月10日

大阪・関西万博

再来年の2025年4月から半年間にわたって開かれる大阪・関西万博の先行きが不透明になっています。

会場の建設にかかる費用は当初の1.8倍に増加、海外パビリオンの建設の遅れも表面化し、開幕に間に合うのかといった声も出ています。



大阪・関西万博は先端医療の研究機関が多い大阪で超高齢社会の課題解決を考え、地域経済の起爆剤にしようと誘致されました。

国内で開催される万博としては6回目で、参加国が自らパビリオンを建設する大規模な万博としては1970年の大阪、2005年の愛知に続いて、3回目です。



会場となるのは大阪湾に浮かぶ人工の島・夢洲で、ここに150余りの国々が参加し、円周2キロの大屋根をシンボルに100を超えるパビリオンが並ぶ予定になっています。

国内外から2820万人の入場を見込み、経済効果は2兆円と試算されています。



万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」で、アンドロイド研究の第一人者や映画監督など8人がプロデューサーとして「命」をテーマに、それぞれ展示を行います。

空飛ぶクルマの国内初の商用運行や、培養肉の試食など、近未来を感じる技術の展示や体験が予定されています。

しかし開催まで1年半を切った今、課題が表面化しています。



まだ着工した国はなく半数以上は建設会社も決まっておらず、遅れが顕在化しているのです。

海外パビリオンは建物さえ間に合えばいいという訳ではなく、その展示内容や入場者との交流は万博の魅力を大きく左右しますので、参加国の希望をどのように実現できるか、ホスト国としての力量が問われる局面です。


課題はパビリオンの建設だけではなく、催事場や大屋根などの整備に充てる会場建設費について、博覧会協会は最大2350億円に上振れる見通しを公表し、当初の額から2度目の増額で、1.8倍以上になります。

多額の費用をかけて万博を開催する意味はあるのかという議論は今に始まったものではありませんが、万博は国際的にも時代遅れという批判に直面してきました。



大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」、「いのち」や「人生」を初めて正面に掲げます。

「最先端医療」や「高齢社会の課題」、人工知能による「生成AI」そして「コロナ後の社会」など重要で多様なキーワードが出てきます。


  誘致構想の策定に関わった大阪公立大学の橋爪紳也教授は「紛争で多くの人が命を落とすなかで、開幕までに間に合うかよりも、いのち輝く未来社会のモデルを構築し世界に提示できるのかが最も重要な課題だ」と話しています。
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2023年11月08日

経済大国、今では

「世界第三位の経済大国」といわれてきた日本が、ことしの名目GDP・国内総生産でドイツに抜かれて四位になる、という見通しが示されました。

IMF・国際通貨基金の予測によりますと、2023年の日本の名目GDPはドルベースで4.2兆ドルあまりで、一方、ドイツは4.4兆ドルを上回るとみられています。



アメリカの26兆ドル、中国の17兆ドルにくらべると、その差は大きくはありませんが、2028年までの予測では2つの国の順位が再び入れ替わることはなく、日本が四位に定着する可能性も高そうです。

円安でGDPの数字がドル換算で目減りしていることやドイツで急激なインフレがすすんだことが直接の要因ですが、ウクライナ侵攻の影響で景気が低迷しているドイツに日本が抜かれるとなると、日本の経済成長力の弱さが懸念されるところです。



なぜ、そこまで日本経済は伸び悩んでいるのかというと、人口減少に伴う市場の縮小が最大の要因とされてきましたが、ドイツの人口が日本のおよそ3分の2であることを踏まえると、ほかにも理由がありそうです。


その一つが賃金です。

ここ30年ぐらいの、より長期的な視点でみると日本の名目賃金が1.1倍しかあがらなかったのに対し、ドイツは2.1倍もあがっています。


また研究開発や教育への支出、といった将来への投資が、これまでほかの先進国にくらべて少なかったことも響いているといえそうです。

経済規模が大きいほどその国の人々が幸せになる、というわけではありませんが、一方で、人材の流出や、国際社会における発言力の低下も懸念されます。



IMFは2026年には今度はインドが日本を抜き、わずか3年で日本は5位に下がるとみています。緊迫する国際情勢のもと、日本が一定の存在感を保つためにも、思いきった賃上げを続けることや、未来への投資を増やして、力強い経済を取り戻す努力が一層求められているようです。
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2023年11月05日

社歌

会社の歌、「社歌」。

実はいま、いろいろな企業で社歌を作る動きが出ているといいます。



東京 池袋で複数の飲食店を運営する会社では去年、会社の歌「社歌」を作りましたが、発案したのは社長でした。

きっかけは、コロナ禍でした。

コロナ禍で客足は激減し、一部の店舗は閉店に追い込まれました。

会社存続の危機に直面する中、社長を支えたのは、お客さんの存在で、弁当の販売や配達を始めたところ、常連客を中心に注文が入るようになったといいます。

そして少しずつ業績が回復する中、感謝を伝える方法として思いついたのが社歌でした。

曲のタイトルは「ありがとう」。

およそ40人の従業員と一緒に歌詞を考え、今は開店前にこの曲を店内に流し、時折口ずさみながら準備にあたっています。

社長は、「自分たちで書いた歌詞の社歌を歌うことで、いつでも初心にかえって感謝の気持ちを思い出すことができます。社歌のおかげで、団結力や一体感のようなものも生まれた気がします」といいます。



一方、社歌作りを行うビジネスがあって、その需要は回復傾向にあるようで、これまでに100曲以上の社歌の制作を請け負ってきたという会社では、コロナ禍で一時は需要が激減したものの、ことしに入り依頼が増えているといいます。

