豆腐に納豆、みそ、しょうゆ、それに寒いと、おでんのがんもどきが恋しくなってしまいます。
和食に欠かせない、これらの食べ物に共通する原料と言えば、「大豆」です。
和食を支える大豆ですが、その国産の割合は6%にとどまっています(2022年)。
大豆は油を搾る「搾油用」とそのものを食べる「食品用」に分かれ、食品用だと国産の割合は増えるのですが、それにしても自給率は23%で、大半を輸入に頼っています。
ですが、最近は中国を中心に、世界的に需要が増えて国際価格が上昇傾向にあり、将来的に安定して調達できるか、心配な面があります。
大豆の収穫量は、戦後の復興に伴って増え、1952年には、52万トンあまりまで増えました。
このときの自給率は64%ありましたがその後、急速に減ります。
大きな要因は、海外産の安い大豆が増えたことで、1961年、大豆は輸入自由化され、関税さえ払えば、自由に輸入できるようになりました。
その結果、主にアメリカから安い大豆が大量に入ってくるようになりました。
消費者としては、輸入大豆の安さは大きなメリットですが、豆腐などの食品メーカーは、品質面では「国産大豆のほうが良い」と口をそろえ、国産大豆の生産量が増えることを期待しています。
国産には致命的な問題があって、なかなか安定して量が確保できません。
大きな原因は、まずは全体のおよそ8割が田んぼで作られていることにあり、田んぼでは、年によってコメを作ったり、大豆を作ったりします。
大豆を作付けする年は、稲を育てるときは水を張るところの水を抜いて大豆を植えます。
ところが十分、水が抜けない田んぼがあり、大豆は湿気を嫌う作物なので、その場合、なかなか収量があがりません。
また、田んぼで生産する農家の多くは、どうしてもコメを優先しがちで、大豆の生産は補助金目当てで力が入っていないとも指摘されています。
しかし最近では、収穫量が期待できる「品種」で進歩がありました。
この大豆、農研機構が2023年度、品種登録出願を行った「そらみのり」という新品種です。
従来品種の「さやがはじけやすく、収穫ロスが多い」という欠点を解消したこともポイントで、この新品種は、温暖な地域向けで、東海地方から九州での拡大を目指しているということです。
新品種は母親が「九州148号」と国産で、父親はアメリカの品種「Santee(サンティー)」で、たくさん実る、いわば“アメリカの血”を入れたことが成功につながりました。
ただ、新品種の作付けを広げるには、十分な量の種を増やさなくてはなりませんが、工業製品ではないので一定の時間がかかります。
さらに時間では解決できない課題もあって、国は大豆の生産を増やそうと旗を振って、品種の開発だけでなく、補助金も手厚くつけて生産を促していますが、過去も農業政策はコロコロ変わってきましたので、大豆重視
の政策が本当に続くのか、疑っている農家はたくさんいるようです。
農家の意識も重要で、日本では、大豆だけを作り続けている農家は少数派で、多くはコメも手掛け、あくまでコメを重視しています。
大豆は片手間に作付けするという意識が変わらない限り、いくら良い品種がデビューしても、劇的に収穫量が増えることは望めません。
大豆が復活することは、日本農業の復活にもつながる可能性を秘めていると言っても過言ではありませんので今後の大豆生産に期待したいものです。