日本屈指の観光地、北海道と沖縄県で地元住民を料金割引で優遇するリゾート施設などが増えているようです。
国の税金に頼らず民間企業が割引分は自己負担します。
ニセコで知られる倶知安町は東急不動産ホールディングスがスキー場のリフト券を通常より4割安くしました。
観光客が減る閑散期の需要を地域で埋め、収益基盤を拡充します。
登録したIDとマイナンバーカードを紐づけると「町民証明バッジ」が発行され、割引が受けられます。
ニセコで身銭を切った「地元割」が始まる背景には急激な物価高があります。
ニセコ東急はリフト券(一日券)を前年に比べ22%値上げしましたが、円安の恩恵を受けるインバウンドは日本円換算の料金値上げに一定の耐久性はあるものの、賃金の上昇が物価高に追い付かない地元の住民には打撃になります。
宿泊業や旅行業に携わる従業員の実質賃金は著名な観光地でも伸び悩んでいて、そのうえ、道路渋滞などオーバーツーリズムの問題もあり、住民の疲弊感も漂っています。
持続可能なリゾートをつくるうえで、様々な視点で住民と協業する必要があるようです。
倶知安観光協会では「住んでよし、訪れてもよし」具現化していくとしています。
北海道に先んじて「地元割」が普及した観光地が沖縄です。
沖縄ツーリストは25年以上前から県民向けの割安プランを扱っています。
バムローカルメディアは外資を含む県内リゾートホテルを中心に約100施設と契約、地元向けに「平均で半額程度の料金」で客室を提供し、23年度の利用者は約60万人だったようです。
また、星野リゾートは北海道、沖縄に加え、高知県のホテルでも税金に頼らない地元割を実施しているようです。
2025年02月13日
2025年02月11日
航空燃料不足リスク
2024年のインバウンドが過去最多を更新しました。
国は更なる伸長を目指しますが、航空燃料不足リスクが解消できておらずそれが障害となり、楽観できない状況にあります。
機動的な燃料調達を阻む石油業界の独特な旧習が壁となっているようです。
国内空港に新規就航や増便できなかった海外エアラインは24年7月に週140便ありました。
いったん週12便まで減少したものの、訪日需要の高まりで24年9月下旬は週63便まで再び増加しています。
現在は訪日客の受け入れが多い新千歳空港やTSMCの進出に沸く熊本空港など一部空港では今後の増便に見合うだけの燃料調達の懸念が残っているといいます。
リスク要因を探ると、空港会社と石油元売りがつばぜり合いを演じる姿があります。
航空燃料の取引における品質管理は、英国の非営利組織「ジョイント・インスペクション・グループ」の定めが世界の標準となっていますが、最近の改定で、出荷地点で燃料の「全項目試験」を実施すれば受け入れ地での検査は「簡易検査」で済ませられるようになりました。
しかし、一部の元売りは日本でも厳重に検査するように求め、航空燃料の輸入経路には2次基地と呼ばれる元売り各社の中間受け入れ施設でチェックを経て内航船で空港まで運ぶ流れになっていて、「安全第一」を盾に緊急直接輸入を阻んでいます。
成田空港では燃料不足で増便や新規就航を見合わせていたこともあって、成田国際空港会社(NAA)は伊藤忠商事の仲介の下に、直接、燃料を輸入する方策を実現しようとしても拒まれました。
どうも、元売りはこうした取引に介在することで、収益を稼げる構図となっている模様です。
NAAと伊藤忠が外航船で直接空港に運ぶ前例を作れば、大手元売りの独占的な商流が崩れるのではないか、との警戒感が募ったとしても不思議ではありませんが。
もちろん航空燃料不足の原因は元売りだけにあるのではなく、リスクを払拭できない重層的な問題が潜んでいるようです。
受け入れ基地から地方空港に燃料を運ぶ内航船の船員は国内籍に限るルールがあり、船員不足で輸送能力が落ちています。
内陸型空港に運ぶトラックの運転手や地上での給油人材も不足しています。
こうした要因がボトルネックとなり、全国的な航空燃料不足がいつ再燃してもおかしくありません。
業界横断でより機動的な調達ルートを構築しなければ観光立国で得られる国益を逃しかねません。
元売り自身も旧習を見直す柔軟性が求められているようですが。
国は更なる伸長を目指しますが、航空燃料不足リスクが解消できておらずそれが障害となり、楽観できない状況にあります。