会社によると、周年記念やM&Aで組織が変わるタイミングなどをきっかけに、“ここで一度社員の認識を共有しよう”と制作を検討する会社が多いそうです。

制作会社の話では、「社歌では、歌詞という短い文章の中に、キーワードを凝縮しなければなりません。お客さんへの思いやこの会社で働く意味、会社の姿勢などを凝縮することが特徴です。ずいぶん前は朝礼で歌うこともありましたが、今は“社員による社員のための社歌”です。歌詞には自分(社員)が言った言葉が入ることもあるし、愛着も湧きます」ということです。



SNSやYouTubeが追い風になっているという声もあります。

毎年開催されている「全国社歌コンテスト」があるようで、毎回100を超える企業がポップスやロックなどさまざまなジャンルの曲で応募しています。

ホームページではアーカイブも見ることができます。

4年前からコンテストを主催する日本経済新聞社によると、公式YouTubeは18歳から65歳以上まで幅広い世代に視聴され、2023年大会の一般投票数は4年前(2019年)の3倍以上となる122万に上ったということです。



ところで、社歌はいつごろできたかというと、社歌研究の第一人者で著書もあるジャーナリストの弓狩匡純
さんによると、最も古い社歌の歴史は1917年に南満州鉄道が歌詞を公募した時にさかのぼるそうです。

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2023年11月04日

経済対策

日本経済は歴史的な転換点にあります。

四半世紀ぶりにデフレから脱却し、物価も賃金も上がり、名目GDPが増える普通の経済に戻るチャンスです。

10年ぶりに異次元緩和でも達成できなかった物価目標の2%は、新型コロナウィルス禍とウクライナ危機に伴う世界的インフレと円安という外的ショックでいとも簡単に超えることができました。



政府は2日にまとめた経済対策は事業規模が37.4兆円と新型コロナウィルス禍前の平時の対策以上に膨らみました。

労働力の底上げや国内投資を促し、潜在成長率を米欧並みの1%以上に引き上げることを目指すとしていますが、過去の対策でも経済の体質改善は進んでおらず、巨額支援で成長底上げが続くかは見通せず、評判はあまりよくありません。



昨日の日経の社説でも「岸田首相政権の迷走の産物という印象が濃い。国民の将来不安はむしろ増すばかりではないか」と手厳しいものがあります。

各種世論調査でも、岸田政権への支持は発足後最低を記録しています。


首相は、政策を総動員して国民の可処分所得を上げると強調していますが、対策にはタイミングや効果などの面で多くの疑問が投げかけられています。



典型が首相の唐突な指示で決まった所得税減税です。

2022年度までの2年で増えた所得税・住民税の税収約3.5兆円を「国民に適切に還元する」と銘打ち、1人当たり4万円を減税しますが、巨額の債務を抱える中で、税収が増えたからと言って早々に負担軽減に回すのは不適切です。

しかも、減税実施は6月以降となり、好循環へのカギを握る来春の賃上げには間に合わず、タイミングを失しています。



物価高対策としての効果も不透明で、日本経済の需要不足が解消する中、減税や給付金はインフレ圧力を高める恐れがあります。

ガソリンや燃料の輸入を増やすような政策も、ドル買いを通じて円安加速による物価高を招きかねないといいます。



首相は昨年末、防衛費増額に伴い、「未来の世代への責任」として財源の確保を明言しましたが、その際に決めた増税策を、首相はあっさり先送りすると表明しました。

一貫しない方針や行動が、政権への不信感を高めているようです。
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2023年11月02日

ウクライナの反転攻勢

冬が近づく中、ウクライナ軍は南部ザポリージャ方面で反転攻勢を続けています。

この地域はウクライナの自立の歴史と深く結びついています。



ザポリージャはウクライナ南部ドニプロ川流域から黒海に至る州でクリミア半島につながる要衝で、ウクライナ反転攻勢にとって最重要な目標です。

ウクライナ側が徐々に前進しつつありますが、ロシアの防御も非常に頑強です。



この地域はウクライナの形成に重要な役割を果たした自立武装農民集団コサックと深く結びついています。

ザポリージャのドニプロ川の流域には、16世紀から18世紀にかけてザポリージャ・コサックといわれる一大拠点がおかれ、北西からのポーランド、東からのロシア帝国、南からのオスマントルコという列強がしのぎを削る中、コサックの自治と自由を守り、今のウクライナの源流の一つとなりました。


ウクライナ国歌「ウクライナは死なず」の中にも、「われらが自由のために魂と身をささげ、われらがコサックの氏族であることを示そう」とうたわれています。

ウクライナにとって自由は特別な意味を持っていて、自由が失われたという喪失の歴史でもあるからです。


ザポリージャのコサックは、18世紀後半にかけて、ロシア帝国の拡大によって飲み込まれ、自治と自由を喪失しました。

この喪失したコサックの自由を再び回復しようという思いが19世紀以降の独立を求めるウクライナの民族運動を支えてきました。

その歴史が今の戦いとも重なっています。



去年2月プーチン大統領がウクライナへの軍事侵攻を始めてから、ロシア軍と戦うウクライナ人の間に愛唱されている歌に愛国歌「草原の赤いカリーナ」があります。

20世紀初頭に生まれ、失われたザポリージャ・コサックの自由を復活させウクライナの独立を希求する歌です。

ザポリージャでの反転攻勢は自由の回復という歴史における意味も持っているのです。



ロシアが設置した地雷対戦車用の溝、「竜の歯」と呼ばれる障壁を越えて、わずかではありますが前進しているようですが、もうすぐ冬を迎えようとしています。

ロシアの核使用を恐れて米国の武器提供の慎重さがこのような状況を招いており、同じ戦争でも今ではイスラエル・パレスチナの方に国際世論の目は移っていますし、米国の支援もイスラエル優先となり、今後のウクライナの戦局が気になるところです。
posted by 川上義幸 at 08:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記