機動的な燃料調達を阻む石油業界の独特な旧習が壁となっているようです。
国内空港に新規就航や増便できなかった海外エアラインは24年7月に週140便ありました。
いったん週12便まで減少したものの、訪日需要の高まりで24年9月下旬は週63便まで再び増加しています。
現在は訪日客の受け入れが多い新千歳空港やTSMCの進出に沸く熊本空港など一部空港では今後の増便に見合うだけの燃料調達の懸念が残っているといいます。
リスク要因を探ると、空港会社と石油元売りがつばぜり合いを演じる姿があります。
航空燃料の取引における品質管理は、英国の非営利組織「ジョイント・インスペクション・グループ」の定めが世界の標準となっていますが、最近の改定で、出荷地点で燃料の「全項目試験」を実施すれば受け入れ地での検査は「簡易検査」で済ませられるようになりました。
しかし、一部の元売りは日本でも厳重に検査するように求め、航空燃料の輸入経路には2次基地と呼ばれる元売り各社の中間受け入れ施設でチェックを経て内航船で空港まで運ぶ流れになっていて、「安全第一」を盾に緊急直接輸入を阻んでいます。
成田空港では燃料不足で増便や新規就航を見合わせていたこともあって、成田国際空港会社(NAA)は伊藤忠商事の仲介の下に、直接、燃料を輸入する方策を実現しようとしても拒まれました。
どうも、元売りはこうした取引に介在することで、収益を稼げる構図となっている模様です。
NAAと伊藤忠が外航船で直接空港に運ぶ前例を作れば、大手元売りの独占的な商流が崩れるのではないか、との警戒感が募ったとしても不思議ではありませんが。
もちろん航空燃料不足の原因は元売りだけにあるのではなく、リスクを払拭できない重層的な問題が潜んでいるようです。
受け入れ基地から地方空港に燃料を運ぶ内航船の船員は国内籍に限るルールがあり、船員不足で輸送能力が落ちています。
内陸型空港に運ぶトラックの運転手や地上での給油人材も不足しています。
こうした要因がボトルネックとなり、全国的な航空燃料不足がいつ再燃してもおかしくありません。
業界横断でより機動的な調達ルートを構築しなければ観光立国で得られる国益を逃しかねません。
元売り自身も旧習を見直す柔軟性が求められているようですが。
2025年02月10日
現金支払い、消えゆくアジア
アジアで現金決済が消えつつあります。
スマートフォンをかざすQRコード決済などの普及で、支払いに占める現金の比率は2027年に14%と19年比で1/3に下がります。
インドなどは政府主導の決済方式を推進し、米欧クレジットカード会社から主導権を取り戻す「決済ナショナリズム」に動いています。
同国で急速に普及する食材・日用品の宅配サービスはスマホ一つで注文から配達、決済まで完結し、現金支払いはむしろ敬遠されます。
インドの店頭での現金決済比率は、金額ベースで19年の71%から27年には10%に低下し、日本(27年に31%)を大幅に下回ります。
中国本土では現金比率は27年には3%まで下がる見込みで10億人超が利用する「アリペイ」などのQRコード決済が行き届いています。
アジアで「脱現金」は急速に進んでおり、14ヵ国・地域の現金支払い比率の単純平均を算出すると、27年は14%と19年比で33%低下し、欧州(12%)とほぼ肩を並べます。
スマホの普及が変化をもたらしたようで、東南アジアでは銀行口座を持たない人が多く、クレジットカードの保有率が低く、欧米に比べキャッシュレス利用は遅れていましたが、電話番号などがあれば利用開始できるスマホ決済が急速に浸透しました。
もう一つ、アジアのキャッシュレス化を後押しするのが決済ナショナリズムです。
米ビザや米マスターカードなど国際ブランドは決済代金の数%の手数料を付加し、顧客や店舗の膨大なデータも取得します。
インドや中国が政府主導でキャッシュレス化に取り組む背景には、自立した決済網を構築したいとの思惑もありそうです。
東南アジア各国はQRコード決済の国家間連携を強め、タイの「プロンプトペイ」やシンガポールの「ペイナウ」などが互いに使えるようになりました。
東南アジア各国は海外の決済システムに依存しない体制を作り、「アジア経済圏」を確立しようとしています。
スマートフォンをかざすQRコード決済などの普及で、支払いに占める現金の比率は2027年に14%と19年比で1/3に下がります。
インドなどは政府主導の決済方式を推進し、米欧クレジットカード会社から主導権を取り戻す「決済ナショナリズム」に動いています。
同国で急速に普及する食材・日用品の宅配サービスはスマホ一つで注文から配達、決済まで完結し、現金支払いはむしろ敬遠されます。
インドの店頭での現金決済比率は、金額ベースで19年の71%から27年には10%に低下し、日本(27年に31%)を大幅に下回ります。
中国本土では現金比率は27年には3%まで下がる見込みで10億人超が利用する「アリペイ」などのQRコード決済が行き届いています。
アジアで「脱現金」は急速に進んでおり、14ヵ国・地域の現金支払い比率の単純平均を算出すると、27年は14%と19年比で33%低下し、欧州(12%)とほぼ肩を並べます。
スマホの普及が変化をもたらしたようで、東南アジアでは銀行口座を持たない人が多く、クレジットカードの保有率が低く、欧米に比べキャッシュレス利用は遅れていましたが、電話番号などがあれば利用開始できるスマホ決済が急速に浸透しました。
もう一つ、アジアのキャッシュレス化を後押しするのが決済ナショナリズムです。
米ビザや米マスターカードなど国際ブランドは決済代金の数%の手数料を付加し、顧客や店舗の膨大なデータも取得します。
インドや中国が政府主導でキャッシュレス化に取り組む背景には、自立した決済網を構築したいとの思惑もありそうです。
東南アジア各国はQRコード決済の国家間連携を強め、タイの「プロンプトペイ」やシンガポールの「ペイナウ」などが互いに使えるようになりました。
東南アジア各国は海外の決済システムに依存しない体制を作り、「アジア経済圏」を確立しようとしています。
2025年02月09日
足し算を間違うAI
米オープンAIの「chatGPT」などの人口知能(AI)はわずか数年で急速に進化を遂げました。
法律や化学など専門的な質問にも即座に答え、難解なクイズもたやすく解きます。
しかし一方で、簡単な足し算を間違うなどの意外な弱点も見えてきました。
生成AIのブームを生んだ2020年のオーブンAIの論文は、学習に使うデータ量や、結果を出すのに使う変数が増えるほど性能が高まるとしています。
米テック大手などは資金を投じて生成AIの開発を競いますが、まだ賢さを身に着けたとは言い切れないようです。
スペインのバレンシア工科大学などの24年の論文は、巨大AIの弱点を指摘しています。
歴代のChatGPTなどに算数や地理などの問題を与えたところ、AIが大きくなるほど、約20文字を並び替える難解なクイズなどを正しく解きましたが、小学生でも解ける4〜5ケタの足し算をさせると、GPT-4などの巨大AIは頻繁に間違えたといいます。
バレンシア工科大学の教授は「新型のAIは複雑な問題の処理が得意だが、簡単な問題は間違う。信頼性や予測可能性の点で必ずしも賢くなるとは限らない」と話します。
AIが間違いを含む回答をつくる「ハルシネーション(幻覚)」はAIが文章を作るとき起きるようで、単語や文章の意味を理解せずに、初歩的な間違いをするようです。
巨大AIの過ちに学んで人間が無知を自覚し、事実確認に慎重に取り組む必要がありそうです。
法律や化学など専門的な質問にも即座に答え、難解なクイズもたやすく解きます。
しかし一方で、簡単な足し算を間違うなどの意外な弱点も見えてきました。
生成AIのブームを生んだ2020年のオーブンAIの論文は、学習に使うデータ量や、結果を出すのに使う変数が増えるほど性能が高まるとしています。
米テック大手などは資金を投じて生成AIの開発を競いますが、まだ賢さを身に着けたとは言い切れないようです。
スペインのバレンシア工科大学などの24年の論文は、巨大AIの弱点を指摘しています。
歴代のChatGPTなどに算数や地理などの問題を与えたところ、AIが大きくなるほど、約20文字を並び替える難解なクイズなどを正しく解きましたが、小学生でも解ける4〜5ケタの足し算をさせると、GPT-4などの巨大AIは頻繁に間違えたといいます。
バレンシア工科大学の教授は「新型のAIは複雑な問題の処理が得意だが、簡単な問題は間違う。信頼性や予測可能性の点で必ずしも賢くなるとは限らない」と話します。
AIが間違いを含む回答をつくる「ハルシネーション(幻覚)」はAIが文章を作るとき起きるようで、単語や文章の意味を理解せずに、初歩的な間違いをするようです。
巨大AIの過ちに学んで人間が無知を自覚し、事実確認に慎重に取り組む必要がありそうです。
2025年02月07日
人工衛星・AIで水道管漏水調査
水道管や下水道管などのインフラ設備の効率保守の重要性は全国的に高まっています。
埼玉県八潮市では下水管の腐食の影響で道路が陥没し、トラックが転落する事故が発生したばかりです。
水道管でも老衰の発見が遅れれば、道路の陥没などを招きかねません。
福岡市は人工衛星画像やAIを活用し、水道管の漏水調査の効率化を進めていて、特殊な波長で宇宙から撮影した画像をもとに漏水の可能性があるエリアを推定し、AIで水道管内を伝わる音の大きさ(音圧)を解析して範囲
を絞り込みます。
交通量の多い道路付近など、人間の聴力に頼った従来の調査が難しい場所などで早期発見につなげるというものです。
もう少し詳しく説明すると、職員がパソコン画面に映し出されたヒートマップをチェックします。
ヒートマップは人工衛星画像をもとに作成されたもので、水道管が漏水している確率が高い場所が赤色で示されます。
人工衛星画像は、JAXAが打ち上げた「だいち2号」が撮影したマイクロ波を活用し、地表が乾いている時より湿った時の方がマイクロ波の反射が強くなる特性が漏水調査に向いているということです。
そうなると署員が現場に直行し、水道管の弁にセンサーを設置して回り、このセンサーはあらゆるモノがネットにつながるIoT技術を活用したもので、生活音が少なくなる午前2〜4時に毎日自動で水道管内の音圧を検知し、データをクラウドにアップロードします。
このデータをAIが解析し、パソコン画面に「漏水」の警告を表示し、職員が今度は現場に直行し、水漏れを止めるという流れです。
水道管調査の効率化に向け、福岡市が描くシナリオで、センサーやAIの導入から間もないこともあり実際に漏水の発見につながった事例は少なすようですが、今後大いに期待されます。
このほか福岡市は、老朽化した水道管の効率的な更新にも取り組んでいて、AIを活用して水道管の劣化を予測する実証実験を実施し根2023年度から本格導入をしているようです。
こうした取り組みが奏功し福岡市の23年度の漏水率は2.0%となり、政令都市級の大都市の中では最も低いといいます。
埼玉県八潮市では下水管の腐食の影響で道路が陥没し、トラックが転落する事故が発生したばかりです。
水道管でも老衰の発見が遅れれば、道路の陥没などを招きかねません。
福岡市は人工衛星画像やAIを活用し、水道管の漏水調査の効率化を進めていて、特殊な波長で宇宙から撮影した画像をもとに漏水の可能性があるエリアを推定し、AIで水道管内を伝わる音の大きさ(音圧)を解析して範囲
を絞り込みます。
交通量の多い道路付近など、人間の聴力に頼った従来の調査が難しい場所などで早期発見につなげるというものです。
もう少し詳しく説明すると、職員がパソコン画面に映し出されたヒートマップをチェックします。
ヒートマップは人工衛星画像をもとに作成されたもので、水道管が漏水している確率が高い場所が赤色で示されます。
人工衛星画像は、JAXAが打ち上げた「だいち2号」が撮影したマイクロ波を活用し、地表が乾いている時より湿った時の方がマイクロ波の反射が強くなる特性が漏水調査に向いているということです。
そうなると署員が現場に直行し、水道管の弁にセンサーを設置して回り、このセンサーはあらゆるモノがネットにつながるIoT技術を活用したもので、生活音が少なくなる午前2〜4時に毎日自動で水道管内の音圧を検知し、データをクラウドにアップロードします。
このデータをAIが解析し、パソコン画面に「漏水」の警告を表示し、職員が今度は現場に直行し、水漏れを止めるという流れです。
水道管調査の効率化に向け、福岡市が描くシナリオで、センサーやAIの導入から間もないこともあり実際に漏水の発見につながった事例は少なすようですが、今後大いに期待されます。
このほか福岡市は、老朽化した水道管の効率的な更新にも取り組んでいて、AIを活用して水道管の劣化を予測する実証実験を実施し根2023年度から本格導入をしているようです。
こうした取り組みが奏功し福岡市の23年度の漏水率は2.0%となり、政令都市級の大都市の中では最も低いといいます。
2025年02月04日
ラーメン店、苦汁
輸入豚肉の高騰が止まらず、生産地である欧州では畜産事業者の収益悪化で減産が進み、日本国内の卸値は上昇トレンドが続いています。
大口需要先となるラーメン店では、他の食材も値上がりして経営環境が厳しくなり、2024年は倒産が過去最多となりました。
チャーシューに使う肩ロースは、輸入品の国内卸値が指標となるデンマーク産の場合で前年同月比で6%高となりました。
22年のウクライナ侵略をきっかけにした飼料高騰や人件費の上昇を背景に、欧州では食肉メーカーが工場閉鎖などのリストラを進めてきました。
消費国である中国も景気の停滞で調達意欲を後退させ、欧州では豚の生産規模が縮小しました。
加えて、日本の商社による調達コストは円安も重なり上振れしています。
1月になってドイツで飼育されていた水牛から家畜伝染病「口蹄疫」の感染が確認されました。
日本はドイツから豚肉を輸入していませんが、ドイツ産を購入していた韓国や英国などが周辺の生産国から調達しようと買い圧力を強めていて、現地の相場が上がり始めています。
豚肉の高騰が直撃しているラーメン店は、豚脂を使う背脂や麺などの食材の価格が上がり続けています。
帝国データバンクによると、ラーメン店の倒産は24年で72件あり、前年から19件増えて、新型コロナウィルス禍で営業自粛を求められていた20年の54件を上回り、過去最多を更新しています。
手軽に食べられるラーメンは「1000円の壁」があるといますが、1000円を超えると客足に影響があるため、価格転嫁が難しいようです。
インバウンドの影響もあって、福岡の人気のラーメン店はいつも行列が出ているようですが、その状況を見ていると、このようなラーメン店の苦汁は想像もつきませんでした。
大口需要先となるラーメン店では、他の食材も値上がりして経営環境が厳しくなり、2024年は倒産が過去最多となりました。
チャーシューに使う肩ロースは、輸入品の国内卸値が指標となるデンマーク産の場合で前年同月比で6%高となりました。
22年のウクライナ侵略をきっかけにした飼料高騰や人件費の上昇を背景に、欧州では食肉メーカーが工場閉鎖などのリストラを進めてきました。
消費国である中国も景気の停滞で調達意欲を後退させ、欧州では豚の生産規模が縮小しました。
加えて、日本の商社による調達コストは円安も重なり上振れしています。
1月になってドイツで飼育されていた水牛から家畜伝染病「口蹄疫」の感染が確認されました。
日本はドイツから豚肉を輸入していませんが、ドイツ産を購入していた韓国や英国などが周辺の生産国から調達しようと買い圧力を強めていて、現地の相場が上がり始めています。
豚肉の高騰が直撃しているラーメン店は、豚脂を使う背脂や麺などの食材の価格が上がり続けています。
帝国データバンクによると、ラーメン店の倒産は24年で72件あり、前年から19件増えて、新型コロナウィルス禍で営業自粛を求められていた20年の54件を上回り、過去最多を更新しています。
手軽に食べられるラーメンは「1000円の壁」があるといますが、1000円を超えると客足に影響があるため、価格転嫁が難しいようです。
インバウンドの影響もあって、福岡の人気のラーメン店はいつも行列が出ているようですが、その状況を見ていると、このようなラーメン店の苦汁は想像もつきませんでした。
2025年02月03日
粗糖価格、安定に安堵
バレンタインデーのシーズンが近づき、チョコレート価格上昇が危惧されます。
その中で、原料の粗糖が安定し、砂糖の国内価格が上がりにくいのがせめてもの救いのようです。
穀物などの農作物を総称した「ソフトコモディティー」は、ロシアのウクライナ侵略や異常気象で最高値の更新が相次いでいます。
例外的に、価格の安定感が際立つのが砂糖の原料である粗糖です。
背景にあるのがブラジルの増産期待で、ブラジルは世界の粗糖輸出の5割を握ります。
24年は異常気象などによる供給懸念で、カカオ豆が1970年代につけた過去最高値を更新しました。
粗糖も2024年9月には一時高騰しましたが、これはブラジルで夏に干ばつが起こりサトウキビ畑で大規模な火事が発生したためで、しかし被害が限定的だとの見方が強まると価格は落ち着いたようです。
価格の安定感をもたらすのは供給力の強さで、コーヒーやカカオは生産国が熱帯地域などに偏っていますが、粗糖の主産地はインド、欧州、タイ、オーストラリアと南北の両半球に分布します。
ある産地で異常気象や地政学リスクが起きても、別産地からの供給が見込めます。
日本は主にオーストラリアやタイから輸入しているようです。
サトウキビは茎を切って植えれば繁殖するので、農家は生産しやすいのも供給面でプラス材料です。
その中で、原料の粗糖が安定し、砂糖の国内価格が上がりにくいのがせめてもの救いのようです。
穀物などの農作物を総称した「ソフトコモディティー」は、ロシアのウクライナ侵略や異常気象で最高値の更新が相次いでいます。
例外的に、価格の安定感が際立つのが砂糖の原料である粗糖です。
背景にあるのがブラジルの増産期待で、ブラジルは世界の粗糖輸出の5割を握ります。
24年は異常気象などによる供給懸念で、カカオ豆が1970年代につけた過去最高値を更新しました。
粗糖も2024年9月には一時高騰しましたが、これはブラジルで夏に干ばつが起こりサトウキビ畑で大規模な火事が発生したためで、しかし被害が限定的だとの見方が強まると価格は落ち着いたようです。
価格の安定感をもたらすのは供給力の強さで、コーヒーやカカオは生産国が熱帯地域などに偏っていますが、粗糖の主産地はインド、欧州、タイ、オーストラリアと南北の両半球に分布します。
ある産地で異常気象や地政学リスクが起きても、別産地からの供給が見込めます。
日本は主にオーストラリアやタイから輸入しているようです。
サトウキビは茎を切って植えれば繁殖するので、農家は生産しやすいのも供給面でプラス材料です。
2025年01月31日
ロス山火事、「極端現象」で拡大
近年、オーストラリアやカナダ、ペイハワイのマウイ島などで、大規模な山火事が発生してきました。
気候変動の結果、地域の災害リスクが増してより大きな被害をもたらしています。
1月7日に発生した米西部カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した山火事は、2週間以上続いて大規模な被害を招きました。
世界平均で2024年に過去最高を記録した気温や海水温の上昇との関連が指摘されています。
専門家は3つの不運が重なったと見ます。
被害の拡大に、@長期間の異常な乾燥Aその前の極端な大雨による草木の成長B内陸からの海に吹く乾燥した強風「サンタアナ風」が関わったと推定しています。
山火事が起きた米西海岸の南部はもともと乾燥した地域ですが、昨年の7〜12月は例年に比べても降水量が極端に少なかったようです。
一方でその前の昨年の2〜3月は対照的に雨が多く、雨の増加で山の草木がよく育ち、その後の感想で燃えやすい「燃料」となったようです。
加えて、高温で乾燥した強風が、火の手を一気に広げた模様です。
今回の強風や乾燥には「海水温の高さもかかわっているのではないか」と地球温暖化と山火事の関係に詳しい専門家は指摘します。
海水温が上がると、暖かい空気により上昇気流が生まれ、陸地から海に向かって吹く風が強まる可能性があるというわけです。
気候変動で気温や海水温の高まりが常態化すると、このような極端な気象現象が増えそうです。
気候変動の結果、地域の災害リスクが増してより大きな被害をもたらしています。
1月7日に発生した米西部カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した山火事は、2週間以上続いて大規模な被害を招きました。
世界平均で2024年に過去最高を記録した気温や海水温の上昇との関連が指摘されています。
専門家は3つの不運が重なったと見ます。
被害の拡大に、@長期間の異常な乾燥Aその前の極端な大雨による草木の成長B内陸からの海に吹く乾燥した強風「サンタアナ風」が関わったと推定しています。
山火事が起きた米西海岸の南部はもともと乾燥した地域ですが、昨年の7〜12月は例年に比べても降水量が極端に少なかったようです。
一方でその前の昨年の2〜3月は対照的に雨が多く、雨の増加で山の草木がよく育ち、その後の感想で燃えやすい「燃料」となったようです。
加えて、高温で乾燥した強風が、火の手を一気に広げた模様です。
今回の強風や乾燥には「海水温の高さもかかわっているのではないか」と地球温暖化と山火事の関係に詳しい専門家は指摘します。
海水温が上がると、暖かい空気により上昇気流が生まれ、陸地から海に向かって吹く風が強まる可能性があるというわけです。
気候変動で気温や海水温の高まりが常態化すると、このような極端な気象現象が増えそうです。
2025年01月30日
中国のほほ笑み外交
ロシアのプーチン大統領の最側近が以前に来日した際に、「今の中国は、共産党が支配していたソ連時代のロシアと同じで、強硬一点張りの代外方針が突然、がらりと変わることがある。それがいつなのか、注意してみておくといい」と助言したそうです。
中国の外交は最近、そのような局面かもしれません。
領土や領海の争いを抱える日本やインドとも交流を速め、緊張を和らげようとしています。
象徴的だったのが、岩屋外相による昨年12月の訪中で、李強首相が応対し、「中日関係は改善と発展の重要な時期にある」と呼び掛けたといいます。
1月半ばの自民、公明両党の訪中団への対応も異例の厚遇だったようで、多くの共産党幹部が会談に応じ、これまた前例にない応対だったようです。
この間、日中は互いに入国に必要なビザの制限を緩め、人的な往来を増やすことを決め、2023年夏から止めている日本産水産物の輸入についても、中国は再開の検討を始めています。
中国の視線の先に、トランプ米政権の再登場があることは疑いのないことで、米中冷戦が激しくなると想定し、周辺国との緊張を和らげようとしています。
国内経済が低迷し、投資や貿易を増やす狙いもありそうです。
こうした中国の「ほほ笑み外交」は、険悪な関係にあるインドにも向けられていて、中印は国境紛争で戦火を交え交流が滞っていたのが、24年10月の習近平中国国家主席とインドのモディ首相による5年ぶりの会談がきっかけに潮目が変わりました。
また、日印に先立ち、オーストラリアや欧州諸国にも秋波を送っていて、豪州産のワインやロブスターへの制裁関税を全て解除し、昨年、ドイツのシュルツ首相を北京に招き、習主席がフランスを訪れています。
問題は、こうした融和の態度がどこまで長続きするのかで、中国はこれまでも米中の緊張が高まると、米同盟国や隣国に融和を試みるパターンを繰り返してきました。
残念ながら今回のほほ笑み外交も、やがて息切れしていくとみるのが無難のようです。
習政権のほほ笑みを逆手にとって、中国との難しい案件を前に進めると同時に、仮面に隠された真意に注意を怠らず、緊張が再び高まる事態にも備えることが肝要のようです。
中国の外交は最近、そのような局面かもしれません。
領土や領海の争いを抱える日本やインドとも交流を速め、緊張を和らげようとしています。
象徴的だったのが、岩屋外相による昨年12月の訪中で、李強首相が応対し、「中日関係は改善と発展の重要な時期にある」と呼び掛けたといいます。
1月半ばの自民、公明両党の訪中団への対応も異例の厚遇だったようで、多くの共産党幹部が会談に応じ、これまた前例にない応対だったようです。
この間、日中は互いに入国に必要なビザの制限を緩め、人的な往来を増やすことを決め、2023年夏から止めている日本産水産物の輸入についても、中国は再開の検討を始めています。
中国の視線の先に、トランプ米政権の再登場があることは疑いのないことで、米中冷戦が激しくなると想定し、周辺国との緊張を和らげようとしています。
国内経済が低迷し、投資や貿易を増やす狙いもありそうです。
こうした中国の「ほほ笑み外交」は、険悪な関係にあるインドにも向けられていて、中印は国境紛争で戦火を交え交流が滞っていたのが、24年10月の習近平中国国家主席とインドのモディ首相による5年ぶりの会談がきっかけに潮目が変わりました。
また、日印に先立ち、オーストラリアや欧州諸国にも秋波を送っていて、豪州産のワインやロブスターへの制裁関税を全て解除し、昨年、ドイツのシュルツ首相を北京に招き、習主席がフランスを訪れています。
問題は、こうした融和の態度がどこまで長続きするのかで、中国はこれまでも米中の緊張が高まると、米同盟国や隣国に融和を試みるパターンを繰り返してきました。
残念ながら今回のほほ笑み外交も、やがて息切れしていくとみるのが無難のようです。
習政権のほほ笑みを逆手にとって、中国との難しい案件を前に進めると同時に、仮面に隠された真意に注意を怠らず、緊張が再び高まる事態にも備えることが肝要のようです。
2025年01月29日
強まる資源ナショナリズム
以前、中国が一部レアメタルの対米輸出を禁止したように、資源国が国有化を進めたり、輸出制限したりするケースが目立ってきました。
市場をゆがめる政策はかえって相場の混乱を招き、結局は価格下落につながりかねません。
「すべての資源は国内で加工されるべきだ」とインドネシアのジョコ前大統領が任期中に推し進めたのが自国産資源の輸出禁止措置でした。
例えば電気自動車(EV)の電池材料に使われるニッケルですが、インドネシアは2023年に未加工のニッケル鉱石の輸出を禁止し、国内での精錬などの加工を義務付けました。
ニッケル市場でのシェア拡大を目指すインドネシアの期待に応えたのが中国企業で、多くのメーカーがインドネシアに進出し、23年時点でシェアは5割に達しました。
しかし、中国企業がニッケルを大増産したため、価格が急落しました。
同じくEVの車載電池の材料として一時高騰したリチウムを巡り、国益を最優先する国有化の動きが広がりました。
メキシコは22年、リチウム資源を国有化するために鉱業法を改正しました。
メキシコのリチウム鉱床は粘土質の地層にあるとみられ、高コストなうえ高度な開発技術を必要とするため、強硬な姿勢で国外からの技術提供が見込めない状況ではタカラの持ち腐れになりかねない状況にあります。
リチウム生産量の世界2位のチリもリチウム産業の国有化すると表明しましたが、今のところ狙い通りに行っていません。
EV販売が伸び悩む中で各国の増産が相次いだことでリチウムの供給が急増し、価格は低迷したままになっています。
中国はレアメタルの一種であるアンチモニーを輸出規制の対象とし、さらに半導体材料に使うレアメタルのガリウムやゲルマニウムなどデュアルユース(軍民両用)に関連する重要鉱物の米国向け輸出を禁止すると発表し
ました。
しかし、思惑通りに事は進んでいないようで、国家主導の囲い込みは産地の多様化と素材代替を進展させることになっているようです。
市場をゆがめる政策はかえって相場の混乱を招き、結局は価格下落につながりかねません。
「すべての資源は国内で加工されるべきだ」とインドネシアのジョコ前大統領が任期中に推し進めたのが自国産資源の輸出禁止措置でした。
例えば電気自動車(EV)の電池材料に使われるニッケルですが、インドネシアは2023年に未加工のニッケル鉱石の輸出を禁止し、国内での精錬などの加工を義務付けました。
ニッケル市場でのシェア拡大を目指すインドネシアの期待に応えたのが中国企業で、多くのメーカーがインドネシアに進出し、23年時点でシェアは5割に達しました。
しかし、中国企業がニッケルを大増産したため、価格が急落しました。
同じくEVの車載電池の材料として一時高騰したリチウムを巡り、国益を最優先する国有化の動きが広がりました。
メキシコは22年、リチウム資源を国有化するために鉱業法を改正しました。
メキシコのリチウム鉱床は粘土質の地層にあるとみられ、高コストなうえ高度な開発技術を必要とするため、強硬な姿勢で国外からの技術提供が見込めない状況ではタカラの持ち腐れになりかねない状況にあります。
リチウム生産量の世界2位のチリもリチウム産業の国有化すると表明しましたが、今のところ狙い通りに行っていません。
EV販売が伸び悩む中で各国の増産が相次いだことでリチウムの供給が急増し、価格は低迷したままになっています。
中国はレアメタルの一種であるアンチモニーを輸出規制の対象とし、さらに半導体材料に使うレアメタルのガリウムやゲルマニウムなどデュアルユース(軍民両用)に関連する重要鉱物の米国向け輸出を禁止すると発表し
ました。
しかし、思惑通りに事は進んでいないようで、国家主導の囲い込みは産地の多様化と素材代替を進展させることになっているようです。